暮らしの中の、小さな知恵

中川たまさんに教わる、和え物の基本。

発酵美食×暮らし上手

2016/02/19

日本の伝統的な調理法である、和え物。下調理をした食材とごまや豆腐、味噌などの衣を合わせる和え物は、昔から日本の食卓に欠かせない存在。日々の献立は、ほとんどが和食という料理家・中川たまさんにとっても定番の一品だ。
「我が家の場合、小鉢ではなく大皿にたっぷり盛り付けて、家族で取り分けながら食べます。旬の野菜を使った和え物が一つあると、食卓から四季の移ろいを感じられますよね。旬の野菜は栄養価が高いうえ、味が濃くてみずみずしい。それだけでも十分に美味しいですが、例えば、ゆでた鶏のささみを割いて加えると、ボリュームが出て主役級の存在感に。主菜にはならなくても、立派なおかずとして楽しめますよ」

和え物には、料理の基本がいっぱい。

和え物の作り方は、ゆでる、切る、和える。料理の基本とも言える作業だけれど、シンプルな分、一つひとつの行程で仕上がりが変わってくる。最も多い失敗は、水っぽくなってしまうこと。 「衣と和える前に、食材の水気をしっかり絞るのはもちろん、ゆで過ぎたり、冷水にさらし過ぎないことも、水っぽさを防ぐコツです。特に葉物野菜の場合は、ゆで過ぎると柔らかくなって、水分が多くなってしまいます。ゆでた後も余熱で火が通るので、ザルや冷水をあらかじめ準備して、段取りよく作るといいですね」
そんな中川さんが、和え物の定番・小松菜のごま和えを例に、和え物作りの基本を伝授。また、旬を感じる和え物レシピを紹介してくれた。いままで何気なく作っていた和え物が、ぐんと美味しくなるひと手間、ぜひ取り入れてみて。

●小松菜のごま和え

[材料](2人分)
小松菜…1束
水…小松菜が半分浸かる程度(1.5~2ℓ)
塩…小さじ1 1/2~2
白炒りごま…大さじ1
(a)
薄口醤油(なければ濃口醤油)
きび砂糖…各小さじ1

[作り方]
【1】小松菜は茎の間の汚れを洗って取る。取りにくい場合は、茎を分けて洗う。
【2】鍋に分量の水を入れて中火にかけ、沸騰したら塩を加えて混ぜる。小松菜の茎を湯に浸けてゆでる。
【3】30秒経ったら葉も入れ、さらに20秒ほどゆでてザルに取る。さっと冷水にくぐらせて、ザルに広げて冷ます。
【4】すり鉢にごまを入れて半ずりにしたら、(a)を入れてよく混ぜ合わせる。
【5】冷めた小松菜をよく絞り、4~5cmの食べやすい大きさに切り揃える。もう一度水気を絞り、[4]に加えてよく和える。

<小松菜のごま和えを美味しく作る6つのポイント>

小松菜は茎からゆでる

小松菜のような葉物野菜の場合、ゆでる時は茎と葉で時間差をつけて。大きな鍋に小松菜が半分浸かる程度の湯を沸かし、葉の部分を持ったまま先に茎をゆでよう。ゆで過ぎに注意!

ザルに広げて冷ます

小松菜はゆでた後も余熱で火が通るため、冷水にくぐらせたら、ザルの上に平らに広げて冷ます。重ならないように広げることが、早く冷まし、余熱での火通りを防ぐコツ。

水気はしっかり絞る

和え物が水っぽくなってしまう原因の一つは、ゆでた食材の水気がきちんと絞れていないこと。小松菜を切る前に、両手を使ってしっかりと水気を絞ろう。

切った後、さらに水気を絞る

十分に水気を絞ったつもりでも、小松菜を切ると、まだまだたくさんの水分が出てくる。食べやすい大きさに切ったら、もう一度しっかり水気を絞って。

食感を残すため、炒りごまは半擦りに

和え衣の炒りごまは、つぶし過ぎず、半擦りの状態がベスト。食感が残るだけでなく、小松菜とも絡みやすくなる。擦る前に小鍋などでさっとごまを炒れば、より風味が豊かに。

和えるのは、食べる直前

衣と和えると、小松菜から水分が出て水っぽくなってしまう。小松菜を十分に冷ましてから、食べる直前に和えよう。お弁当に入れる場合は、水分を吸ってくれる鰹節をまぶすといい。

中川たまさんが提案する、とっておきの和え物レシピ

●ジャガイモの梅和え

ジャガイモのシャキシャキとした歯ごたえが心地よい一品。梅干しのさわやかな酸味が広がり、しっかり味の主菜とも相性抜群。木の芽を入れて、春の香りをプラスして。

[材料](2人分)
ジャガイモ…2個
梅干し…1個
水…500cc
塩…小さじ1/2
木の芽…10枚
薄口醤油…小さじ1

[作り方]
【1】ジャガイモは皮を剥いて千切りにする。水に5分さらして水気を切っておく。
【2】鍋に分量の水を入れて中火にかけ、沸騰したら塩を加えて混ぜる。[1]をさっと湯通ししてザルに取り、水気を切る。
【3】種を取った梅干しを叩いてペーストにしたら、刻んだ木の芽と醤油をよく混ぜ合わせ、[2]と和える。

<ココがポイント>

シャキシャキ感を残すため、ジャガイモは少ししんなりする程度に湯通しすればOK。男爵イモより、メークインや新ジャガなど、歯ごたえのある品種を使った方がシャキッと仕上がる。

●春の白和え

アクセントにわさびを加えた甘くない白和え。なめらかでクリーミーな和え衣は、まるでディップのよう。衣の作り方を覚えれば、旬の野菜をのせて四季折々の白和えが楽しめる。

[材料](2人分)
菜の花…1/2束
新玉ねぎ(スライス)…適量
クレソン…適量
水…500cc
塩…小さじ1/2
木綿豆腐…1/2丁
(a)
煎りすり胡麻(白)…大さじ1
薄口醤油…大さじ1/2
わさび…小さじ1/2
塩…少々

[作り方]
【1】鍋に分量の水を入れて中火にかけ、沸騰したら塩を加えて混ぜる。菜の花の茎を湯に浸けてゆでる。
【2】30秒経ったら花の部分も入れ、さらに30秒ほどゆでてザルに取る。さっと冷水にくぐらせて、ザルに広げて冷ます。水気を絞って食べやすい大きさに切ったら、もう一度水気を絞る。
【3】豆腐はザルに入れて手でつぶし、水気をよく切って、すり鉢などで滑らかになるまでよく擦る。
【4】[3]に(a)を加えてよく混ぜ合わせる。器に盛り、その上に[2]の菜の花、新玉ねぎ、食べやすい大きさにしたクレソンをのせる。

<ココがポイント>

野菜の色彩が楽しめるように、和え衣の上に野菜を盛り付け、食べる時に混ぜるのがおすすめ。大皿に盛り付けてサーブすれば、おもてなしにもぴったりの華やかな一品に。

中川たま(なかがわたま)さん

料理家

中川たま(なかがわたま)さん

料理家

中川たま(なかがわたま)さん

神奈川県逗子市在住。ケータリングユニット『にぎにぎ』を経て、2008年に独立。
料理教室を主宰する他、雑誌、イベントなどで活躍。旬の食材を使った保存食レシピが人気で、NHK出版のHP“あしたの生活”では連載ブログ『逗子からの保存食』を担当する。
最新著書『暦の手仕事』(日本文芸社)が発売され、2月23~28日、東京・銀座『森岡書店』にて出版イベントを開催。詳細は、ブログをチェック。

http://tama2006.exblog.jp/

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