工藤紀子
小児科専門医・医学博士
忘年会やお正月など、ついつい食べすぎてしまう年末年始を過ごし、「体が重いな」「動くのがおっくうだな」と感じている方も多いのではないでしょうか。
今回は、運動が苦手な人でも、今日から簡単にできる運動をご紹介します。
一般的に、運動は1ヶ月ほど続けることで習慣化しやすいと言われています。まずは「完璧を目指さず」、1ヶ月続けることを目標にしてみましょう。
まずは朝、起きてすぐできる「ベッドストレッチ」です。
手足をグーッと伸ばす動作を10秒×2回。寒くなると手足の血流が滞ってくるので、手をグーパーと開く動作を10回、足もグーパーと開く動作を10回行います。
さらに、膝を抱えて腰を伸ばす動作を10秒×2回。これを行うことで、ベッドから起き上がる前に体中の血流が良くなります。
次は「深呼吸」です。寝ている間は浅い呼吸になっているので、朝は意識して肺を大きく膨らませましょう。深い呼吸は自律神経のバランスを整え、リラックス効果が期待できます。
4秒息を吸って、2秒止めて、6秒吐く。
森林などを思い浮かべながら、肺の隅々まで心地良い空気を入れて、嫌なものを体の外に出していくイメージで行ってみてください。
朝のイラッとした気持ちも、一緒に吐き出してしまいましょう!
顔を洗うために鏡の前に移動した後は、「顔の運動」です。
ひとり暮らしやリモートワークをしていると、自分では笑顔になったつもりでも、実は表情筋があまり動いていないことが少なくありません。
鏡の前でニッコリ笑って、口角がしっかり上がっているか、顔全体が動き、表情もしっかり笑えているかを毎朝確認しましょう。
口角を上げることは嚥下の筋肉にも良い影響があります。加齢とともに唾液量は減ってきやすく、誤嚥する可能性も増えてくるので、ぜひ高齢の方にも意識してほしい運動です。
続いて「口の運動」として、「ア・ル・パ・カ」と大きく発音してみましょう。
唾液の分泌を促して、口の筋肉が鍛えられるので、「食べる力を守る」ことにもつながります。
寝ている間は肺が十分に広がっていないため、朝は胸を大きく開くことも大事。
手を肩に乗せて、回しましょう。
その際、なんとなく肩を回すのではなく、肩甲骨を寄せるようにして胸をぐっと外に開いてからぐるぐると回すことがポイント。
10~20回くらい肩をしっかり回すと、気持ちよく1日をスタートできますよ。
日常生活の中で気軽にプラスできる運動も紹介します。
私たちは歩くとき、背中が丸くなったり、肩が内側に巻いてしまったりと、無意識のうちに姿勢が崩れがちです。
筋力が落ちると首が前に出てしまいがちなので、「首が出ているな」と感じたら。一度空を見上げてみてください。首が自然と正しい位置に戻ります。
その状態で、頭のてっぺんを引っ張られているような感覚を意識し、胸をしっかり開いて歩きましょう。なにも考えずに歩くのと、ちょっと意識して歩くのでは、使われる筋肉が変わってきます。
立っている時も胸を開いた良い姿勢を心がけて、電車やバスの待ち時間にはこっそりつま先立ち。ふくらはぎやおしりなどの筋肉を使うので、立派な筋トレになります。
動物のミーアキャットをイメージして、頭のてっぺんを引っ張られるようにつま先立ちするといいでしょう。
座っている時も同様に、頭のてっぺんと胸を開いているかを意識。
骨盤底筋群の働きが弱くなると、足を閉じる力も低下しやすくなります。
膝をぎゅっと閉じることで、内転筋や下腹部の腹筋を刺激できます。
立つ・座る・歩くという日常の動作をちょっと意識するだけで、それが運動になります。
ジムに通うのは大変ですが、このように生活の中に運動を組み入れられると習慣づけもしやすいですし、無理なく続けやすくなります。
運動と合わせて気をつけたいのが、水分補給です。
人の体の約60%は水分でできています。しかし、子どもや高齢者は特に脱水になりやすいといわれています。
子どもはたくさん動きますし、遊びに夢中になると水分を取ることを忘れてしまいがち。高齢者の場合は筋肉量が減って水分を保ちにくくなったり、トイレを我慢しようと水分を控えてしまうことが理由に挙げられます。
水分補給におすすめしたいのは、水やノンカフェインの麦茶やルイボスティー。
カフェインを多く含んでいるコーヒー、煎茶、紅茶、また糖質の多いジュースは摂りすぎ要注意です。
カフェインを摂りすぎると、めまい、心拍数の増加、不安、不眠などの原因になることがあります。なんとなく不安、ドキドキしてしまう人の中にはカフェインを摂りすぎている場合があるので、精神的に落ち着かない時はカフェインの摂り方を見直してください。
健康に悪影響のないカフェインの摂取量は、健康な成人で1日400mg。子どもは体重1kgあたり2.5mgが目安なので、体重20kgくらいの子どもで1日50mgです。
これはどのくらいの量なのかというと、コーヒー100mlにカフェイン60mg、紅茶100mlには30mg含まれています。私もコーヒーやお茶はよく飲みますが、ガブガブと飲んでいたら400mgの目安はあっという間に越えてしまいます。
ペットボトルの場合は1本、コーヒーカップなら2~3杯が目安。また、寝る4~6時間前には飲まないようにしましょう。子どもは基本的にノンカフェインをおすすめします。
ジュースは糖質が多く含まれています。
果汁100%のジュースなら健康的と思いがちですが、リンゴ濃縮還元ジュースコップ1杯にはスティックシュガー(1本3g)9本分の糖質が入っています。
たまにご褒美として飲む分にはいいと思いますが、日常的に飲むには糖質過多になるので要注意です。
1日に摂取したい水分量は、子どもは1L、大人は1~1.5L。
心臓や腎臓に疾患がある方については主治医に相談してください。
水分は一気に飲むのではなく、こまめにちびちび、喉が渇いたと感じる前に飲むことが大事。大半の人は水分が足りておらず、あと2杯の水を飲むと、足りない分を補えると言われています。朝起きた時と、お風呂に入った後か寝る前に1杯ずつ水を飲むことを心がけてほしいです。
運動というと、「時間を作らなければ」「しっかりやらなければ」と身構えてしまいがちですが、今回ご紹介したように、日常の動作に少し意識を加えるだけでも立派な運動になります。
朝のストレッチや深呼吸で体と脳を目覚めさせ、姿勢や歩き方を整え、こまめな水分補給を心がける。
こうした小さな積み重ねが、血流や自律神経のバランスを整え、集中力や睡眠の質の向上にもつながります。
運動も「頑張りすぎないこと」「続けられる形で取り入れること」が何より大切です。
「運動のために特別な時間を作る」のではなく、いつもの生活の中で体を気持ちよく動かす習慣を、ぜひ今日から始めてみてください。
次回は、風邪やインフルエンザに負けない体を作る!免疫と腸の話をします。
工藤紀子
小児科専門医・医学博士
プロフィール
順天堂大学医学部卒業、同大学大学院小児科思春期科博士課程修了。栄養と子どもの発達に関連する研究で博士号を取得。日本小児科学会認定小児科専門医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/保育園、幼稚園、小中学校の嘱託医を務める/現在2児の母。クリニックにて、年間のべ1万人の子どもを診察しながら子育て中の家族に向けて育児のアドバイスを行っている。