春はゆらぎの季節。幸せホルモンを意識しよう。 春はゆらぎの季節。幸せホルモンを意識しよう。

春はゆらぎの季節。
幸せホルモンを意識しよう。

春、不調になりやすい原因って?

春、不調になりやすい原因って?

今回のテーマは「春のゆらぎと幸せホルモン」です。春になると気持ちが落ち着かない、眠りが浅い、元気が出ないという声をよく聞きます。年度末の忙しさや入学・進学など環境の変化も影響しますが、単なる気持ちの問題ではなく、生理学的・神経科学的な背景もあります。

春に心や体が揺らぐ理由は主に3つあります。

1つ目は気温差です。春は朝晩と日中の寒暖差が大きく、この気温変化に対応するため自律神経が過剰に働きます。交感神経と副交感神経のバランス調整が頻繁に求められることで疲労感が出やすくなり、不眠につながることがあります。

春、不調になりやすい原因って?

2つ目は花粉です。花粉症は目や鼻の症状が目立ちますが、医学的には全身性の炎症反応が起こっている状態です。花粉刺激により炎症性サイトカインが増加し、その炎症シグナルが脳機能にも影響を及ぼすことがわかっています。その結果、気分の落ち込みや意欲低下、だるさを感じることがあります。

3つ目は日照時間の変化です。幸せホルモンと呼ばれるセロトニンは光刺激によって活性化されます。春は天候が不安定で日照リズムが乱れやすく、セロトニン分泌の安定性が崩れやすい季節です。そのため気持ちのゆらぎが起こりやすくなります。

幸せホルモン・セロトニンの役割とは?

幸せホルモン・セロトニンの役割とは?

セロトニンは精神の安定だけでなく、衝動性の抑制や睡眠リズムの調整にも関わっています。夜になると分泌されるメラトニンはセロトニンを材料に作られるため、日中に十分なセロトニン活性がないと睡眠の質にも影響します。

さらにセロトニンは自律神経の調節や消化管運動にも関与しています。

体内のセロトニンの約90%以上は腸で産生されています。ただし、腸で作られたセロトニンがそのまま脳に移行するわけではありません。腸内環境は迷走神経や免疫系、腸内細菌が産生する代謝物を通じて脳と双方向に影響し合っています。これを「脳腸相関」と呼びます。

腸には約1億個もの神経細胞が存在し、「第2の脳」とも言われています。腸内環境を整えることが不安感やストレスの軽減につながる可能性が研究でも示されています。

セロトニンを作る栄養素

セロトニンを作る栄養素

セロトニンの材料となるのが必須アミノ酸のトリプトファンです。味噌、納豆、豆腐、おからなどの大豆製品に多く含まれています。

トリプトファンからセロトニンへ変換するためには、ビタミンB6や鉄などの補酵素も必要です。そのため、タンパク質だけでなく、ビタミンやミネラルをバランスよく摂ることが重要です。

味噌は発酵食品でもあり、腸内細菌の働きを助けます。食物繊維と組み合わせることで短鎖脂肪酸の産生が促され、腸内環境の改善につながります。こうした腸の安定が、自律神経のバランスを整える土台になります。

春に意識して取り入れたい生活習慣

春に意識して取り入れたい生活習慣

1つ目は朝の光を浴びること。朝起きてカーテンを開け、自然光を取り入れるだけでも体内時計のリセットにつながります。

2つ目はウォーキングやジョギングなどのリズム運動です。一定のリズムで体を動かすことはセロトニン神経の活性に関与すると言われています。しっかり噛んで食べることも、リズム刺激の一つです。

3つ目は炎症を抑える食事。発酵食品や食物繊維を意識し、腸内環境を整えましょう。腸内環境の改善が全身の炎症の軽減に寄与する可能性が示されています。
春の不調は気のせいで片付けるのではなく、生活のリズムと栄養を整えることが大切です。

次回は血糖値スパイクについてお話します。

工藤紀子先生

工藤紀子

小児科専門医・医学博士

Profile

プロフィール

順天堂大学医学部卒業、同大学大学院小児科思春期科博士課程修了。栄養と子どもの発達に関連する研究で博士号を取得。日本小児科学会認定小児科専門医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/保育園、幼稚園、小中学校の嘱託医を務める/現在2児の母。クリニックにて、年間のべ1万人の子どもを診察しながら子育て中の家族に向けて育児のアドバイスを行っている。