世界の発酵食品探訪

乳酸発酵で腸活効果に期待!「ザワークラウト」とは?

2019/03/28

ソーセージなどの肉料理に添えられる、酸っぱいキャベツの漬物「ザワークラウト」は、キャベツを乳酸発酵させたヨーロッパで広く親しまれている発酵食品。腸活にもってこいで、お漬物のように食卓にのせてほしい一品です。手軽に作ることができるため、手作りするのもおすすめなんです。

今回は、日本発酵文化協会の認定講師で、料理教室「Les Anges Blancs(レザンジュブラン)」を主宰する栄養士/フードコーディネーターの和田和歌子さんが、ザワークラウトの特徴や栄養について解説!さらに、ザワークラウトの作り方のほか、アレンジレシピを紹介してもらいました。

ローマ時代からあるキャベツを乳酸発酵させた伝統料理

ドイツのイメージが強いザワークラウトは、古代ローマ時代に原型が誕生しました。フランスでは「シュークルート」と呼ばれ、ロシア、オランダ、イギリスなど、ドイツ以外のヨーロッパ諸国でも広く親しまれている伝統料理。特に北部の寒い地方において、冬のビタミン補給の役割を果たしてきたそうです。

「酢を入れた『キャベツの酢漬け』をザワークラウトと呼んでいる場合もありますが、本来は酢漬けではなく乳酸発酵させて酸味を出しているんです。そう言うとびっくりする方も多いですね。日本では『乳酸キャベツ』とも呼ばれています」

ザワークラウトは、キャベツの葉の表面についた乳酸菌の働きによって発酵が進みます。千切りにしたキャベツと塩、香辛料などをしっかり混ぜて水分を出し、漬け込みます。

「香辛料として、欧米ではキャラウェイシード(※)を使うことが多いのですが、少し個性が強いんです。そのため、日本で比較的入手しやすいという点でも、クミンシードやディルあたりで代用するのがおすすめ。キャベツの青くささがなくなって、食べやすくなりますよ。防腐効果を高めるために、種を除いたタカノツメも入れるといいでしょう」

※キャラウェイシード:茶色の楕円形をしたキャラウェイの実で、柑橘類のような爽やかな香りが特徴。シードと呼ばれているのは、形が種子に似ているから。

腸活に抜群の効果を発揮

ザワークラウトは、ビタミンUやカルシウム、食物繊維など栄養成分も豊富。元々キャベツが持つ栄養に加え、発酵によって栄養成分が増していくため、腸活にはもってこいです。

「ザワークラウトは、植物性の乳酸菌。ヨーグルトのような動物性の乳酸菌よりも腸内に届きやすく、より整腸作用が期待できます。腸内環境が整うと、肌が整ったりと、女性にとってうれしいことが多くありますよね。

また、漬け込んで水分を出すことによってキャベツのカサが減るため、そのままで食べるよりも繊維質をとりやすく、栄養分をより多く摂取できるのも◎。

ポイントは雑菌の繁殖を防ぐ!
自宅で作るザワークラウトの注意点

塩とキャベツ、香辛料に容器があれば、手軽にできるザワークラウトですが、自宅で作る際は注意したいポイントがいくつかあります。最も大切なのは、発酵中に乳酸菌とともに繁殖してしまう雑菌に気を付けること。

「菌には縄張り争いがあって、何かの菌が先に繁殖すると、ほかの菌が入りにくくなってしまうんです。乳酸菌の繁殖より先に雑菌が繁殖してしまうと乳酸発酵が進まず、腐ったようなにおいがして、食べてもおいしくなくなってしまいます。そのため、まずは包丁やまな板などの調理器具を熱湯やアルコールで消毒するなどして、衛生面に気を付けましょう。

ただ、ザワークラウトを保存するための耐熱容器に熱湯をかけてもちゃんと滅菌できているのか自信がなかったり、容器を用意するのが面倒だったり、少量作りたかったりする場合は、厚めのジッパー付き保存袋(フリーザータイプが◎)を使用するのをおすすめします。発酵させるので、サイズは余裕のあるほうがいいでしょう」

室温が上がりがちな夏は、特に注意が必要。気温が高いと雑菌の繁殖も盛んになるので、なるべく寒い季節に作ることがおすすめだそうです。

ザワークラウトの基本レシピ

  • [材料]
    キャベツ1玉(約1kg)
    約20g(キャベツの重さの2%)
    ローリエ1枚
    タカノツメ1本
    胡椒、クミンシード適量
  • [作り方]
    1. ボウルやまな板等の器具は熱湯をかけて殺菌し、保存瓶(容量約1L)を使用する場合は煮沸する。
    2. キャベツは外側の葉を除き、4等分に切る。硬い芯を取り、千切りにする。
    3. 2の重さを量ってボウルに入れ、分量の2%の塩を振り入れて、しんなりするまで手でもみ込む。
    4. ハーブやスパイス類を加えて混ぜ、手でしっかり押し込みながら、保存瓶、もしくはジッパー付き保存袋に詰める。
    5. 
    保存瓶の場合:キャベツ表面を落し蓋のようにラップで覆い、清潔な重石を乗せる(今回はよく洗ったキャベツを丸めて重石にしている)。
    ジッパー付き保存袋の場合:キャベツを入れた袋の空気をしっかり抜いてチャックを閉める。ときどき水が漏れるため、トレーに乗せる。袋の上にペットボトルや缶詰、ビニールに入った塩などで重石をする。

    ジッパー付き保存袋で作る場合は、空気が入らないようにしっかり封を閉じ、トレイに乗せる。

    6. 常温で2~7日間置く。発酵すると中身が膨張するため、常温発酵中は、
    (保存瓶の場合)ふたは軽く閉めておくか、時々ふたを開ける。
    (ジッパー付き保存袋の場合)袋が膨らんできたら空気を抜く。
    7. 小さな泡が出てきて酸っぱい香りがしてきたら、発酵が進んでいる証拠。キャベツが緑色から白っぽくなってきたらほぼ完成。清潔な箸で少量とり、味見をして匂いも味も青臭さが取れて塩気がなくなって、好みの酸味になったら、重石を外し冷蔵庫で約2週間熟成させる。その際、
    (保存瓶の場合)落としラップで覆ったままふたを閉めて冷蔵庫へ。
    (ジッパー付き保存袋の場合)トレーに乗せたまま冷蔵庫へ。袋を1~2日に1度程度ひっくり返す。

夏など室温が高い場合は3〜4日、寒い時期は57日で発酵します。また、キャベツに加えてにんじん(上記のレシピの分量なら100g程度)や生姜(50g程度)を入れてもおいしいですよ」と和田さん。

(左)にんじん入り、(右)生姜入りのザワークラウト。

<ザワークラウトづくりのポイント>
・調理器具をしっかり消毒する。
・キャベツに対して塩2%の塩分濃度を守る。
・キャベツを空気にふれさせない。
・防腐のため、タカノツメを入れる。

ザワークラウトを使ったアレンジレシピ

せっかくだからと一度にたくさん作ってしまうと、同じ味に飽きてしまうことがあるかもしれません。しかし、ザワークラウトは肉料理などの付け合せだけでなく、サンドイッチの具にしたり、サラダに入れたり、ほかのメニューに活用してもおいしく食べられます。
ここでは、和田さんにザワークラウトを使ったオリジナルレシピを1品、紹介いただきました。

ザワークラウトと春野菜のペンネ

  • [材料]2人分
    ザワークラウト100g
    菜の花、アスパラ、ブロッコリー等140g
    ミニトマト6g
    むきえび8個
    きのこ類80g
    ペンネ100g
    オリーブオイル(炒め用)適宜
    にんにく1片
    タカノツメ少々
    適宜
    塩麹20g (お好みで増減してください)
    パルメザンチーズ適宜
    胡椒・好みのハーブ類適宜
  • [作り方]
    1. ペンネを表示より1分短い時間で茹でる。
    2. フライパンにオリーブオイルを入れ、つぶしたにんにくを炒める。香りが立ってきたら、きのこ類を加えて炒め、塩で味付けする。
    3. さらに、えびとザワークラウト、塩麹を加えてサッと炒める。
    4. 菜の花、ミニトマト、1のペンネを加えて炒め合わせ、パルメザンチーズ、胡椒、ハーブ類を加えて味を整える。

「塩麹で、さらに発酵パワーを活用してみましょう。また、キャベツに火を入れる時間が省略されるので、時短料理としても活躍すると思いますよ」と和田さん。

常備菜としてそのままいただくのも良し、お料理に活用するのも良しと、飽きずにいろいろ楽しめそうなザワークラウト。作るのも簡単なので、ぜひ試してみてください!

和田和歌子(わだわかこ)さん

和田和歌子(わだわかこ)さん

発酵プロフェッショナルとして日本発酵文化協会の専任講師を務めるほか、天然酵母パン/スイーツや発酵ベジ料理(ホリスティックフードセラピー)などの講義を行う「Les Anges Blancs(レザンジュブラン)」を主宰。がんばる女性の心と体を元気にする食、自分の手で作ることで感じられる創作の楽しさを伝えている。


Les Anges Blancsオフィシャルサイト