暮らしの中の、小さな知恵

心と体に響く料理に変わる!
発酵調味料の作り方と使い方

2021/11/18

毎日をすこやかに暮らすために、心と体に栄養を届けるための食事は欠かせません。しかし、栄養バランスのとれた食事を常に作るには、「手間や時間がかかるため難しい…」と悩む方も多いのではないでしょうか。

家族や自分のためにより良い食事を作りたいけれど、時間がなくて作れない――そんなジレンマを抱えながらキッチンに立っている方に取り入れてほしいのが、食材の栄養価と味わいを一気に引き上げてくれる「発酵調味料」です。
多くの人の心と体を健康にする食の提供を目指して、「発酵×スパイス食堂 Yajikko KITCHEN」を運営する矢路川結子(やじかわゆうこ)さんから、発酵調味料のレシピと使い方について指南していただきました。

和食だけではない発酵の
奥深さを伝えたい

千葉県市川市の本八幡駅に程近い住宅街の一角にある、「発酵×スパイス食堂 Yajikko KITCHEN」。
青い塗装を施した引き戸を開けると、そこはオーナーの矢路川さんが大好きだというジブリの世界に似た、どこかファンタジックで懐かしい雰囲気が広がります。

カウンターには幸せそうに食事をしている、ランチタイム最後のお客様の姿も。聞けば、いつもおいしい野菜を届けてくれる、取引先の八百屋さんだそうです。

「野菜を届けてくれた帰りに、いつもこうやってランチを食べていってくれるんです。もう、身内みたいな関係ですね」

「発酵×スパイス食堂 Yajikko KITCHEN」オーナーの矢路川結子さん。

「Yajikko KITCHEN」には、麹を使った自家製調味料とさまざまなスパイスを掛け合わせた、発酵とスパイスの力を満喫できるメニューがずらり。使用する食材は、この日届いた野菜をはじめ、ほとんどが地元・千葉産のものだといいます。矢路川さんが生活している土地で、開店までの道のりを支えてくれた地域の皆さんにも貢献できるよう、地産地消にこだわった仕入れをしているのだそう。
もちろん、提供する発酵食料理に欠かせない糀も、若い担い手が伝統的な糀づくりを受け継いだという芝山糀店のものだけを使っています。

お店ではテイクアウトのお惣菜も販売。

「発酵というと和風に偏りがちですが、スパイスと合わせることで世界各国のお料理になじむのがおもしろいところですね。発酵調味料は、食材にあえたり、漬け込んだりするだけで簡単に味が決まって、栄養価も飛躍的にアップするので、毎日料理をされる方にはぜひ上手に活用していただきたいですね」

自宅で簡単にできる
発酵調味料の作り方

糀を使った料理は、「毎日食べても飽きない」「旨味がアップする」など、多くのメリットがあります。そこで今回は矢路川さんに、どんな食材でも発酵を感じられる料理へと変身させてくれる万能な発酵調味料、「甘糀」「塩糀」「醤油糀」の作り方を教えていただきました。

自然の甘味を感じられる「甘糀」

  • [材料]
    300g (乾燥糀の場合は200g)
    炊いたご飯2合分 (Yajikko KITCHENでは雑穀米を使用)
    300ml (ご飯が冷たい場合はお湯)
  • [作り方]
    1. 炊飯器の中のご飯に水(またはお湯)を入れて混ぜ、55~60℃にする。糀を加え、全体を混ぜ合わせる。
    2. 炊飯器の保温ボタンを押し、蓋を開けた状態で布巾をかけ、そのまま8~10時間置く。
    3. 8時間くらいで1度かき混ぜて味見をし、甘くなっていれば完成。出来上がったら粗熱をとって、冷蔵庫で保存する。

「甘糀は、甘酒の元になるものです。砂糖をまったく使っていないのにしっかりと甘さと旨味があるので、そのままドリンクにして飲んだり、砂糖代わりに料理に使ったりできます。冷蔵庫での保存で2週間から1ヵ月くらいは持ちます」

漬け込むだけで
素材の旨味を引き出す「塩糀」

  • [材料]
    200g
    60g
    220ml (乾燥糀の場合は260ml)
  • [作り方]
    1. 糀をボウルに入れてばらばらになるまでほぐし、塩を加えて握るようにして揉み込む。水を加え、全体をかき混ぜる。
    2. 清潔な容器に移してゆるめに蓋をし、家の中の暖かい場所に置く。全体がよくなじむよう、1日1回以上かき混ぜる。
    3. 1週間から10日後、粒がやわらかくなり、とろみがつけば完成。

「塩糀は、塩の代わりに料理に使うことで、甘味やコクが加わります。肉などの食材を漬け込むと、硬い肉でもやわらかくなり、肉本来の味をぐっと引き出してくれるんです。冷蔵庫での保存で、2~3ヵ月くらい持ちます」

香ばしさと旨味が際立つ「醤油糀」

  • [材料]
    150g (乾燥糀の場合は100g)
    醤油200ml
  • [作り方]
    1. 糀をボウルに入れ、ばらばらになるまでほぐす。醤油を加えて混ぜ合わせる。
    2. 清潔な容器に移してゆるめに蓋をし、家の中の暖かい場所に置く。全体がよくなじむよう、1日1回以上かき混ぜる。
    3. 1週間から10日後、粒がやわらかくなり、とろみがつけば完成。

「醤油糀は塩糀より旨味を感じられるので、料理の隠し味や仕上げに使うのがおすすめです。冷蔵庫での保存で、3ヵ月くらい持ちます」

ササッとできておいしい!
甘糀を使った簡単レシピ

発酵調味料を使うだけで、材料はシンプルでも味わいがぐっとアップします。あえるだけ、炒め合わせるだけでいいので、忙しい日にも活躍すること間違いなし!矢路川さんおすすめの、甘糀を使ったレシピを2品ご紹介します。

秋の味覚満載!
タラときのこの甘糀炒め

  • [材料](2人分)
    甘糀60g
    カットトマト70g
    まいたけ60g
    しめじ60g
    タラ2切れ
    片栗粉大さじ1
    塩コショウ少々
    オリーブオイル大さじ2
    醤油大さじ2分の1
  • [作り方]
    1. タラに塩コショウを振り、片栗粉をまぶす。
    2. フライパンにオリーブオイルを熱してタラを焼き、取り出す。
    3. まいたけとしめじを炒めてカットトマト、甘糀を加え、醤油で味を整える。
    4. タラに(3)のソースをかける。

シャキシャキ食感がたまらない!
にんじんサラダ

  • [材料]
    にんじん1本
    グレープフルーツ2分の1個
    紅くるり少々 (大根でも可)
    少々
    甘糀大さじ2
    カッテージチーズ大さじ1
    レモン汁大さじ2
    醤油小さじ1
  • [作り方]
    1. にんじんは細切り、紅くるりは薄い輪切りにし、塩少々を振る。
    2. (1)にグレープフルーツを加える。
    3. 甘糀、カッテージチーズ、レモン汁、醤油を入れ、全体をあえる。

食べる人を笑顔に!
食卓を囲む時間を大切にしてほしい

「Yajikko KITCHEN」を、志を同じくするスタッフたちとともに切り盛りするかたわら、お弁当の販売のほか、発酵食の基礎や発酵調味料の使い方、スパイスとの組み合わせ方などを教える、料理教室の運営なども行っている矢路川さん。

オリジナルの発酵調味料も販売している。

「まもなくキッチンスタジオが完成するので、スタジオからも発酵とスパイスの魅力を届けていきたいですね。ご来店いただいて、食して発酵を感じてもらうだけでなく、届けたり、持って帰ってもらったり、オンラインで作り方を伝えたり…。さまざまな形で、より多くの人の心と体を笑顔にしていきたいと思っています」

「食卓を囲む時間をずっと大切にしてきた」という矢路川さん。ぜひご家庭でも発酵調味料を活用し、おいしい料理を通して、食べる人が笑顔になる時間を増やしてみてはいかがでしょうか。

矢路川結子(やじかわゆうこ)さん

矢路川結子(やじかわゆうこ)さん

発酵食料理家・フードディレクター。発酵食とスパイスに特化した料理家として活動を始め、2017年に千葉県市川市に「発酵×スパイス食堂 Yajikko KITCHEN」をオープン。料理教室の運営や、発酵に関するアイテムの通信販売などを幅広く手掛ける。

発酵×スパイス食堂 YajikkoKITCHEN | 市川市