日本の朝ごはん

体にやさしくおいしい
東京豆漿生活の台湾式朝ごはん

2022/03/24

朝ごはんの定番というと、ごはんとお味噌汁、焼き魚や納豆といった和定食や、トーストと卵料理にコーヒー、手軽なシリアルやオートミールなどを思い浮かべるのではないでしょうか。喫茶店やカフェでモーニングを食べるのがお気に入りという人もいるかもしれません。そうした朝ごはんの選択肢に、近年新たに加わったのが台湾発の朝ごはんです。都内を中心に、全国に台湾式朝ごはんを食べることができるお店のオープンが続いています。
今回は、台湾の朝ごはん専門店のさきがけ、東京・品川区の東京豆漿生活(とうきょうとうじゃんせいかつ)の副店長で台湾にルーツをもつ、張本雅媛(はりもと まさひめ)さんにお話を伺いました。

台湾の人々に根付いた朝食の文化

東京豆漿生活がオープンしたのは、2019年のこと。オーナーの田邊与志久さんと台湾人の奥様の「台湾の朝ごはん文化を日本にも」という思いから生まれました。以来、東京豆漿生活は大人気の店となり、朝から列ができることも少なくありません。

「お店を訪れるお客様は、近隣の方はもちろん、土曜日の朝などは遠方から訪れる方も多いです。また、4割ほどは台湾や中国の方ではないでしょうか」と張本さん。現地の味をよく知る人が足繁く通うことからも、おいしさ、評判の高さをうかがい知ることができます。

お話くださった副店長の張本雅媛さん。

そもそも台湾の人の多くは朝ごはんをしっかりと食べます。外食をしたり、テイクアウトしたりすることも多いそうです。その背景には、おいしく価格が安いこと、共働きの家庭が多く、朝が慌ただしいことなどが理由にあげられます。朝食用のメニューを提供しているお店は、5時半くらいにはオープンしており、店内で食べる人もいれば、出勤前にテイクアウトをして会社で食べる人も少なくないといいます。張本さんも「私の友人たちも、朝ごはんはテイクアウトしたものを会社で食べると言っていましたね。先輩が部下のために朝食を買ってきてくれたなんて話をしていたので、朝からオフィスで朝食を食べるのは、台湾ではよくある光景なのでしょう」とのこと。台湾の友人や家族のなかで、朝は食べない派というのは聞いたことがないそうです。

「新型コロナウィルス流行の前は、毎年台湾の台中にある祖父母宅を訪れていました。朝になると、祖父か叔父が『今朝は何を食べる?』って聞いてくれるんです。それからお気に入りの店に行き、家族分の朝ごはんを買ってきてくれましたね。魯肉飯(ルーローファン)や水餃子のお店も開いていて、朝からそうしたメニューを選ぶ人も多いです。朝食をしっかり食べるのは、老若男女、台湾の人に根付いた文化だと思います。私は日本で育ったので、朝からたくさん食べることに慣れていなくて、毎朝『何を食べたい?』と聞かれるたびに少し困っていたのですが、このお店で働くようになって、改めて、すばらしい文化だなぁと思うようになりました」

搾りたての豆乳でつくる
『鹹豆漿(シェントウジャン)』と 人気の『酥餅(スーピン)』

東京豆漿生活オープン当初から提供する『鹹豆漿(シェントウジャン)』は、台湾の朝食の中でも定番のメニューです。鹹豆漿の鹹は塩気、豆漿は豆乳の意味で、鹹豆漿は豆乳に酢を入れてゆるりと固めたスープのこと。塩味と酸味、干しエビや塩漬け大根による旨味、ラー油の辛味に、油條(ヨウティァオ)と呼ばれる揚げパンのコクが加わって、やさしい味わいながらも食べごたえがあり、朝ごはんにぴったりです。

「台湾の人は、日常的に豆乳をよく飲みます。そのまま飲むことは少なく、甘く味のついたものを飲んだり、鹹豆漿を食べる人が多いです。東京豆漿生活の豆乳は、毎朝から店内で絞っています。大豆は宮城県産のもので、一般的な豆乳に比べ、濃くておいしいと言っていただけますね。搾りたての濃い豆乳を使っていることが、とろっとおいしい鹹豆漿になる秘訣のひとつかもしれません」

毎日店内で絞る豆乳は豆乳だけで飲んでも美味。
東京豆漿生活では、そのままストレートで飲む『豆漿』や『黒糖豆漿』などがある。

この鹹豆漿とともに東京豆漿生活で人気があるのが、『酥餅(スーピン)』です。「酥は、層が折り重なった生地を、餅はパン生地を表す漢字です」と張本さんに教わったとおり、まさに酥餅はパイとパンの間のような独特の食感が魅力。この日は6種ある酥餅のうち、ニラ、卵、春雨、ピーナツなどが入ったボリュームたっぷりの『韭菜酥餅』と、甘さと塩味のバランスが絶妙なピーナツぎっしりの『花生餅』をいただきました。ほかにも、ネギと豚肉が入った『葱肉酥餅』や大根が入った『蘿蔔絲酥餅』、やさしい甘さの『胡麻餅』などが並びます。

ニラ、卵、春雨などが入ったボリュームたっぷりの韭菜酥餅

ぎっしりピーナツが入った花生餅は甘い系酥餅の人気メニュー

「オープン以来、少しずつメニューは増えてきました。スタッフには台湾出身者も多いため、彼らの意見を取り入れながら、メニュー開発をしています。特に台湾出身のお客様に人気があるのが台式おにぎりや、台湾のでんぶが入ったサンドイッチ『肉鬆三明治(ロウソンサンドイッチ)』ですね。台式おにぎりは現地でもとてもポピュラーで、学生さんが朝ごはんやランチにテイクアウトすることも多いです」

朝から店内で仕込み、提供される酥餅や焼餅。テイクアウトをしていくお客様も多い

この日は、もうひとつの定番、台湾風焼パン『焼餅(シャオビン)』にねぎ卵焼きを挟んだメニューもいただきました。ごまがついた焼餅に、ボリュームいっぱいの卵が挟まり大満足です。このほかにも、焼餅に油條(揚げパン)や肉鬆(でんぶ)を挟むこともできます。

焼餅にねぎ卵焼きをトッピング。手軽でおいしく台湾現地でも人気のあるメニュー

台湾のノスタルジックな雰囲気の漂う素敵な店内で、ゆっくりと朝ごはん。この日は平日でしたが、オープンの朝8時には、テイクアウトやイートインのお客様が次々にやってきて、程なくして店内は満席に。私たちもたっぷりとおいしい朝ごはんをいただき、しっかりエネルギーをチャージ。栄養を補給し、身体が温まったのはもちろん、朝の時間を大切に、健康的に過ごすことができたという満足感から、一日を充実した気持ちで過ごすことができました。
台湾の健康的で豊かな朝ごはん文化を日本にも広めたいとオープンした東京豆漿生活の思いは、多くのお客様に伝わり、さらにこれからも広がっていきそうです。

東京豆漿生活(とうきょうとうじゃんせいかつ)

住所:
東京都品川区西五反田1丁目20−3 MKYビル 1F
TEL:
03-6417-0335
営業時間:
8:00〜15:00
定休日:
日曜日(4月からは無休予定)
URL:
https://store.tokyomamehana.com/