手仕事カレンダー

vol.11 基本調味料だけで
日々のごはんをラクに、
おいしく、すこやかに。
上田淳子さんの
「本みりんベースの手作り発酵だれ3種」

2024/05/16

彩り豊かでみずみずしい旬の食材のおいしさをうまく引き出したいなら、日本の発酵調味料の出番です。

今回は、料理研究家の上田淳子さんが“発酵旨味調味料”と評する「本みりん」を主役に、そのほかの基本の発酵調味料を掛け合わせて作る、3種の簡単発酵だれと、そのアレンジ法を教えてもらいます。また、上田さんが好きなザワークラウトの手軽な取り入れ方も聞きました。

余らせていてはもったいない!
身近にある発酵調味料

ブームよりも前から自家製の塩麹を作り、味噌を仕込み……発酵食品はひと通り手作りした経験がある、上田さん。
「でも、作り続けるのは大変なこと。日本には、工夫を重ねて丁寧に作られた市販の発酵食品がいっぱいあります。今では、市販品を上手に使って普段の食事に取り入れて、日々とることを大事にしています」

私たちに一番身近で、手軽に使える発酵食品といえば、しょうゆやみりん、酒、味噌といった、どの家庭にも常備されている基本の発酵調味料。味つけだけでなく、コクや旨味などを足し、料理をおいしくする名脇役です。

「いつも同じ使い方しかしていない、使い方がわからないというのでは、もったいない。基本調味料の組み合わせと調理法との掛け合わせ次第で、毎日のごはんのバリエーションはもっと広がりますよ」

合わせ調味料の作りおきで
「本みりん」の効果を最大限活用

上田さんがなかでも注目するのは、「本みりん」。もち米、米麹、焼酎またはアルコールを糖化・熟成して作られますが、麹菌によって、もち米に含まれるデンプンがブドウ糖などに、たんぱく質がアミノ酸などに分解されます。

「だから、上品でまろやかな甘みや旨味、コクなどが豊富。まさに和の“発酵旨味調味料”です。本みりんの効果を毎日の料理に活用しやすくするために、合わせだれにしておくことをおすすめします」

本みりんは、米からできた酒類調味料。よく似ているものに、アルコール分を含まずに糖類や酸味料などを
ブレンドした「みりん風調味料」、塩分を含む「みりんタイプ調味料」(発酵調味料)があり、それぞれに特徴が。

いくら家にある調味料同士といえども、合わせておけば、調味がすぐ決まって時短にもつながり、使い勝手が格段にいい、と上田さん。

「実は、米酢を加えて『みりん甘酢だれ』にすれば、おいしい甘酢が簡単に作れます。味噌を混ぜた「みりん味噌だれ」は、上品な甘みの味噌だれに、しょうゆと合わせた「みりんしょうゆ甘辛だれ」は甘辛の味付けに万能です。いずれも砂糖を使うよりも調味料同士のなじみがよくて、甘みが穏やかになります」

そのまま加えて和えだれにするなど、手軽に使える。

「本みりんベースの
手作り発酵だれ3種」のレシピ

  • [材料](約200㎖の瓶1瓶分)
    〈みりん甘酢だれ〉
    本みりん、米酢各100㎖
    〈みりん味噌だれ〉
    本みりん100㎖
    味噌大さじ6〜7
    〈みりんしょうゆ甘辛だれ〉
    本みりん120㎖
    しょうゆ80㎖

「みりん甘酢だれ」「みりん味噌だれ」は、みりんとそのほかの調味料が1:1の割合。
「少し甘めにしたいなら、みりんが多めの6:4に。『みりんしょうゆ甘辛だれ』も、その配合にしました。
『みりん味噌だれ』をゆるくしたい場合も、みりんを少し増やしてみてください」

  • [作り方]

    1.鍋にみりんを入れて中火にかけ、沸騰したら15〜30秒煮立たせて煮切る。

    たれは加熱調理せずに使う場合もあるので、本みりんはアルコール分を飛ばす「煮切り」をしてから使う。
    みりん本来の香りが変わってしまうので、加熱し過ぎに注意。

    2.①の熱が少しとれたら、残りの材料を加えて混ぜ合わせる。

    みりん以外の調味料の風味や酸味を活かすため、煮切りたてではなく、少し冷ましてからみりんに加えるとよい。

    3.あら熱がとれたら清潔な瓶や保存容器に入れる。冷蔵で1ヶ月ほど保存可能(ゆずやはちみつなど、ほかの食材を加えてアレンジする場合は、さらに早めに使いきること)。

「本みりんベースの
手作り発酵だれ3種」の
おいしい使い方

〈みりん甘酢だれ〉
寿司や甘酢和え、炒め物、南蛮漬けのたれなど、普段、甘酢を使う料理にいろいろと活用できます。
「寿司酢にするなら、塩を少し加えてもいいですし、用途に合わせてアレンジしてくださいね」

たとえば、寿司めしを作り、焼き鮭と炒り卵、絹さやで簡単ちらし寿司に。
彩りもきれいで、これなら忙しい日でも手軽に作れる。

〈みりん味噌だれ〉
そのままゆで野菜や蒸し野菜にかけて、和え物に。「レモンやゆずの皮などを加えると、また違う味わいが楽しめます」。
野菜やこんにゃく、豆腐などの表面に塗れば、田楽焼きに。肉や魚の味噌漬けのたれとして、使えます。「はちみつやマスタードを加えれば、洋風になりますよ」

菜の花を和えれば、華やか。そのほか、スナップえんどうや山菜などにも。

〈みりんしょうゆ甘辛だれ〉
肉や魚と合わせれば、おいしい照り焼きがパッと完成。「だし汁でのばせば、八方だしに。うどんのつゆや煮物の煮汁、天つゆなど幅広く活用できます」

鶏もも肉と旬の新玉ねぎを合わせて、照り焼きも春バージョンに。

特徴を知っておいしく楽しむ、
市販のザワークラウト

フランス料理に精通する上田さんのなじみの発酵食品に、「ザワークラウト」があります。フランス・アルザス地方の煮込み料理「シュークルート」にも使われる、塩漬けキャベツを乳酸発酵させたもの。

キャベツが余るとよく手作りしますが、市販のものも欠かせないそうです。
「海外のキャベツは日本のものとは種類が違って、カチカチに硬いんです。歯応えがよく、煮込んでもぐずぐずになりません。手軽ですし、用途によって使い分けてみてください」

右が上田さんの手作り。2%の塩でもんで常温に数日〜1週間弱おき、乳酸発酵させる。左が、市販の瓶詰め。

シュークルートだけじゃない!
ザワークラウトの手軽なアレンジ

市販のザワークラウトを使う前に、一度水洗いして、酸味と雑味を落としてから煮直すのがコツ。

「豚バラ肉とかソーセージ、じゃがいもなどと煮て、シュークルートにするのはもちろん、玉ねぎのスライスとベーコン、ジュニパーベリー、白ワインとさっと炒め煮にしてもおいしいんです。肉料理にも合いますし、冷めてもおいしいので酒のつまみにしたり、カレーの付け合わせにしたり。もちろん、そのまま食べるのも、アリですよ」

ザワークラウトをさっと炒め煮に。ちょっとした箸休めや酒のアテに。

料理研究家

上田淳子(うえだじゅんこ)さん

料理研究家

上田淳子(うえだじゅんこ)さん

辻学園調理技術専門学校の西洋料理研究職員を経て、渡欧。スイスのホテルやベッカライ、フランスのレストランやシャルキュトリーなどで約3年間、料理修行を積む。帰国後、シェフパティシエを経て、料理研究家として独立。料理教室を主宰するほか、雑誌やテレビなどで活躍。本格的なフランス料理から家庭料理まで、経験と知識に裏打ちされた作りやすいレシピで人気。著書に『ほったらかしでおいしい!オーブンで焼くだけレシピ』(Gakken)、『フランス人は、3つの調理法で肉を食べる』(誠文堂新光社)など。
https://www.ju-cook.com/