愛媛、食の現場へ

「笑顔のある場所に選ばれるお酒を造り、
次の世代に受け継ぎたい」
千代の亀酒造株式会社

2025/09/04

「笑顔のある場所に選ばれるお酒を造り、 次の世代に受け継ぎたい」 千代の亀酒造株式会社
「笑顔のある場所に選ばれるお酒を造り、 次の世代に受け継ぎたい」 千代の亀酒造株式会社

豊かな水と森林、棚田による米づくりなど農業が盛んな愛媛県内子町 五十崎地域。千代の亀酒造はこの土地で、江戸時代から300年以上、酒造りを営んできました。地元の米や水を用い、伝統の手法を大切にした酒造りを続ける千代の亀酒造の高山知大さんにお話を伺いました。

目や肌で感じる感覚を大切に
お酒という“生き物”が活動しやすい環境を

「千代の亀」そう書かれた暖簾をくぐり、木の温かみのある落ち着いた店内に入ると、この蔵で造られた日本酒がずらりと並んでいます。ここで私たちを迎えてくれたのは、千代の亀酒造の高山知大さんです。

「造り手の感覚をとても大切にしています」。たくさんの種類の日本酒に囲まれながら、まずは千代の亀酒造の酒造りについて尋ねると、高山さんからこう返ってきました。

「私たちはお酒という “生き物”を扱っています。ですから、お酒に寄り添い、お酒が何を求めているかを、自分たちの目と肌で感じて、いかにお酒が活動しやすい環境をつくるかが大切だと思っています」

お話を伺った千代の亀酒造の高山さん。

また、昔ながらの製法を守っていることも千代の亀酒造の酒造りの特徴です。

「千代の亀酒造では『米より硬い機械は使わない』ことをポリシーに酒造りを行ってきた歴史があります。私たちは、その思いを引き継いだ酒造りを行っていきたい。例えば、もろみを搾る際も、槽(ふね)という昔ながらの道具を使い、ゆっくり丸2日間かけて搾る『槽(ふな)しぼり』を行っています。もっと楽に早く搾る方法はありますが、ゆっくりと圧を加えることができる槽を使うからこそ、雑味のないお酒に仕上がります。」

こう語る高山さんですが、同時に、守り続けるだけではなく、次へと受け継ぐ視点も重要だと続けます。

「伝統を守るだけでは、次に継承することができません。データなどをうまく活用することも必要です。酵母がどのように活動しているのか分析をしながら、温度を変化させたり、今年の天候からお米の傾向を予測するなど、おいしいお酒をつくるために日々研究することも欠かしてはいけないと考えています」

地域と一緒に歩んでいくために
お酒の魅力を発信したい

主原料をすべて愛媛県産にすることも、千代の亀酒造が守っていることのひとつです。

「お米は、この近くの旧五十崎地区と小田地区の契約農家さんのものを使用しています。それは、地元の一員としてその土地の作物を使いたいという思い、地域の産業をともに守りたいという思いがあるからです。

また、内子町は林業が盛んな地域。森林によってろ過された小田深山を源泉とした豊かな水があります。お酒の80%は水でできていますから、そうした土地の恵みによってこの蔵のお酒はできているということに、本当に感謝しています」

低温にて長期熟成させて造る凍結酒『銀河鉄道』や『しずく酒』は、
農薬を使わずに育てた契約栽培米を使用している。

商品の中には、木をラベルとして使用したものや愛媛の「媛」の字を冠したものも多い。

そして、地域とともにあるために「日本酒をもっといろんな人に飲んでもらえるようにしたい」と高山さん。

「お米をつくる農家の皆さんや、豊かな水を育む森林に携わる皆さんの力を借りて造るお酒ですから、その魅力をより多くの人に伝えていきたいという思いがあります。
お酒は嗜好品。飲んでいるとつい頬が緩み、お酒があるところには笑顔があります。千代の亀酒造のお酒もそんな笑顔のある場所に選ばれる存在でありたい。そんな存在であり続けてこそ、地域の産業が循環し、酒造りを継続していけるのではないか、地域と一緒に歩んでいくことができるのではないかと思っています」

地元の人にも、旅の人にも
選ばれるお酒になるために

そう話すうちに、「そういえば、先日うれしいことがありました」と、高山さん。聞けば、県外へ出た娘さんのためにお酒を買いに来た男性がいたとのこと。

「『娘は、県外に住んでも、ここのお酒の味が一番好きだと言うんです』という言葉を聞いて、本当にありがたく思いました」と、高山さんは顔をほころばせます。さらに、旅行中の男性が『千代の亀』を買われた時も、しみじみ感じたと続けます。

「宿泊先の旅館に『千代の亀』があり、とてもおいしかったから、帰る前に買って帰りたいということでした。いろいろと飲んだ中でこの酒蔵のお酒を選んでもらえたんだと、とてもうれしく思いましたね」

さらに、近年はインバウンドによる需要も高まっているそうです。

「旅行中の海外の方が、酒蔵だと知って立ち寄ったり、愛媛のお酒を集めたイベントからファンになってくれた方もいらっしゃいます。今後もさまざまなきっかけの場をつくり、ここのお酒をおいしい、好きだと言ってくださる方を増やしていきたいですね」

2025年にできた直売所。
ふらりと立ち寄ったり、酒蔵を目指して来てくれたりと、さまざまなお客様がここを訪れている。

千代の亀酒造の『媛酒-hime shu』には、産学官連携で開発した清酒用酵母「愛媛 さくらひめ酵母」を用いている。毎年10月に開催される愛媛県の酒蔵が一同に介するイベント『ほろよいフェスタ』では、さまざまな酒蔵による「愛媛 さくらひめ酵母」を用いた日本酒も試飲できる。「こうした機会に酒蔵同士一丸となって愛媛のお酒を盛り上げていきたい」と高山さん。

そう言って、高山さんは最後にこう締めくくりました。

「私たちは、300年続くこの蔵で、先代の方たちからバトンを受け取った継承者の一人。千代の亀酒造のおいしさを、次の世代にしっかりとバトンタッチできるよう力を尽くしていきます」

千代の亀酒造株式会社

千代の亀酒造株式会社

住所:愛媛県喜多郡内子町平岡甲1294−1
TEL:0893−44−2201
URL:https://www.chiyonokame.com

営業時間:9:00〜16:00(土日・祝休業)

「愛媛、食の現場へ」の他の記事を読む

To Top

このサイトについて

https://www.marukome.co.jp/marukome_omiso/hakkoubishoku/
お気に入りに登録しました