発酵でつながる、おいしい輪!「私の発酵“推し”美食」

Vol.21 水きりヨーグルト・ラブネでサラダを格上げ!
「cherche」丸山智博さんの
「ラブネのギリシャ風サラダ」

2025/09/11

食にかかわるプロに、お気に入りの「推したい発酵食」を紹介いただく本連載。今回のゲストは、レストランや居酒屋の運営からケータリング、レシピ開発や店舗のコンサルティングまで、食を軸に多彩な事業を展開する「cherche(シェルシュ)」代表の丸山智博(まるやまちひろ)さんです。

丸山さんが推すのは、水きりヨーグルト「ラブネ」。さわやかな味わいのラブネと色とりどりの野菜が織りなす目にも楽しいごちそうサラダで、心まで満たされる豊かなひとときを。

ヨーグルトで簡単!「ラブネ」の魅力

ざるの上にキッチンペーパーを敷いてヨーグルトをのせ、冷蔵庫で一晩おく。ホエイ(乳清)が落ちて、
クリームチーズのようなほどよい硬さに。

ラブネ(Labneh)とは、中東や地中海地域で親しまれてきた水きりヨーグルトのこと。しっかり水きりしたヨーグルトは、濃厚なのに軽やかで、チーズのようなクリーミーな口当たりが魅力です。

「パンに塗ったり、オリーブ油やハーブと合わせてディップにしたり。肉や魚の付け合わせにもぴったりです。コクがありながらもくどさのない味わいは、乳酸発酵ならでは。さわやかな酸味が、料理の幅を広げてくれます。特に、ラブネとにんにくの相性は抜群! 食欲をそそる香りが加わって、シンプルなサラダやソテーを満足感のあるごちそうにしてくれます」

水きりしたラブネに、塩と砂糖で下味をつけて。

「ラブネのギリシャ風サラダ」の作り方

まるでケーキのような美しさ。アボカドやスモークサーモンなどと合わせるのもおすすめ。自由な発想でアレンジを。

しっかり水きりしたヨーグルト「ラブネ」を使って、ワンランク上のサラダはいかが? 野菜がもつ甘味や旨みに、ラブネのまろやかなコクと酸味が重なり合い、主役級の一皿に仕上がります。心ときめく盛り付けも楽しみながら、テーブルを華やかに彩って。

  • [材料](2〜3人分)
    ラブネ(一晩水きりしたヨーグルト)300g
    1g
    砂糖2g
    フェタチーズ(角切り)40g
    きゅうり1/3本
    いんげん6本
    ビーツ(※1)1/6個
    いちじく1個
    ミニトマト8個
    黒オリーブ6個
    ミックスリーフ適量
    ヘーゼルナッツ適量
    レモン適量
    オリーブ油適量
    ザータル(※2)適宜
    ディル適宜

    ※1 皮つきのまま丸ごとをアルミホイルで包み、180度に予熱したオーブンで約20分焼く。
    ※2 中東のミックススパイス。丸山さんは、白ごま、スマック、タイム、オレガノ、塩をブレンドした自家製ザータルを使用。

  • [作り方]
    1.ボウルにラブネ、塩、砂糖を入れ、泡立て器でなめらかに混ぜる。
    2.きゅうりは半月切りに、いんげんは色よくゆでて3cm長さに切る。ビーツは皮をむいてくし形に、いちじくは皮つきのままくし形に切る。ミニトマトは半分に切る。
    3.皿の中央に①の半量をこんもりと乗せ、スプーンの背でまるく広げる。
    4.③にミックスリーフと②をのせ、フェタチーズと黒オリーブ、砕いたヘーゼルナッツを散らし、レモンを絞る。オリーブ油を回しかけ、好みでザータルを振り、ディルを飾る。

残ったラブネは清潔な保存容器に入れ、冷蔵庫で34日ほど保存可能です。

ラブネを広げて野菜の器に仕立てれば、見た目も華やか。ヨーグルトで作るラブネなら、たっぷり食べても軽やかで、
罪悪感もなし!

発酵が広げる料理とお酒の世界

フレンチレストラン、ビストロ、地中海料理、居酒屋と、多彩なスタイルのお店を展開する丸山さん。どのジャンルにおいても、「発酵は欠かせない要素だ」と語ります。

「たとえばコースを組み立てるときに、味が決まりすぎた皿が続くと食べ手は疲れてしまう。そんなとき、肉や魚ではなく、野菜を主役にした一皿を考えるのですが、そこで頼りになるのが発酵の力です。野菜を発酵させることで、独特の風味や複雑な旨みが表現できて、コースに緩急もつく。また、お酒に合う料理を考えるときにも、発酵は切っても切れない存在です」

ワイン、日本酒、焼酎――、お酒もまた発酵の産物です。発酵を取り入れた料理は、お酒とのペアリングをより豊かに、そして味わい深いものにしてくれます。

「特に今は、日本の“居酒屋文化”をもっと世界に発信したいと思っていて。日本酒や焼酎は米麹による発酵でできているから、果実酒であるワインよりもさらに懐が深く、さまざまな食材とよく合います。ラブネのサラダと焼酎を合わせるのも、おもしろいですよね。こうした組み合わせを広げていくことで、従来の居酒屋のイメージを刷新するような、新しいフードカルチャーを提案できるんじゃないかと考えています」

発酵をきっかけに、モノ選びの目を養う

味噌、醤油、みりん、酢など、私たちは日常的に多くの発酵調味料を使っています。納豆や漬け物、ヨーグルトなども、食卓に欠かせない食材でしょう。あまりに身近すぎて「発酵」と意識することは少ないかもしれません。

「発酵をもっと暮らしに取り入れるヒント」を尋ねると、丸山さんは少し考えてから「味噌づくり」と答えてくれました。丸山さん自身も、味噌づくりを始めてから、改めて多くの発見があったと振り返ります。

「味噌づくりは本当におすすめ。びっくりするくらいおいしくできるし、菌の働きで時間をかけて変化していく過程も楽しい。お子さんのいるご家庭なら、ぜひ一緒に仕込んでみてください。子どもの手には常在菌が多く、おいしい味噌ができるとも言われています。発酵の営みを体験することは、普段口にするものがどうやって生まれているのかを考えるきっかけにもなると思います。その意識は、食やモノを選ぶときの視点を養うことにもつながるんじゃないかな」

発酵から広がる、新しい食文化のかたち

丸山さんは、レンズ豆やひよこ豆で仕込む味噌など、伝統的な味噌をアレンジした、新しい味噌づくりも楽しんでいるそう。

「レンズ豆の味噌は、コクと甘味があって甜麺醤に近い味わい。バーニャカウダソースの隠し味に使って、和のエッセンスをプラスしたりと、お店でも活躍しています。味噌だけでなく、醤油や酢、ヨーグルトもおもしろい。発酵はもっともっと勉強していきたいですね」

多様な食文化への深い理解とリスペクトに基づきながら、ジャンルの垣根を軽やかに越えて、豊かな食シーンを提案する丸山さん。暮らしに根づいた伝統的な食文化であると同時に、新しい可能性を秘めた発酵は、丸山さんにとっても尽きることのない探究の対象です。

「日本の発酵文化と世界の食材をつないで、新しい居酒屋のかたちや食文化を発信していけたらと思います」

次回は、神楽坂のワインバー「ACIÉ」オーナー・岩井悟さんが登場。ドリンクのスペシャリストが推す発酵食とは? どうぞお楽しみに!

丸山智博(まるやまちひろ)さん

丸山智博(まるやまちひろ)さん

1981年生まれ、長野県出身。大学では工学部で化学を専攻。卒業後、料理の道へ。フランス料理店「ラミ・デュ・ヴァン・エノ」にて榎本実シェフに師事。その後、都内のビストロやカフェでシェフを務めながら、ケータリング事業をスタート。現在は、株式会社シェルシュの代表取締役として、フレンチビストロ「MAISON CINQUANTECINQ」、ギャラリー兼ビストロ「AELU」、居酒屋「MARUYAMA」「LANTERNE」などの直営店の運営のほか、ケータリング、カフェやレストランのプロデュース、ディレクション、コンサルティング、メニュー開発など、幅広い事業を手がける。