発酵を訪ねる
西宮発、“ちょっと体にいいごはん”で
麹の魅力を発信する「W BROTHERS」
2025/11/20
発酵を訪ねる
2025/11/20
大阪と神戸のほぼ中間に位置する、“住みたい街ランキング”常連の人気都市・兵庫県西宮市。JR西宮駅からほど近い国道2号線沿いに店を構える「W BROTHERS」は、その名の通り兄弟で始めたお店です。“発酵”に興味を持った兄・渡邉浩(わたなべひろし)さんをきっかけに、麹を使ったレシピ作りに没頭。店で提供するメニューはもちろん、オリジナルスパイスをはじめとする調味料の開発やレシピの発信など、さまざまな分野に進出。西宮から世界へ――、「麹の魅力を海外にも発信したい」と、夢は尽きません。

「W BROTHERS」は麹を使ったボリューム満点の料理やスイーツ、ドリンクが楽しめるお店。オールタイムで楽しめるランチプレートは種類豊富で、週替わりの小鉢や選べるソースなど、毎日でも味わいたくなるメニューが並びます。カフェタイムには、手づくりのスイーツや麹ドリンクなども展開。ファミリー層の多い西宮市のなかでもアクセスの良い立地にあり、ランチタイムは特に賑わいます。

「お店を始めたのは2020年9月。最初は同じ西宮市内で、テイクアウトやデリバリーメインの小さなお店でした。でも、やっぱり店舗型のお店を持ちたいねと弟と話しをしていた矢先に、この場所に出合ったんです。移転して2年、ようやく地元の人にも馴染んできたのかなと感じています」
兄弟で始めた「W BROTHERS」。兄の浩さんは、かつて海外留学やイタリアンカフェで下積みを経験し、“麹”の世界とは縁遠い世界で活躍していたそうです。
「イタリアンで経験を積んだあと、“和バル”と呼ばれるインバウンド向けの飲食店でも働いていました。そこでは日本酒の八海山を提供していて、その業者の方から“日本酒以外にもこんな商品があるよ”と教えてもらったのが、今も店で使っている『八海山の麹生』という生麹でした。当時は唐揚げなど、メニューの一部に使ってみる程度でしたが、コロナ禍でその店が閉店することになってしまって。弟も同じ店で働いていたので、これからどうしようかと話し合って、西宮を新天地として飲食店を始めることに決めました。コンセプトに悩んでいたとき、“体に良いものが楽しめるレストラン”が良いねという話になり、麹を使った料理を展開する今のスタイルにたどり着いたんです」

お店のスタイルやコンセプトが決まるなか、麹選びも試行錯誤が続いたそうです。
「八海山の生麹以外にも、いろんな種類の麹を試しました。でもやっぱり、八海山の生麹が一番雑味やにおいもなく、尖った感じもないんです。一番しっくりきたのがこれでしたね。実際、現地にも足を運びました。日本酒造りと同じように、しっかりとお米を磨いてから麹菌を振りまくことで、この味になるそうです。生の麹を使って調味料を作り、料理を仕上げる。老若男女、食事を楽しんでもらいながら腸内環境を整えて、体の内側からキレイになる。そんな思いから『W BROTHERS』は始まりました」

お店で展開する料理のコンセプトは“ちょっと体にいいごはん”。メイン食材はもちろん、小鉢やサラダのドレッシング、ソースにいたるまで、麹を使ったメニューを提供しつつ、こだわりすぎず、無理なく続けられる“ちょうどいい”メニューが並びます。
「麹は昔から日本で使われている食材ですが、健康食材というイメージがまだまだ強い。健康食材と聞くと、お客さんの先入観もどうしても強くなってしまいます。うちはあくまでも“ちょっと体にいいごはん”がコンセプト。麹の使い方や料理のバリエーションの多さを、もっと皆さんに知っていただきたいんです。塩麹や醤油麹の使い方が分からない人って、案外多いんですよ。肉や魚に塗って焼くだけでも美味しくなりますけど、それだけしか知らない人も多い。スープや和え物、さまざまな料理に使えるんですよ、さらに美味しく召し上がっていただけますよ、と伝えたいのが今のランチプレートです」

オールタイムで注文できるランチプレートは7種類。「麹で漬けたグリルチキン」は2種類のソースから選べるほか、小鉢や汁もの、たっぷりの野菜が一度に楽しめるボリューム満点のメニューです。すべてのメニューに麹が使われていて、小鉢の内容は週替わり。いくつかのメニューは公式サイトでもレシピを公開していて、再現性の高さも魅力のひとつです。
「公開しているレシピは、醤油麹や旨塩麹など、オリジナル調味料を使っているので、同じものを使えば誰でも簡単に再現できると思います。イタリアンで働いていた経験もあるので、『W BROTHERS』は和洋折衷、いろんなメニューがあります。簡単なものだと、パスタに調味料をかけるだけでも味が整いますし。何にでも使ってもらえますね」

渡邊さん自身も麹を使った料理を日常的に取り入れることで、体調の変化も感じるようになったそうです。
「やっぱり体調面の改善ですね。お店のランチプレートでは『甘麹スムージー』をショットグラスでお出ししています。僕も毎日飲んでいて、病気をする回数が減ったり、お通じが良くなったように感じます。日常なので、“ここが劇的に変わった!”というわけではありませんが、日々の生活で感じることは多いですね。お店で販売している調味料やドレッシングを愛用してくださっているお客様の中にも“風邪をひかなくなった”という声をいただきますし。お相撲さんをはじめ、アスリートの方にも愛用していただいていて“飲むと調子が良い!”とか“飲んでいる時のほうが勝つ!”なんて声もあったりするくらいで(笑)」

種類豊富なメニューが楽しめるランチプレートはお店で。自宅ではオリジナルの麹調味料やスパイスを使って、さまざまなメニューに取り入れられるのも「W BROTHERS」の魅力のひとつです。
「いまお店で販売しているのは、万能粉末の『麹パウダー入り これかけスパイス』。プレーンやカレー、チリ味のほかに、期間限定のフレーバーも展開しています。今日のメニューだと、サツマイモサラダにお好みのスパイスを振りかけて食べるのをオススメしています。『減塩“旨塩麹”』は生の米麹、塩、水のみで作った低温発酵・非加熱の調味料。酵素がたっぷり含まれているだけでなく、市販のものより塩分が控えめなので、漬け込んだお肉をそのまま焼いても焦げにくいんです。メインの肉や魚だけでなく、ドレッシングにも使えます。ほかにもスムージーや『万能麹“醤油麹”』や『生“甘麹”』など、オリジナルの調味料の開発にも力を入れています」
世界的にも注目されつつある、日本の国菌・麹菌。その魅力を世界に広めることも、渡邊さんの夢のひとつです。
「僕の最終目標は、海外にアンテナショップを持つこと。もともと外国が好きだったというのもあるのですが、こういった調味料を海外にも発信していきたい。全国はもちろん、海外の人にも日本の国菌である麹の魅力を、そして『W BROTHERS』のことを知ってもらいたいんです。今ではお店の2階をセントラルキッチンにして商品開発にも力を入れています。お店で使用する非加熱の麹調味料は発酵が進んでしまうため、賞味期限が短くなってしまいますが、万能粉末の『麹パウダー入り これかけスパイス』は持ち運びができて、手軽に使えるのが魅力。キャンプや外出先で麹の魅力を知ってもらえるかなと思っています。まだまだこれからですが、いまではアメリカやカナダ、スウェーデンやノルウェー、中国でも『麹パウダー入り これかけスパイス』が手に入るようになったんです」

万能粉末の『麹パウダー入り これかけスパイス』にはマルコメの「プラス糀 生塩糀パウダー」を使用。
「粉末調味料づくりで試行錯誤しているときに、『プラス糀 生塩糀パウダー』に偶然出合ったんです。生塩糀パウダーに合わせる他の食材も無添加のものにこだわっています。『これかけスパイス』を使うだけで、お肉が柔らかくなるのはもちろん、味に深みや旨みをしっかりと感じてもらえると思います。調味料づくりは今のお店に移転してから始めた事業なのですが、今ではお子さんの食事や健康管理に気を配る方にも多く愛用してもらっていますね」

「W BROTHERS」は兄の渡邉浩さん、弟の俊治さんとふたりでスタートしましたが、現在は兄の浩さんが中心となってお店を運営しています。麹を使った調味料づくりやレシピ開発など、今後の展開にも注目です。
「最近、弟は奥さんの実家がある長野県で農業を始めました。僕の両親も畑をやっているので、お店で使う野菜は両親が作る野菜を中心に、地元の市場で仕入れたものを使っています。今後は、弟が長野で育てた野菜も取り入れていけたらと思っています。ウェブサイトでは誰でも作れるレシピを公開しつつ、お店ではちょっと珍しい食材を使って、ここでしか味わえないメニューも出していけたら。以前、おから味噌づくりのワークショップを企画したこともあるのですが、タイミングが合えば、今後もいろいろと企画していきたいです」