手仕事カレンダー
Vol.17 国際中医薬膳師・齋藤菜々子さんの
「しょうゆみりん酒粕」で手軽に、冬の薬膳おかず
2026/01/22
手仕事カレンダー
2026/01/22
今、薬膳がブームに。国際中医薬膳師で、料理家の齋藤菜々子(さいとうななこ)さんがこの時期に注目するのは、冬の発酵食品「酒粕」です。
「酒粕は『使いにくい』『独特の風味が苦手』という人も多いと思いますが、事前にクセを和らげて使いやすくしておけば、手軽に使えますよ」という齋藤さんに、日々楽しんでいる「しょうゆみりん酒粕」と、その活用法を教えてもらいました。冬の食卓に欠かせない「黒」の発酵食品の話も必読です!
日本酒の搾りかすである、酒粕。冬から春にかけて、新酒の時期には風味や香りのよいものが出回ります。「薬膳の考えでは、冬に起こりがちなさまざまな不調に働きかけてくれる食材です」と齋藤さん。
「気(生命活動を維持するために必要なエネルギー源)を補い、免疫力を高め、体を温める効果があるので、冷えたおなかを温めて、消化を促進します。さらに血流を促し、肌を潤してくれるなど、特に冬にはいいことづくめです」

冬に体を温めてくれる酒粕ですが、「そのままではかたくて使いにくい」「風味にクセがある」と感じる方も多いようです。そこで齋藤さんが教えてくれたのは、酒粕を湯で少しゆるめて、しょうゆとみりんを加えるだけの調味料「しょうゆみりん酒粕」です。
「ゆるいペースト状になるので調理にすぐ使えますし、しょうゆの塩けや香り、みりんのまろやかな旨みで酒粕の独特な風味が和らぎます。活用の幅も広がりますよ」
酒粕の酵素が、たんぱく質を分解する効果もあります。「しょうゆみりん酒粕」を漬け床にして肉や魚を漬けるとやわらかくなって、味がしっかりと入り、おいしく仕上がるそう。
「漬けた肉や魚を焼いて加熱することで、漬け床のアルコール分も飛び、酒粕特有の風味はさらに軽減されます」
今回は、「しょうゆみりん酒粕」で鶏肉を漬けたレシピもご紹介します。

なめらかなペースト状の「しょうゆみりん酒粕」。保存容器やジッパーつきの保存袋に入れ、冷蔵で2週間ほどを目安に保存できる。


酒粕は、板粕よりもやわらかくてポロポロとほぐれた状態の「バラ粕」がおすすめ。
「鶏肉のしょうゆみりん酒粕漬け」のつけ合わせに、長ねぎは長さ4等分、ししとうはへたを短く切っておく。
1.ボウルに酒粕を入れ、熱湯を加えてよく混ぜる。

熱湯を加えて溶かしながらよく混ぜていくと、ペースト状に。
「小さなかたまりが少し残っても大丈夫ですが、写真のように、おおよそなめらかに溶けるまで混ぜましょう」
2.酒粕が溶けてきたらAを加え、さらによく混ぜる。

でき上がり。「鶏肉のしょうゆみりん酒粕漬け」を作るときは、全量をジッパーつき保存袋に入れておく。
1.鶏肉は余分な脂や筋を取り除き、皮目を下にして繊維を断ち切るように浅く切り込みを入れ、横半分に切る。

繊維を断つと、鶏肉が熱で縮みにくくなる。まな板に横長におき、2㎝程度の間隔で数カ所、切り込みを入れる。
2.「しょうゆみりん酒粕」入りのジッパーつき保存袋に入れてもみ込み、空気を抜いて袋の口を閉じる。冷蔵室に入れ、一晩以上漬ける。

左 袋の上からやさしくもみ込む。
右 袋内の空気をしっかり押し出して抜き、平らにすると、味が染み込む。この状態で冷凍保存も可能。
漬け床は1回ごとに新しくすること。
3.鶏肉を取り出し、表面についた「しょうゆみりん酒粕」をぬぐい、さらにペーパータオルにとって軽くおさえる。

「しょうゆみりん酒粕」は焦げやすいので、鶏肉の表面に残らないようにするのがポイント。
ペーパータオルで軽くおさえると、余分なものが取り除ける。
4.フライパンにサラダ油を中火で熱し、鶏肉を皮目から入れ、あいたところに長ねぎを並べて焼く。2分ほどして焼き色がついたら上下を返して、酒を回しかける。煮立ったらししとうを加え、ふたをして弱火にし、6分ほど加熱する。火を止めて、そのまま5分ほどおき、余熱で火を通す。

鶏肉の焦げ防止と蒸し焼きにするため、酒を回しかける。
肉や魚の漬け床としてはもちろんのこと、「好みの野菜を塩でもんで水分を抜き、一晩漬けてもおいしい。非加熱のため、酒粕の独特な風味が感じられやすく、酒粕が好きな方におすすめです(※)」と齋藤さん。
また、冬に試してほしいのが、「しょうゆみりん酒粕」を加えて作る「粕汁」。ほんのりと酒粕の風味が漂い、食べると体がポカポカに。「酒粕が苦手な人や子どもでも食べやすくなりますよ。加熱するので、肉や魚を漬けたあとの漬け床でも作れて、始末よく料理ができます」
※非加熱の酒粕にはアルコール分が含まれています。アルコールの苦手な方、妊娠中の方、子どもは食べるのを控えましょう。

豚バラ肉、にんじん、大根、ごぼうなどの具材を、だし500mLで煮て、「しょうゆみりん酒粕」大さじ5〜6、
味噌大さじ1を加える。2〜3分煮立たせ、アルコール分を飛ばす。
薬膳では、「冬は体を温めて、腎を養う」と考えます。「腎」とは生命力を蓄え、体の成長、発育、生殖や老化に関わり、水分の貯蔵や代謝も行う部位のこと。西洋医学の腎臓よりも、もっと広い概念でとらえられています。
「体が冷える冬は、トイレが近くなるなど水分の代謝が活発になり、腎に負担がかかりやすくなります。腎が弱ると、性ホルモンや生命力も弱り、老化も進みます。そのため腎の働きを助ける食材をとることが大切です」と齋藤さん。
「腎を養うには、“黒の食材”がいいと言われているので、特に冬は日常的にとってほしいですね。“黒の食材”というと、黒きくらげや黒ごま、ひじきなどがありますが、私のおすすめは黒米入りの甘酒と黒大豆の納豆です」

左 ほのかなピンク色がきれいな黒米入りの甘酒。
右 黒大豆を使った納豆。
「黒米を使った甘酒は、ウェブサイトでたまたま見つけて。黒大豆の納豆は、ごはんのお供なら甘い煮豆を食べるより、もっと食べる機会を増やせると思って取り入れました。どちらも調理の必要がなく、手軽にとれるので忙しい季節には助かります」

齋藤さんのお気に入り。篠崎の「国菊 黒米あまざけ」(左)は、米の10%に黒米を使用。
黒米の食感に、自然な甘みでさらりと飲みやすい。
あづま食品の「黒千石小粒なっとう」(右)は、「普通の納豆よりも粘りが少なくて、食べやすいです。
付属のわさびを加えると、クセになるおいしさです」
料理家・国際中医薬膳師
料理家・国際中医薬膳師
料理家のアシスタントを務めながら、日本中医食養学会・日本中医学院にて中医学を学び、国際中医薬膳師を取得。「今日からできるおうち薬膳」をモットーに、身近な食材を使った、だれでも作りやすいレシピが、雑誌や書籍などで人気に。著書に『体にいい 思いやり献立』(ワン・パブリッシング)、『レンチン薬膳ごはん』(家の光協会)、『基本調味料で作る体にいいスープ』(主婦と生活社)などがある。