手仕事カレンダー
Vol.18 旬の大根をおいしく食べきる!
中川たまさんの「ゆず香る甘酒のべったら漬け」
2026/02/19
手仕事カレンダー
2026/02/19
おいしい冬の大根。まるごと1本買ってきたら、どう調理しますか? 旬ならではの、みずみずしさやシャキッとした食感を失う前に、食べきるには?
料理家の中川たま(なかがわたま)さんのおすすめは、甘酒のやさしい甘みを生かした、ゆず香る「べったら漬け」。シンプルな材料で簡単に作れるレシピとアレンジ方法を教えてもらいます。中川さんの料理に欠かせない二つの味噌、米味噌と白味噌についての話も聞きました。
中川さんの暮らす神奈川県逗子市を含む三浦半島の特産、「三浦大根」。首から尻に向かって太く、抱えるほど大きい大根で、みずみずしく、煮くずれしにくいのが魅力です。冬の市場に行けば、朝掘りの大根が手に入るそう。
「フレッシュなうちに調理して食べきりたいので、首や中間の部分は漬物や煮物に、先端のほうは炒め物に……、使い道をいろいろと考えます」
なかでもよく作るというのが、「べったら漬け」。塩で下漬けした大根を米糀と砂糖で漬け込む、東京発祥の漬物です。「米糀の甘酒を使えば一晩漬けるだけで簡単にできる」と言います。
「市販品には甘みが強いものもありますが、甘酒を使うと自然な甘みがくどくなく、さっぱりとした味わいになります。冷蔵で1週間ほど保存できるのもいいんですよね」

米糀の甘酒は、市販品はもちろん、自分で仕込むことも多いという中川さん。
「やさしい甘みが砂糖やみりんの代わりになり、料理にもよく活用します。そして、『飲む点滴』と呼ばれるほど、栄養が豊富。加熱しても栄養素の一部は残るそうですが、できるだけ加熱せずにとることも意識しています。夏はレモンを加えて飲んだり、シャーベットにしたりして楽しみ、冬は『べったら漬け』がお気に入りです」
中川さんの「べったら漬け」は、ゆずの果汁や果皮の上品な香りと酸味がアクセントになり、甘酒の自然な甘みとマッチしてさわやかな風味に。「べったら漬け」が苦手という人にもぜひ食べてみてほしい味です。

市販の「べったら漬け」よりも、大根が薄めで食べやすい。


甘酒は、市販品でも自家製でも。塩は天然塩がおすすめ。中川さんはフランスのゲランドの塩を使っている。
1.大根は縦半分にして皮をむき、2〜3㎜厚さの半月切りにする。ゆずは皮と果汁に分け、皮はせん切りにする。


大根の厚さは、好みの食感に合わせて変えても。「薄いほど水分が出て漬かりやすく、
厚いほど漬かりにくいので、厚さを変えたら漬ける時間を調整してみて」(左)。
ゆずの皮は、白い部分に苦みがあるので、そいでからせん切りに(右)。
2.ボウルに大根を入れ、塩を加えて軽くもみ込み、ラップをかけて30分ほどおく。


大根全体にまぶすように塩を軽くもみ込む(左)と、しんなりとした状態に(右)。
3.②の大根の水けをしっかり絞り、別のボウルに入れる。ゆずの皮、果汁、昆布、甘酒を加えて軽く混ぜる。

塩をもみ込んで30分おくだけで、大根から水分がたっぷり出る。
この水けをぎゅっと絞ってから漬けると、漬け汁の味がよくしみる。
4.保存容器の底に③の昆布を1枚敷き、③を入れ、もう1枚の昆布を上にのせる。冷蔵室に一晩おく。冷蔵で1週間ほど保存可能。

上下の昆布で大根をはさみ、旨みを閉じ込めるのが中川さん流。
「昆布は、容器の大きさに合わせて切ってもいいですし、大根や漬け汁といっしょに混ぜて漬けても、
もちろんいいですよ」
自然な甘みとさわやかさが感じられる「べったら漬け」は、さまざまなアレンジが楽しめます。そのままの風味を生かして季節の野菜と和えれば、たちまち副菜が完成! さらなるアレンジで、漬物の域を超えたおしゃれな一品に。
「ぶりなど、お好みの魚の刺し身にのせてカルパッチョにすると、『べったら漬け』の風味でさっぱりと食べられます。魚の刺し身といっしょに酢めしにのせて、ちらし寿司にするのもおすすめです。ほかには、生ハムなど塩けのあるたんぱく質と合わせても、おいしいですよ」

ぶりの刺し身と合わせてカルパッチョに。塩を振って水分を出したぶりの刺し身に「べったら漬け」をのせ、
オリーブオイルを回しかけ、あらびき黒こしょうを振るだけ。
兵庫県出身の中川さん。地元では餃子に味噌だれをつけて食べるくらい、米味噌にはなじみがあるといいます。
「夫も兵庫県出身ですが、ご先祖さまが京都出身で、夫の実家では白味噌をよく使います。その影響で、わが家も米味噌と白味噌、二つの味噌を常備するようになりました。毎年のお雑煮も、元旦には九州にルーツをもつ私の実家にならってすまし汁を、2日には丸餅に白味噌の京風をいただきます」
毎年、生糀が出回る寒仕込みのころに、米味噌と白味噌の両方を仕込むそう。「米味噌は5kgほど作って半年くらい熟成させますが、白味噌は1カ月ほどで熟成します。白味噌は発酵が早く進むので、ヨーグルトメーカーを使って200gほどの少量を作り、早めに使いきるようにしています」

中川さんが昨年仕込んだ米味噌(右)と、仕込み立ての白味噌(左)。
白味噌は、米味噌に使う米糀の倍量を使って仕込むため、甘みとコクのある味わいに。その特徴を、日々の料理にも活用しているそうです。
「わが家では、さばの味噌煮も白味噌で作りますし、豚汁も甘みのある淡路島の玉ねぎを加えて白味噌仕立てにしています。スイーツにも合いますよ。白味噌の甘みがほしいときには、米味噌に白味噌を足して、混ぜて使うこともあります。二つの味噌があると、おいしさの幅がぐっと広がりますよ」

水でのばした白味噌を、焼いた玄米餅にかけて。白味噌のやさしい甘みとほのかな塩けで、上品なスイーツに。
料理家
料理家
神奈川県逗子市で自然食品店勤務、ケータリングユニット「にぎにぎ」を経て、2008年に独立。季節の野菜やハーブ、果物を使った、シンプルながらセンスあふれる家庭料理、保存食、スイーツなどのレシピが人気。器選びやライフスタイルにも注目が集まる。著書に『せいろで日々ごはん』(家の光協会)、『ふんわり、もちもち。せいろで蒸しパンとおやつ』(朝日新聞出版)など多数。『季節を慈しむ保存食と暮らし方 暦の手仕事』の続編として『年を重ねて今を彩る 暦の手仕事』(ともに日本文芸社)が発刊されたばかり。