世界の発酵食品探訪

<前編>タイにも納豆や甘酒がある!?
料理研究家・橋本加名子さんが魅了された発酵の国タイ

2026/02/26

<前編>タイにも納豆や甘酒がある!?料理研究家・橋本加名子さんが魅了された発酵の国タイ
<前編>タイにも納豆や甘酒がある!?料理研究家・橋本加名子さんが魅了された発酵の国タイ

まだあまり知られていないものの、タイは多彩な発酵食が受け継がれてきた発酵の国。料理研究家の橋本加名子(はしもとかなこ)さんは納豆や発酵調味料などのタイの発酵に魅了されて、発酵を探求する旅を長年続けています。前・後編の2回にわたって、タイの発酵文化についてお話を伺いました。

バンコクで暮らしながら本場のタイ料理を学ぶ

昨年12月に『発酵タイごはん100 本格的なタイ発酵料理が自宅で楽しめる!』を出版した料理研究家の橋本加名子さん。10年以上現地で学んできた発酵食の作り方やレシピをまとめた、ディープなタイの魅力を教えてくれる1冊です。

マニアックな発酵食を紹介している『発酵タイごはん100 本格的なタイ発酵料理が自宅で楽しめる!』(主婦の友社)

橋本さんがタイ料理に出会ったのは、20代で留学していたアメリカでした。

「移民の多い地域で、タイ料理やベトナム料理店がたくさんありました。そこで初めてタイ料理を食べたところ、こんなにおいしいものがあるんだ!と。当時はハーブやスパイスもまだ馴染みがなかったので驚いたんです」

帰国後は商社に勤務しながらタイ料理教室に通い続けていたものの、「もっと本物のタイ料理を知りたい」という思いが募り、会社を辞めてバンコクへ。現地の商社で働きながらタイ料理を食べ歩いたり、料理学校をハシゴしたり。ベトナム、ラオス、カンボジアなどの隣国にも足を運び、アジア料理を学びました。

発酵食に目覚めたチェンマイの市場

バンコクで1年半過ごした後は日本で料理教室を主宰しながら、フードコーディネートなど、料理の仕事や育児に邁進していた橋本さん。

「当時はタイの発酵食には気づいていませんでした。母が懐石料理の先生で子どもの頃からみそ、ぬか漬け、梅干しなどを手づくりしていたのを見て育ったので、発酵は身近な存在ではあったのですが」

タイの発酵食に出会ったのは40代の頃。大病を経験した後に行ったチェンマイで転機が訪れました。

チェンマイの市場で売られている板納豆トゥアナオペーン。唐辛子やハーブ入りもある。

「チェンマイの市場に納豆や漬物、発酵たけのこなどが並んでいて、タイ人って納豆を食べるんだと興味が湧いたんです。それと同時にベジタリアン料理の先生にも出会って、ナムプラーを使わないタイ料理があることも知った。それから頻繁にチェンマイに通うようになって、少数民族の家庭で納豆料理を教えてもらうなど、発酵を追い求めるようになりました」

地方によって異なるタイの発酵文化

橋本さんにとってタイの発酵の魅力は地方によって特徴があり、バラエティに富んでいること。インドシナ半島の中央に位置し、カンボジア、ラオス、ミャンマー、マレーシアと国境を接するタイは多民族国家でさまざまな人々が暮らし、土地ごとに食文化も発酵食も異なります。

「北部、東北部、中央部、南部と主に4つの地方に分けられますが、北部の中でもバンコクに近い地域と国境に近い地域では全然違います。土地によって食べるものも違うので、北部の納豆を南部の人は食べないと思うし、タイの人にも発酵食はあまり知られていません。最近は国境に近いエリアが面白いなと思っているのですが、まだまだ把握しきれていませんね」

タイ南部で作られている魚醤タイプラー。日本のアジア食材店でも手に入る

魚醤ひとつとっても地方によって異なり、例えば日本人にも馴染みのあるナムプラーは中部のもの。中部のナムプラーはカタクチイワシなどの海水魚を発酵させますが、海のない北部では淡水魚を使用。東北部では淡水魚を米ぬか発酵、南部では海水魚の内臓を発酵させるなど、土地によって違います。

「タイにも甘酒があるんですよ。日本の甘酒と違って餅麹を使っていて、すごく甘いんです。発酵肉や発酵ソーセージもおいしいし、豆腐を発酵させた腐乳もある。腐乳は中国だと毛カビを生やして漬けたものが主流ですが、タイでは紅麹を発酵させたものが多い。タイスキのタレに使ったり、ピンク色のスープヌードルも現地では有名です」

タイをはじめ、日本や中国、韓国の発酵食も手作りしている橋本さん。

今後さらに力を入れて学びたいのは、北部の発酵食なのだそう。

「北部は日本とちょっと似ていて、優しい味で落ち着くんです。野菜をたくさん食べるし、山菜も豊富。日本人がタラの芽などのほろ苦い山菜を食べる感覚で、植物の新芽を食べる。おいしいし、そういうところが面白いなって。きのこもおいしくて、ネームヘッドという発酵きのこもあります。ひらたけを細く裂いて、もち米を混ぜて発酵させたものでおやつのように食べるんです。

こんなふうに発酵食がたくさんタイにあることはまだまだ知られていません。日本のタイレストランで食べられる料理にも発酵食が使われているので、そういう視点で食べてみると面白いと思います」

次回は4つの地方の代表的な発酵料理について紹介してもらいます。

橋本 加名子(はしもと かなこ)さん

料理研究家

橋本 加名子(はしもと かなこ)さん

料理研究家

橋本 加名子(はしもと かなこ)さん

料理研究家、栄養士、国際薬膳調理師、防災士。海外留学と海外商社勤務時代にタイ、ベトナム、ラオス、広東料理、帰国後は懐石料理を学ぶ。料理教室「おいしいスプーン」を主宰する傍ら、飲食店のプロデュースやフードコーディネートに携わる。ライフワークとしてタイの発酵食を探求。著書に『毎日の腸活に役立つ 麹豆乳クリームレシピ』(ブティック社)、『発酵タイごはん100 本格的なタイ発酵料理が自宅で楽しめる!』(主婦の友社)など。

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