発酵を訪ねる

始まりは社員食堂!?大阪・豊能町の里山で、
発酵をテーマに2つのレストランを持つ複合施設
「JOZU+」

2026/03/19

始まりは社員食堂!?大阪・豊能町の里山で、発酵をテーマに2つのレストランを持つ複合施設「JOZU+」
始まりは社員食堂!?大阪・豊能町の里山で、発酵をテーマに2つのレストランを持つ複合施設「JOZU+」

大阪市内から車で約40分。のどかな里山の風景が残る大阪・豊能町にある「JOZU+」。レストラン、カフェ、オリジナルの家具やセレクト雑貨が並ぶショップなどが1カ所に集まる複合施設として、202210月にオープンしました。1階には和食が楽しめるレストラン「孚-ふぅ-」、2階には洋食やカフェが楽しめる「閑日-かんじつ-」。どちらも発酵をテーマにした料理が楽しめるだけでなく、ゆったりとした空間に心癒やされると、連日多くの人で賑わっています。

発酵がテーマのレストランと家具・金物の物づくり、 ものづくりへの思いはどちらも同じ

「JOZU+」を手掛けているのは、家具・金物工場の「上手工作所」。工作所がどうしてレストランを始めることになったのか。実はそのきっかけは、工作所で働く従業員のための社員食堂でした。「上手工作所」が創業したのは、現在の店舗がある豊能町ではなく東大阪市。「JOZU+」オーナーの徳田雅代さんとご主人を中心に、少人数でスタートした工場でした。事業の規模が大きくなるなか、工場が火事に遭ったことをきっかけに、周囲に家屋などがない土地を探してたどり着いたのが現在の場所。その後、事業は順調に進んだものの、周囲には家屋はもちろん、コンビニやレストランもない田舎だったため、従業員の“お昼ご飯事情”に頭を抱えることが増えたそうです。

「従業員は若い世代の子も多く、出勤前にコンビニやスーパーでお弁当を買ってくることが多かったんです。でも、そのゴミが恐ろしいほどの量で……。ちょっとしたお弁当でもプラスチックゴミが大量に出てしまう状況が嫌になってしまい、それなら社員の日々の健康のためにも社員食堂をつくろうと決めたんです。最初の頃は私が料理を担当していたんですが、ありがたいことに従業員が増えたことで、仕事の片手間では対応しきれなくなってしまって。そこで、料理上手な私の母と従業員のお母さんのふたりに担当してもらうことになりました」

事業所内で始まった社員食堂でしたが、従業員が70名を超える頃にはキッチンも手狭に。そこで新しい社員食堂の場所として建てられたのが、現在の「JOZU+」の建物でした。

「当初は、プレハブ小屋ぐらいの簡易的な建物を予定していたんですが、事業の一環で地元の凄腕料理人と出会った時、『せっかく建物を建てるのに、自分たちの食堂だけではもったいない! レストランでもしたらいいんじゃない? 料理のことなら教えてあげるよ』と言われたんです。その時はあまり深く考えていなかったんですけど、気がつけばレストランの話が進んでいて。プレハブのつもりだった建物も規模の大きな建物になっていたんです(苦笑)」

あれよあれよと、レストラン事業をスタートすることとなった上手工作所。オーナーの徳田さんが中心となってメニュー内容を考案するなか、「食」の在り方について改めて考えさせられたそうです。

「野菜やお米はもちろん、『JOZU+』ではどんな調味料を使うかを考えたとき、改めて『食』の難しさを思い知ったんです。塩はどこのものを使うのか、白砂糖がどう成り立っているのか……。いろいろなことを考えていくなかで、何のためにこの店をやるのかと振り返ったとき、従業員の健康のためにやりたいと思ったのが始まりだったんですよね。華美なものや流行、見栄えを重視するものでなく、健康的で毎日“美味しい”と思える料理が出せたらいいよねって。日本人が昔から食べ慣れているお漬物やおみそ汁。シンプルでも毎日食べたいもの、それが発酵食材だと気づいたんです」

発酵食材のおいしさを再確認したことで、メニューの方向性が定まった「JOZU+」。スタート当初はアイスクリームやいなり寿司のお店など、敷地内でさまざまな飲食店を手がけていましたが、現在は1階に和食の「孚-ふぅ-」、2階に洋食とカフェの「閑日-かんじつ-」の2店舗を展開しています。

ホテルステイ気分で食事が楽しめる、開放感ある大きな窓が印象的な1階レストラン「孚-ふぅ-」。

2階の洋食&カフェ「閑日-かんじつ-」はよりカジュアルに。カフェはオールタイムで楽しめます。

「『発酵』がどう身体に良いのか、どんな料理に組み込んだら良いのかを少しずつ勉強して。行き着いたのはやっぱり素材でした。普段、上手工作所で木や鉄などの素材を使って物づくりをしていることもあってか、レストランを始めた当初は全く違う業種をやり始めたなと思っていたんですが、結果的には工作所もレストランも同じ。物づくりに繋がるんですよね。レストランで私たちがやっていることは、目の前にある食材を使って料理をすること。今の時期なら地元で獲れるちょっと変わった野菜を使って、何か面白いことができないかな?というところからメニューづくりが始まる。料理本を参考にして手の込んだ料理をつくるのではなく、素材ありきでメニューを決めていく。大阪の繁華街には素敵なお店がたくさんあるけれど、そこと張り合うんじゃない。自分たちはこの場所で、従業員たちとやりたいことをやる。『JOZU+』はそういうお店だと思っていますし、ここでしかできないことだと思うんです」

現在、2つのレストランで使用している発酵調味料は味噌や糀、甘酒やヨーグルトなど多岐にわたります。味噌や塩糀などの調味料はほとんどが手づくりです。

「素材を漬けたり、かけたりと、ほとんどのお料理に糀を使っています。現在は地元・能勢のお米からつくられた糀を仕入れて塩糀や醤油糀などを手づくりしていますが、今後は自分たちでつくった糀に切り替えていく予定です。ほかにも、味噌は毎年冬に一年分をスタッフ総出で仕込んでいます。発酵調味料以外にも、小麦粉を使う料理を米粉に切り替えたり、豆乳からマヨネーズをつくったり。それでも、オーガニックやビーガンにこだわるのではなく、あくまでも無理のない自然な感じを目指しています」

フロアごとに和と洋のお料理が楽しめるのも「JOZU+」ならでは。それでもオープン以来、何度となく改革が行われてきたそうです。

「元々は1階でランチ、2階でカフェを展開していましたが、より多くの人に『JOZU+』を楽しんでもらおうと、2階フロアを現在のスタイルに変えたのが昨年2月頃。小さなお子さんがいても周りが気にならない、カジュアルな雰囲気になればいいなと思ったんです。気軽に味わえる洋食で発酵の魅力を知ってもらって、次は1階で和食を楽しんでもらったり。いろいろな使い方を楽しんでもらえると嬉しいですね」

スタッフみんなで手づくりする発酵調味料
“無理のない”、でも毎日でも食べたくなるメニューを

2つのレストランのメニューは春夏秋冬、季節ごとに内容が変わります。料理は発酵マイスターの資格を持つスタッフを中心に、旬の素材を使った逸品が並びます。

「肉や魚などの主菜をメインに考えるのではなく、旬の野菜をもとにメニューを考えることにこだわっています。発酵は和食のイメージが強いかと思いますが、2階の『閑日-かんじつ-』ではクッキーやケーキなどのスイーツにも発酵調味料を使用しています。糀に興味を持たれているお客様は意外と多く、『どうやってつくるの?』と聞かれることがよくあるんです。一般的なレストランではシェフにレシピを尋ねるのは気が引けてしまいますが、1階のショップでは手づくりの塩糀や醤油糀を販売していることもあって、いつでもレシピをお伝えできるようにしています。私自身、発酵調味料を日々の生活に取り入れることで腸内環境が改善されてきたなと感じることが増えました。でもそれは1日で効果が出るような薬ではないし、お客様に無理強いはしたくない。難しく考えず、日々の食事に気軽に取り入れてみたらどうですか?と、ゆるい感じでやっていけたらいいのかなと思います」

塩糀や甘糀のほか、地元産の果物を使ったシロップなども手づくりで。

JOZU+」の店内は、母体である上手工作所が手掛けたテーブルやイスはもちろん、天然木材でつくられたモニュメントなど、木の優しい温もりにあふれています。そんな店内でいただく料理。1階の「孚-ふぅ-」ではメイン料理に具だくさんの汁もの、副菜6品や釜炊きのご飯など、見た目も色鮮やかな和食が並びます。2階「閑日-かんじつ-」ではピザやスキレット料理のほか、スイーツなどが楽しめます。塩糀や味噌、酒粕など自家製の発酵調味料を使ったひと手間加えた逸品は、どれも味わい深いものばかり。

「孚-ふぅ-」、2026年春の御膳料理のひとつ。「-塩糀の豚肩ロースステーキ御膳-」(2500円)。

「閑日-かんじつ-」、スキレットランチセット「豆乳マヨネーズで味わう鰆のガレット巻きと冬野菜」(2400円)。

「米粉と甘糀のシフォンケーキ」(560円)、「秋鹿酒造の酒粕チーズケーキ」(770円)など手づくりのスイーツも人気。

「『JOZU+』で食事をされたお客様からは『健康になった気がする』とおっしゃっていただけるんですが、気がするくらいがちょうどいい、むしろそれが大切だと思っています。自然に囲まれたなかで食事を楽しんで、ちょっと気分をリセットしてもらう。毎日の仕事や家事で忙しい合間でも、『JOZU+』ではスマホを置いてゆっくりとくつろいでもらいたいんです。お店がある豊能町は大阪市内からも遠く、車でしか来られないような場所にあります。これからの時期なら桜を楽しんだり、秋には紅葉を楽しんだり、小旅行気分を味わってもらえると嬉しいですね。SNSで情報が拡散される昨今、料理がおいしいだけでは記憶に残らないことも多いと思うんです。『JOZU+』で過ごした空間やスタッフとの何気ない会話など、すべて含めて少しでもお客様の記憶に残るようなお店をつくっていけたらいいなと思っています」

料理はもちろん、これからも積極的な改革を進めていきたいと語る徳田さん。今後の展開にも期待が高まります。

「いまは地元の農家さんを中心に野菜を仕入れています。豊能町周辺は志が高く、有機農法をやりたいと移住してくる若い世代も多いんです。今後は農家さんに作付けからお願いして、需要と供給のバランスが取れるような仕組みをつくったり、町ぐるみで楽しみながら農業ができるような仕掛けができたらなと思っています」

JOZU+

JOZU+

住所:
大阪府豊能郡豊能町余野10-1
TEL:
072-743-9131
営業時間:
11:00~19:00(17:00)、
1階11:00~14:00(LO)、
  2階ランチ11:00~14:30、
カフェ11:00~16:30
営業日:
月曜、火曜※祝日の場合は営業
URL:
https://jozu-plus.com/

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