今日がうれしくなる器

冬、集う日の食卓

2013/12/12

日本には全国に個性豊かな器が存在し、さまざまな文化やつくり手の思いを伝えています。またそうした品々の存在は日常に華やぎを与えてくれるものです。そこで器ギャラリーオーナーに、日々の暮らしや季節の移ろいを彩る器をご紹介いただきました。

今回訪れたギャラリー「夏椿」の店主 恵藤 文さんにお願いしたのは「冬、集う日の食卓」。日が落ちる時間も早くなった冬の日、温かなものを気のおけない友人と囲むなら、というテーマでセレクトしていただいています。

温かな食卓を演出する器

「今回は作り込みすぎず、リラックスした冬の日に皆で温かいものを囲むイメージで、こっくりした色味のものを組み合わせています。温かな食卓を演出するために、最初に頭に浮かんだのが飴色の釉薬が美しい耐熱皿。今回はグラタンにしましたが、キッシュやアップルパイにも使えるお皿です。耐熱皿の優れた点はその保温性。早く温めるのはステンレスのほうが適していますが、熱を逃さず温かさを保ちたい時には、こうしたお皿がぴったりですね。調理後そのままお客様の前に熱々をお出しでき、置くだけで絵になるのもうれしいです」。

この耐熱皿は、鳥取の岩井窯 山本教行さんの作品。重厚感のある色や独自の安定感が魅力だとか。フリー土鍋や、灰の釉薬を用いたグレーの器も彼の手によるもの。「私が長く使いたいと思いセレクトする器は、なるべく“かわいらしさ”を省いたもの。シンプルといえばそうなんですが、これらのように“かわいらしさ”は排除しつつも、形や色、素材感などに温かみや味わいがあるものは、飽きることなく長く使えるのではないかと思っています」。

「ミルクウォーマーも山本さんの作品です。牛乳を温めるための器ですが、私は牛乳以外にも、コーヒーを加えてカフェオレなどを温めたりして使っています。保温性が高く、一度温めたらしばらくの間温かい飲み物を楽しめるので、気に入っています」。

焼締の器の存在感

さらに恵藤さんが冬の食卓にぜひお勧めしたいのが、「焼締(やきしめ)」の器だとか。「白い磁気の器などは使い勝手がよく、一般に目が行きがちですが、ぽってりと味わいのある焼締の器も魅力的です。今回のようにグリーンサラダにパン、グラタンとすごく手をかけた料理でなくても、器のパワー、存在感が料理を生かし、絵になる一皿に仕上げてくれます。器には、料理を生かすよう存在感を消す器と、存在感を楽しむ器があるように思います。存在感にもいろいろあって、色やデザインが特徴的な器は、何にでも合うわけではないけれど、その器ならではの楽しみ方があります。一方、この焼締は、存在感はありつつも難しさはなく、どっしりとした佇まいが料理を生かしてくれるように思います。こうした焼締やスリップウェアなど重厚感のある器は、我が家の食卓に馴染むかなぁと悩む方もいらっしゃるかもしれませんが、白い器で少し軽くなりすぎたテーブルにひとつ加えるだけでインパクトを生みますし、他の器とも馴染むので、ぜひ気軽に取り入れてほしいですね」。

「この焼締は、市川孝さんの作品。焼締のシリーズのほかに白瓷(しらし)と呼ばれる白いシリーズもつくっておられる作家さんです。ご自身でお料理をされるということもあって、使い勝手がよく、日常に馴染む作品が特徴です」と恵藤さん。

「パンを入れている木の器は、須田ニ郎さんの作品です。木の器というと、水気のものは使ってはいけないのではないかとか、シミができないかと心配ですが、意外にいろいろなものに使用できます。温かみと存在感があり、好きな器のひとつですね。
使いはじめだけ、なるべくオイルの多い料理を盛るようにし、お皿にオイルを染み込ませるといいようです。あとは、皮の手入れなどと同じで、時期を決めて、たまに乾性油などを染み込ませるなどすると、シミをつけることなく育ち、使い勝手のよい器になります」。

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