和食の楽しみ方入門

お寿司屋さんを楽しむ

2015/12/04

寿司というと「大好き!」「好物!」という人がいる一方、「カウンターでいただく寿司は気後れしてしまう」「難しい作法がありそうで…」という声も聞こえてきます。そこで、今回はお寿司屋さんで寿司を楽しむために知っておきたいことについて、料理研究家の久保香菜子さんと、久保さんの古いお知り合いである東京都目黒区の「すし独楽」のご主人 柳原雅彦さんにお話いただきました。

まずはお店の考え方を観察する

― あまりお寿司屋さんに行きつけない人にとって、初めてのお店の扉を開ける時は緊張するものだと思います。久保さんは初めてのお寿司屋さんに行かれるときに、何か気をつけていたり、心がけていらっしゃることはありますか?

久保さん:初めてのお店っていうのは、そのお店がどういう考え方のお店か、どんなお寿司を出されるのかわからないということですから、まずは「おまかせ」でお願いするようにしています。

一言で、お寿司屋さんといっても、その考え方はお店ごとに随分違います。客の要望に柔軟に対応してくださるお店もあれば、苦手な食材は聞いてくれるけれど、基本的には「おまかせ」メニューしかないお店も多いです。どちらがいい、悪いではなく、これはお店の考え方であり、哲学。お店によって、自分の好きなネタを自由にいただく喜びがあったり、ご主人の哲学を存分に味わい、考えを読み解きながらいただく楽しみがあったりするということです。それぞれを堪能したいですね。

たとえば、こちらの「すし独楽」さんは、柔軟に要望を聞いてくださいますよね。

柳原さん:そうですね。おまかせもありますが、お客さまの自由度も高い。お客さまに委ねるタイプのお店だと思います。

久保さん:そうしたことも一度伺ってみるとわかりますよね。それに、たとえば、鯵であれば、そのまま出されるお店、軽くしめるお店、きざみ葱と生姜と煮きりで出される店などさまざまですし、私は穴子が好きですが、塩と煮詰めの両方がある店だと分かれば、最初に塩を食べて、それから煮詰めを食べたいわと思ったりします。ですから、まずは「おまかせ」で、そのお店がどういうものを出してくださるかを知るところから始める。そして、まわりのお客さまがどのように注文してらっしゃるのか、その雰囲気も見てみるといいのではないでしょうか。

―たとえば、「おまかせ」にして、量が多かったらどうしよう。少なかったらどうしようと思ったりするんですが……。そもそも「おまかせ」にすると、何貫出てくるんですか?

柳原さん:うちは、基本は10貫ですね。プラス巻き物が入ります。

久保さん:昔は8貫のところが多かったですよね。

柳原さん:そうですね。一般に昔より1貫あたりの大きさは小さくなり、その分、数が増えたように思います。それからランチのにぎりは大きめ、夜は小さめですね。

―では、今日は10貫もいただくのは難しそうだと思ったら……。

久保さん:「おすすめのものを7~8貫お願いします」と言うといいですよ。ただ、そういう対応を喜んでしてくださるお店か、見極める必要はありますね。入門編としては、おなかをしっかり空かせて店を訪れ、まずは「おまかせ」を。その後、お店のことが少しわかったり、お店の人と親しくなってきたら、数を調整したり、好きなものを加えてもらうなど、第二ステップを楽しんではどうでしょうか。

―何度も通いたくなるお寿司屋さんってどういうところをご覧になっていますか?

久保:まずはやはり寿司としての好みですね。寿司のおいしさはもちろんですが、ネタの厚みや、にぎり方、大きさなど、好みの寿司を探してみてください。それから、お寿司屋さんならではなのがカウンターの存在。カウンターの中に職人さんがいて、その前には自分がいて、まわりのお客さまがいらっしゃる。自ずと一体感が生まれやすい配置です。ですから、来ていらっしゃるお客さまの層や、お客さまと職人さんとの関係の心地よさなども、繰り返し通いたくなるお店選びのポイントになるかもしれませんね。

 

―何度か訪れたお店で、好きなものをお願いしてみようかなというとき、久保さんはどんな流れで注文されますか?

久保さん:そうですねー。白身、貝、あっさりした背の青い魚、まぐろ、玉子、穴子など煮たものというのを順番に頼むことが多いですかね。だんだん味の濃いものにしていく人は多いのではないでしょうか。でも、たとえば、穴子を食べたあとに、もう一度白身を食べたいからお願いしますってこともあるし、ものすごくまぐろが好きな人は、赤身、中トロ、大トロと、まぐろ三種類をお願いする人もいるでしょう。あまり気にすることなく、食べたいなぁと思うものがあれば、自由に注文すればいいものですよ。

柳原さん:そうですね。心配なら、最初の5~6貫を「おまかせ」でお願いしていただく。そこでおなかの具合や、ちょっとさっぱりしたものがほしいとか、濃いものが食べたいなぁといった口の具合に合わせて、好きなものを数貫追加していただく、そういう感じでもいいかもしれませんね。

 

手のほうがお寿司をくずさずにいただくけると久保さん。
ただし穴子のように煮詰めが塗られたものは、手を汚さないよう箸でいただくとか。

久保さん:こちらは一品ものやおつまみもおいしいですから、そういうものを召し上がる方も多いんじゃないですか?

柳原さん:そうですね、寿司の前に、おつまみやお刺身を召し上がったりする方は多いです。たとえば、お刺身で白身や貝を食べていただき、それから「おまかせ」で寿司をにぎるとなると、また白身から繰り返しになってしまう。そういうときは、うちはいきなりまぐろからにぎったりもします。その辺りの考え方はお店によって違いますし、そのお店の感性なのかなと思いますね。

久保さん:そうですね。「おまかせ」の構成からその店の姿勢や哲学が見えてくるものですね。

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