発酵マイスターに聞く!知って得する発酵豆知識

発酵と腐敗・熟成の違いって何?

2018/10/25

発酵は、目に見えない菌によってもたらされる現象。ゆえに、興味を持てば持つほど、「これってどうなんだろう…」という疑問が次々とわいてきませんか?ここでは、マルコメ株式会社広報宣伝課の発酵マイスター・尾田春菜(おだ はるな)が、発酵の素朴な疑問にお答えします!

初回は、発酵と腐敗・熟成の違いについて。なんとなくわかってはいるような…いないような…。でも、その違いを明確に説明するとなると難しい、という方も少なくないのでは?ここで明らかにしてしまいましょう!

発酵と腐敗の判断基準とは?

「納豆は初めから腐っているから、賞味期限は気にしなくても大丈夫」といった言葉を耳にしたことがありますが、正確には腐っているのではなく「発酵している」わけで…。では、この発酵と腐敗には、どのような違いがあるのでしょうか?

「発酵と腐敗の違いとは、人間が人間の視点で決めたこと。どちらも微生物の力によって物質が変化することをいうのですが、それが人間にとって有益なものであれば発酵、有害なものであれば腐敗ということになります。とはいえ、この2つは文化的な観点から見ると曖昧になってきます。

例えば、日本人にとってはなじみ深い納豆やくさやといった発酵食品も、海外の方から見たら腐った物だと思われがちですし、逆に日本人から見たら、『世界一くさい食べ物』といわれているスウェーデンのシュールストレミング(塩漬けにしたニシンの缶詰)は腐っているとしか思えなかったりしますよね。体にとっていいのか悪いのかという以前に、食べられないという人も多いと思います(笑)。そういう意味では、文化の違いで相容れない部分もあり、絶対的な線引きが難しいところ。微生物にとってみれば、ただそこで生きて活動しているだけなんですけどね(笑)」

発酵か腐敗かは、人間都合で決められていること。

発酵させた食品は、
・栄養が体内に吸収されやすくなる
・発酵の過程でビタミンやアミノ酸といった栄養成分が生成されるので栄養価がアップする
・風味や旨みが増す
といった変化が生じます。

微生物の力によって変化した食品を口にしても、体の中で悪さをせず、上記のような働きをしてくれる場合は発酵、逆に体に害がある場合は腐敗ということなんですね。

発酵食品は腐らない?

スーパーやコンビニに行くと、ほとんどの食品に賞味期限や消費期限が明示されています。「発酵食品は腐らない」という説がまことしやかにささやかれていますが、これは本当なのでしょうか?

発酵食品も腐ることはあります。味噌や醤油といった腐りにくい物も多いですが、甘酒などは腐りやすい部類に入りますね。糖分が多い甘酒には、腐敗菌が入ってきてもそれをブロックする成分がないんです。一般的に、塩分やアルコールが多く含まれる物は腐敗菌をブロックするので、腐りにくいといわれています。味噌の場合、表面にカビが生えても、その部分だけしっかり取ってしまえば使用できたりもしますので」

ここで気になるのは賞味期限。あくまで「おいしく食べられることが保証されている期限」なので、多少過ぎても食べられなくなることはないと思いますが…。

「賞味期限が設定されている物でも、期限が切れたら必ずしもすぐダメになるというわけではありません。ここで大切なのは、賞味期限の設定がどのくらいかをチェックすること。例えば、味噌は製造日から6ヵ月後というのが目安ですが、実は2018年からは製造日から12ヵ月後に変更されました。そういった期限の設定が長いものに関しては、比較的、品質が劣化しにくいといえます。

とはいえ、食べられるかは消費者が個別に判断する必要があります。時間が経つとどんどん酸っぱくなってしまうキムチなどの漬物類に関しては、そちらのほうが好みということであえて食す方もいますよね。ただし、絶対に大丈夫という保証はできませんので、ご自身でしっかり判断してくださいね」

発酵?熟成?実は曖昧な2つの関係

「熟成肉」がブームになったりしましたが、熟成とは本来どういう現象なのでしょうか?

「熟成は、微生物の介在を伴わないという考え方もあるようですが、実際は線引きが難しいところ。例えば味噌ですと、麹菌(微生物)が出す酵素のおかげで熟成が進むので、微生物が介在しないとはいえません。細かくいうと、米などに麹菌をつけて発酵させる段階では発酵と呼びますが、さらに進んでいくと熟成という過程になります。なので、味噌に関しては『発酵熟成させた物』と呼んでいます」

「ただ、話題になっている熟成肉に関しては、発酵食品とは呼びづらいところ。本来は微生物を介在させない物ではありますが、最近ではカビを繁殖させたシートで肉を包むことによって安全に熟成させるという手法もあるようなので、微生物が介在することもあるし、介在しないこともあるという…。しかし、時間をかけて熟成させることによって食べ物がおいしくなるという意味では、発酵と同じく、人にとって有益なことといえると思います」

ちなみに、「熟成10年」という味噌が売っていたりしますが、家庭でも10年くらいは保管できるということなのでしょうか?

「工場や味噌蔵などでは、温度や湿度の管理、不純物が入っていないかのチェックを常に行っているので、安全な形で長期熟成させることができます。しかし、購入後の味噌は、各家庭でどのような状態で保存されるかわからないので、作り手のもとを離れてしまった後に長期保存できるかどうかは保証できません。

また、空気にふれると褐変(かっぺん:酸化変色)という反応が起こり、食べられないわけではないのですが、風味が落ちてきます。変色した部分は取り除いたほうがおいしく召し上がることができると思います。なお、市販の味噌は、開封後に表面を覆っているシートや脱酸素剤を取り除き、ラップで味噌の表面を覆って保管してくださいね」

開封後の味噌はシートや脱酸素剤を取り除く…ということを知らなかった人も多いのでは?味噌をよりおいしく保管するコツなので、ぜひ今日から実践してみてください。

では、また次回も発酵の素朴な疑問について聞いていきますので、お楽しみに!

発酵マイスター

尾田春菜(おだはるな)

発酵マイスター

尾田春菜(おだはるな)

マルコメ株式会社広報宣伝課所属。
発酵マイスターに加えてジュニアソイフードマイスターの資格を持ち、発酵食品関連のイベントなどにも多く登壇している。