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発酵で暮らしを豊かに。
「醸すフェス」実行委員・桝野恵理さんの想い

2021/02/12

発酵で暮らしを豊かに。 「醸すフェス」実行委員・桝野恵理さんの想い
発酵で暮らしを豊かに。 「醸すフェス」実行委員・桝野恵理さんの想い

発酵をテーマにしたオンラインイベント「醸すフェス」が202012月に開催され、当日は、発酵のスペシャリストによるトークショーやワークショップなどが行われました。このイベントの目的は、「発酵食品の作り手の想いを知り、実際に体験することによって、発酵をより身近に感じてもらうこと」。
実行委員長を務めた桝野恵さんは、小・中学校に12年間勤務した経験をもとに、普段は発達支援教育アドバイザーとして活動しており、こういったオンラインイベントを手掛けるのは今回が初めてだったといいます。そんな桝野さんに、醸すフェス立ち上げの経緯やイベントに込めた想いのほか、今後の展望についてお話を伺いました。

立ち上げのきっかけは
SNSに書かれた言葉だった

新型コロナウイルス感染症の影響で自炊する人が増え、免疫力を高める食材として、発酵食はこれまで以上に注目を集めるようになりました。桝野さんが醸すフェスを開催することになったきっかけは、Facebookの投稿で見かけたある一言だったそうです。

「今回のイベントの監修を務めてくださった小川佑子さん(親子でオンライン体験フェス実行委員会委員長、発起人兼代表)が、『醸すフェスをやったらおもしろくない?』と書かれたんです。何をするのか、どうやるのかも内容は書かれてはいなかったのですが、私はすぐに『楽しそう!』ってコメントをしたら、ほかにも同じようにコメントした人たちがいて。それからトントン拍子に醸すフェスを本当に実現させようということになりました」

醸すフェスという言葉が先行してスタートした企画でしたが、桝野さんには当初から発酵食のことが頭にあったといいます。それは、桝野さんのお仕事が「発達支援教育アドバイザー」であることに関係していました。

全国から集まった実行委員会のメンバー。出会いはもちろん、打ち合わせもすべてオンラインで行っていたという。

「発達障害の療育(発達支援)には、『腸内環境を整えるといい』という考えがあります。そのため、発酵食については私自身も以前から勉強したり、料理に取り入れたりしていました。でも、療育という観点で発酵食を考えると、どうしてもネガティブな方向から食を語ることになってしまうんですね。

というのも、発達障害のお子さんを持つお母さん方は、ありとあらゆる手を尽くされて、もうどうしたらいいのかわからないというくらい悩んでいらっしゃることが多いんです。それでも何かできないかということで食にたどり着くのですが、そのときにはとても疲弊されている姿が見られます。
でも、発酵食へのアプローチは、もっと楽しい方向から始めて、お子さんだけでなくお母さん方にも元気になってもらいたい。醸すフェスがその入り口になれるんじゃないかなと思いました」

小川さんのSNSへの書き込みや、桝野さんの想いに賛同し、集まった有志は32人。醸すフェス開催実現に向けて始動したのは、20207月中旬のことでした。

オンラインでありながら
「体験型」のプログラムを実現

コンセプトとして「発酵の世界の入り口を垣間見れる、体験型ショッピングモール」を掲げた結果、味噌づくりや醤油麹づくりができるワークショップから、管理栄養士や内科医によるトークショー、日本酒やワイン、チーズの販売とともに生産者の生の声が聞ける講座まで、発酵食品にまつわるさまざまなジャンルのプログラムがそろいました。

クラウドファンディングで商品を購入すると、チーズフロマジェである葛石朋子さんによるチーズの歴史や種類、
ほかの食材との相性、ワインの話が聞ける講座も。

枡野さんに発酵の大切さを気づかせてくれたという自然栽培米の無添加「ぬか床キット」。
生産者は醸すフェス開催のためのクラウドファンディングに協力してくれた。

醤油手づくりキットなどの販売も。

「出店者さんを見越して立ち上げたフェスではなかったので、どなたに出店していただくかは実行委員会のメンバー総出で一から探しました。自分たちが日頃から気に入っているお店や専門家の方に連絡させていただいたほか、何か情報を得たら、まずは足を運んで、実際に食べてみて…。そこでいいなと思ったら企画書を出してお話しさせていただくこともありましたね(笑)。初めての開催で、まったく認知度もない中での作業だったので、そこは正直苦労したところではあります。でも、結果的に自分たちが好きなお店の方々が賛同してくださったので、楽しい作業でした」

こうして集まった出店者は合計12組。中でも、オンラインでありながら参加者も体験できるワークショップのプログラムは、桝野さんがどうしてもラインナップに加えたいものだったといいます。

醸すフェス当日の様子。

「実は、私自身も、実際の体験を通して価値観が変わった経験があるんです。私は子供の頃から白米が苦手で、無理して食べたり、残さず食べなさいと言われることがプレッシャーだったりで、食事の時間を楽しむことができないでいました。それがあるとき、友達に誘われてぬか床づくりの体験に行ったら、食に対するイメージがガラリと変わったんです。

そこで、菌についてのお話をいろいろ伺ううちに、いかに人間の生活が菌によって豊かになっているのかを知りましたし、何より自分のぬか床で漬けたぬか漬けといっしょだと、あんなに苦手だった白米もおいしく感じられて…。人生で初めて、食欲が出るのを感じた出来事でした。このときに私自身が経験した、発酵の世界を垣間見て、体験したことを、ぜひ醸すフェスの参加者にも体感してほしいと思ったんです」

また、「体験型ショッピングモール」という言葉には、こんな想いが込められているそう。

「発酵食品って本当にいろいろなものがあるので、どれにしようか迷ったり、何を買ったらいいのかわからなかったりする人も多いと思います。私自身がそうでしたから。
醸すフェスでは、できるだけいろいろなジャンルの発酵食品を一堂に集めて、ここに来たら楽しそうと思ってもらえるような、発酵ランドをイメージしました」

発酵をきっかけに
命のつながりを感じてほしい

初開催となった醸すフェスは無事に終了しましたが、桝野さんはこれで終わりとは考えていません。

「今回のフェスでは、『命のつながり』を感じてもらえるように意識しました。私たちの考えるつながりは、『発酵食品を作る人と食べる人のつながり』『菌と人とのつながり』『味わいと心のつながり』の3つがあります。それらに気づくことによって、発酵を通して自分の暮らしを豊かにするというマインドを得てもらいたい。
どんなに食事にこだわっても、やっぱり心とか人とのつながりがなかったら、満たされないどころか、自分の血にも肉にもならないと思うんです。おいしく食べること、これが食べたいと思うこと、誰かといっしょに食べておいしいねと言い合うこと。その豊かさに目を向けるきっかけを作っていけたらと考えています」

桝野さんたち実行委員会は、醸すフェス2回目の開催も視野に入れています。

「恥ずかしながら発酵に関わる方たちの繁忙期が12月だということを知らなくて、タイミング的に今回は出店が叶わなかった方もいるんです。そういった方の中には、2回目はぜひというお声もあるので、またできたらいいなと思っています。
さらに、今後はお子さんや子育て中のお母さんたちに対して、発酵食品にふれる機会を提供していけたらとも考えています。醸すフェスでお伝えしたことを、今後もたくさんの方に届けていくことが私たちの一番大きな願いでもあり、目標です」

桝野恵理さん

桝野恵理さん

桝野恵理さん

12年間小・中学校に勤務後、発達支援教育アドバイザーとして活動。2020年12月には、SNSを通じて仲間を集い、初のオンラインイベント「醸すフェス」を開催した。

醸すフェス 2020

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