発酵に恋して。

発酵をもっと手軽に食卓へ。
「神楽坂発酵美人堂」の
清水紫織さんに教えていただく
こころも満足する一皿。

2021/09/30

発酵をもっと手軽に食卓へ。「神楽坂発酵美人堂」の清水紫織さんに教えていただくこころも満足する一皿。
発酵をもっと手軽に食卓へ。「神楽坂発酵美人堂」の清水紫織さんに教えていただくこころも満足する一皿。

体調の変化や妊娠をきっかけに、発酵食に注目する方はたくさん。東京・神楽坂で発酵料理の教室を主催する清水紫織(しみずしおり)さんもその一人です。ご自身の経験から得た発酵食の魅力、そして忙しい日々でも取り入れやすい発酵調味料を使ったレシピを教えていただきました。

助けてもらった発酵食を、
たくさんの人へ届けたい

江戸時代から続く歴史のある街、細い路地が入り組む風情豊かな神楽坂の住宅街に、古民家を改装した発酵専門料理教室「神楽坂発酵美人堂」があります。着物に身を包んで私たちを出迎えてくれたのは店主の清水紫織さん。京都出身という清水さんがこの地で教室を始めたのは2013年のこと。

「小さい頃から花粉症だったのですが、20歳になって食品アレルギーを発症してしまったんです。妊娠をきっかけに体質改善をしようと、食生活を見直すことにしました。そこで、当時はまだ一般的ではなかった“腸内環境”という言葉に出会い、発酵食を生活に取り入れてみることにしたのが始まりです」

「神楽坂発酵美人堂」店主の清水紫織さん。いつも着物姿で教室に立たれているそう。

当時、飲食業界で活躍していた清水さんは、もともと食や食材への興味があったそうです。

「“食”が好きなんですよね。働きながらソムリエの資格も取ったりと、興味あることは追及したくなる性分なんです。発酵も、最初は見よう見まねで味噌作りに挑戦。出来上がった味噌は、香りが豊かで、とっても美味しくてびっくりしました。味噌作りは時間がかかりますから育てる楽しみもあり、感動もひとしおでした」

味噌の美味しさに目覚めた清水さんは、発酵食そのものについてもっと広く知りたいと、発酵料理人の伏木暢顕氏に師事。発酵食のおかげで悩んでいたアレルギーは治り、体調も回復。さらに、肌も綺麗になって痩せるというおまけもついてきたそうです。発酵食に助けてもらったというご自身の経験から、たくさんの方に発酵の魅力を届けたいと料理教室をスタート。その後、ますます発酵にのめり込んでいった清水さんは、教室の運営や子育てをしながら東京農業大学醸造科にも通い、学びを深めたそうです。

「例えば発酵と腐敗は隣り合わせなんです。一体何が違うのかなど、化学的な面からの知識を学ぶのは、とても楽しかったですね。生徒さんに正しく情報を伝えていくためにもとても役にたちました」

手軽に発酵食が楽しめる、
発酵調味料

清水さんが料理教室で大切にしているのは、料理が始めての方や、苦手な方にも料理を楽しんでもらいたいという思い。

「忙しいお母さんが出来合いのものばかりで食事を用意しつづけると、いつしか『ごめんね…』というという気持ちが芽生えてくると思うんですよね。毎日の食卓に一品でも手作りの料理が並ぶと、作ったほうもいただく方も、こころが満足しますし、ほんのひと手間で得られる幸せ感って、とても大きいと思うんです。料理教室では、体にいい、美味しいはもちろんですが、発酵料理を通して、時間のない方や苦手な方のお手伝いもできればとも思っています。だから、“簡単”であることが大切なんです。そこで活躍するのが発酵調味料。食材に混ぜるだけで、簡単に美味しく一品が作れますから

味噌や醤油はもちろん、塩麹、醤油麹など、近年では発酵調味料のバリエーションが増えましたが、「神楽坂発酵美人堂」には、見たことのない発酵調味料の瓶がずらりと並びます。そのなかから定番の発酵調味料を伺ったところ、次の4つをおすすめしてくれました。

「塩代わりの『塩麹』、醤油代わりの『醤(ひしお)』、砂糖代わりの『甘酒』、そして、まるでコンソメのような風味の玉ねぎと麹で作った『玉ねぎ醤』です。『醤(ひしお)』というのは主に西日本で親しまれる、古くから伝わる伝統食なのですが、大麦と豆の麹を使っていて、味噌や醤油よりも旨味成分が多く、プロテアーゼと呼ばれるタンパク質分解酵素も豊富なのでお肉を柔らかくする力も高いんですよ。料理教室でもこの『醤(ひしお)』が基本の調味料です」

教室で使われるバリエーション豊かな発酵調味料の数々。

大麦と豆の麹に、醤油を加えて作る「醤(ひしお)」。豆の形が残る左は5日目。
2週間すると発酵が進んで右のようになる。

発酵や料理のハードルを下げて、手間をかげずに体によくて美味しいものを広めたいという清水さんは、教室だけではなく、家庭でも簡単に発酵調味料や発酵食を作れるキットやオリジナル商品も手がけています。その商品開発を通して、全国各地の生産者の皆さんとの出会いも刺激になったそう。

「醤(ひしお)」の手作りキットなどのオリジナル商品は、オンライン販売も。

「商品開発をするなかで知ったのは、ひとことで醤油や麹といっても作り方も個性もさまざまだということでした。100年以上も古くから伝統を守り続けている生産者さんや、丁寧に食物を育てられている農家のみなさんに会いに行き、素晴らしい食材に出会うことができました。例えば醤油は、瀬戸内にある島で古くから木桶醤油にこだわって醸造し続けられてきたものですし、麹も代々受け継がれた麹菌を育てながら作られています。こだわりをもった生産者のみなさんのものづくりに触れ、多くの方々に伝統の技の素晴らしさを知ってもらいたいですし、わたしもこだわっていきたいと思いました」

からだを整え、
こころも満足する
“和えるだけ”の発酵レシピ

発酵調味料があればあっという間に作れる、美味しい2皿を教えていただきました。

アボカドパクチーの醤和え

青唐辛子のピリっとした辛さが特徴の「三升漬け」を使った、お酒のおつまみにもぴったりの一品。パクチーとごま油でオリエンタルな味わいに。「醤(ひしお)」+「三升漬け」の組み合わせは、タコなどの魚介類との相性も抜群です。

青唐辛子、麹、醤油を1:1:1で漬け込んだ「三升漬け」。青唐辛子のキリッとした辛味が特徴の発酵調味料。

  • [材料](2人分)
    アボカド1個
    パクチー好きなだけ
    醤(ひしお)大さじ1
    ごま油小さじ1強
    三升漬け小さじ1/2〜
  • [作り方]
    1.アボカドは皮とタネを取り除き一口大にカットする。パクチーはざく切りにし、茎と葉に分けておく。根がついている場合は土を綺麗に洗い、みじん切りにして茎と合わせておく。
    2.ボウルにパクチーの葉以外の材料と調味料を全て入れてよく和える。
    3.お皿に盛り付け、パクチーの葉をこんもりと乗せて出来上がり。食べるまで冷蔵庫で冷やすと良い。

無花果の甘酒練り胡麻和え

甘酒を砂糖代わりの調味料として使った一品。甘酒は砂糖よりも優しい甘さで、旨みも栄養もたっぷり。いちじくのほか、ももなどのフルーツにもぴったりとのこと。キリッと冷やした白ワイン(おすすめは、芳醇で華やかな味わいの「ゲヴェルツトラミネール」)との相性も抜群な一皿です。

  • [材料](2人分)
    無花果2個
    甘酒大さじ1
    白練ごま小さじ1
    薄口醤油小さじ1弱
  • [作り方]
    1.ボウルに白練りごま、甘酒を入れてよく混ぜ、醤油を加えて更によく混ぜる。
    2.洗った無花果を皮ごと6等分のくし切りにし、(1)に入れてそっと和える。
    3.食べるまで冷蔵庫で冷やし、お皿に盛り付けて出来上がり。

手料理が一品並ぶだけでも豊かになる食卓。さらに、清水さんのレシピは思いもよらない組みあわせで、驚きももたらしてくれます。それは、ワインの味を細かく分析し、食事との組み合わせを提案するというソムリエの経験から成せる技。初の著書『発酵料理のきほん –はじめてでも、とびきりおいしくなる!』(朝日新聞出版)にも、たくさんの発見と、手間をかけることなく、からだもこころも喜ぶ一品ばかり。
ぜひみなさんも毎日の暮らしに、発酵調味料を取り入れてみてはいかがでしょうか。

発酵初心者にも分かりやすいよう丁寧な解説を心がけたという、初の著書『発酵料理のきほん –はじめてでも、
とびきりおいしくなる!』(朝日新聞出版)。改めて発酵について学び直す方にもぴったりな一冊。

清水紫織(しみずしおり)さん

清水紫織(しみずしおり)さん

清水紫織(しみずしおり)さん

アレルギー発症と妊娠をきっかけに、体質や腸内環境の改善を模索するなかで発酵食と出会い、その魅力を身を持って体験する。発酵料理人の伏木暢顕氏に師事し、広く発酵食の魅力を伝えたいと2013年に発酵料理専門の料理教室「神楽坂発酵美人堂」を立ち上げる。発酵をより深く学ぶため、東京農業大学醸造科学科に入学。現在は、教室運営のほか発酵食品のブランドも手がける。テレビや雑誌などのメディアでも注目を集め、2021年9月に初の著書である、『発酵料理のきほん –はじめてでも、とびきりおいしく』(朝日新聞出版)を出版。

神楽坂発酵美人堂インスタグラム 
https://www.instagram.com/hakko_bijin/?hl=ja

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