発酵を訪ねる

西宮で見つけた、ベジタリアン料理で
心も体も元気にしてくれる
「カフェ ココハネ ベジと発酵ごはん」

2025/12/11

西宮で見つけた、ベジタリアン料理で心も体も元気にしてくれる「カフェ ココハネ ベジと発酵ごはん」
西宮で見つけた、ベジタリアン料理で心も体も元気にしてくれる「カフェ ココハネ ベジと発酵ごはん」

大阪や神戸へのアクセスが便利な西宮市。阪神西宮駅周辺は商業施設が充実しつつ、落ち着いた雰囲気の街並みが広がります。“商売繁盛”に御利益のある西宮神社に通じる西宮中央商店街、通称“EBISU SUN ROAD”沿いで店主の永谷泰(ながたにたい)さんとパートナーの木部ちゃこ(きべちゃこ)さんのふたりが営むオーガニックカフェ「カフェ ココハネ ベジと発酵ごはん」。ここでは地元の有機野菜と手づくりの発酵調味料を活かしたベジタリアン料理が楽しめます。手づくりの味噌や醤油など、多彩な発酵調味料を使った料理は、味はもちろん、安心してお腹いっぱい食べられると、遠方から足繁く通う人も。そんなお店がスタートしたきっかけは意外なものでした。

飲食経験ゼロからスタートした
「カフェ ココハネ ベジと発酵ごはん」

「カフェ ココハネ ベジと発酵ごはん」の店内に一歩足を踏み入れると、グリーンやドライフラワー、地元で集めた流木などが飾られ、柔らかな雰囲気が漂います。店がオープンしたのは20195月。実は店主の永谷さんは飲食店での勤務や料理人としての経験はゼロ。意外な経歴の持ち主でした。

「元々、ダンサーとしてアメリカで活動をしていましたが、体や心の不調をきっかけにヨガと出会い、日本に帰国してからはフリーのインストラクターとして活動をしていました。今のお店がある建物は、阪神大震災を期に、父が陶芸教室や友人たちと飲み会をするためのスペースとして使っていました。しかし、2012年に突然父が亡くなり、この場所がぽかんと空いてしまったんです。そこで、子どもの頃から料理をするのが好きだったこともあって、ずっとやりたかったカフェをやろうと、1階にカフェ、2階にヨガスタジオ『studio awai』をオープンすることにしたんです」

華やかなダンサーから一転し、カフェオーナーへ。ゼロからスタートする店の道標となったのは、父親が残したある発酵食品だったそうです。

「発酵をテーマにしたお店をやろうとしたのも、父親がきっかけのひとつ。父は陶芸をやりながら、蕎麦や味噌づくり、田んぼ仕事も手掛けていました。父が亡くなった後、店の床下から父が作った味噌が出てきたんです。いつ作ったものかもわからないくらい、真っ黒になった味噌だったのですが、突然亡くなってしまった父の存在を、その味噌が支えてくれました。僕がやっていたダンスというのはその場で表現するもので、形には残らないですが、父がやっていた陶芸は後に残るもの。形のある作品は捨てるに捨てられないもので、残された人にとってはしんどいものにもなり得るし、ダンスのように形に残らないものにも寂しさはある。料理は形として存在するけど、食べることで消えてしまう。でもそれが自分の身体になり、元気な心を作っていく。その中でも味噌は人の手で作るもので、思いと、手についた常在菌ひとつで味が変わっていきます。それがすごく面白いなと思ったんです。僕自身も、父に習ったわけではないけれど、味噌づくりをやっていて。父はいませんが、残されたものが自分の糧になっていく。それが魅力的だなと思ったんです。自分たちが手掛けた料理をお客さんが食べて、より元気になってもらえたらいいなという思いで、発酵をテーマにしたお店を出すことに決めました」

麹から作るおから味噌や玄米味噌。
こだわりは“手の届く範囲”で

お店で提供する「ブッダプレート」や「高黍ベジ・バーガー」、「マクロビ・パウンドケーキ」、「ココハネアイス」など、彩り豊かなメニューは完全植物性のものばかり。味噌や醤油などの発酵調味料や発酵食品も手の届く範囲で、手づくりにこだわっています。

「手づくりしているおから味噌のおからは、尼崎にある国産有機大豆を使う豆腐屋さんから仕入れています。そのおからに塩と麹を混ぜるだけで簡単にできますし、できあがりも早い。甘めの味噌に仕上がるので、子どもも好きな味なんです。瓶で味噌を作るのは、醸す過程がよくわかって面白いから。おから味噌に酒粕で蓋をするのは、カビの発生を防ぎつつ、酒粕の旨みも楽しめるから。ワークショップでもこのおから味噌を作りますが、初心者でも簡単にできるので味噌づくりの入り口としてもぴったりです」

野菜は有機野菜を手掛ける近隣の農家さんや、パートナーの木部さんが栽培したもの。野菜のほかに米、味噌にも使う麦、黒豆、キビなどの雑穀、茶葉も自家栽培しています。季節の素材を組み合わせた「ブッダプレート」は完全植物性といっても、ボリュームはもちろん、味わいも満足度の高い料理ばかり。来店時に提供するお水も、冬には白湯を出すなど、ちょっとした心遣いもうれしいポイントです。

「例えば、メインとなるコロッケにはいろんなお豆を使っていて、酒粕とトマトを使ったソースをかけています。副菜にはベジミートを使った料理や、茎わかめ、ひじき、キノコなど食物繊維やミネラルもしっかりと採れる一品にして栄養バランスを意識しています。ドレッシングには手づくり梅干しの梅酢や、タマネギを乳酸発酵させたもの、アチャールを使っています。汁物はみそ汁のほか、夏はポタージュ、冬はシチューにするなど、飽きのこないメニューを心がけています。ハンバーガーに使うバンズも天然酵母を使った自家製のもの。新月の時には世界中のソウルフードをアレンジした麺料理を出したり、試行錯誤しながらメニューを考案しています」

人と人との繋がりを大事にした食材たちで作る、
無理のないベジタリアン料理

カフェメニューはパウンドケーキやシナモンロールのほか、インドやネパールでよく使われる、珍しいシコクビエを使ったぜんざいなど。フェアトレードのコーヒー豆を自家焙煎したコーヒーともよく合います。

「“オーガニック”への理解は人それぞれですが、僕自身、オーガニックは、いろんな生命がかかわることでできるものだと思っているんです。例えば、大豆の根っこにはチッ素を固定する菌がいて、その菌の働きで大豆が育つ。発酵食品も同じで、手間をかけることは面倒ですが、目に見えないものやエネルギーが集まって、味噌や醤油といった食材が生まれる。その手間や、かかわり合いの楽しさが発酵やオーガニックにはあると思っています。昔は“オーガニックはこうであるべき!”と躍起になっていたこともありましたが、今はこだわりすぎないようにしています。頑張りすぎず、自分の思いを込めることのほうが大切で、素材が良ければいいのではなく、そこにかかわる人が大事だと思っています」

「カフェ ココハネ ベジと発酵ごはん」は、永谷さんとパートナーの木部さんのふたりで料理やサービスを手掛けています。料理は注文を受けてから仕上げるため、少し時間はかかるものの、手頃な価格で美味しい発酵料理やベジタリアン料理が楽しめると、遠方から通う人も多いそう。

「多くの人に喜んでもらえたらいいなと、価格も抑えるように頑張っています。お店のメニューは完全植物性のものばかりですが、それがすごく身体に良いんだ!と押しつけるのではなく、自分たちにとっても、ひとつの挑戦としてやっている感じです。20年以上前にアメリカでダンサーとして活動していたときに身体を壊し、ヨガに目覚めてからはグルテンフリーや菜食玄米なども取り入れていました。最初は意固地になってやっていましたが、徐々に緩くなってきたんです。人って制約があると、この範囲で何ができるかな?って、工夫をしはじめるんですよ。調味料も、日本には味噌や醤油、麹など完全植物性の発酵調味料が多く、味のバリエーションも豊富に出せますしね。元々料理が好きだったのもあって、感覚的にメニューを考案することも多いです」

毎日が修行の連続。
ベジタリアン料理×ヨガで心も体も元気に

現在は「カフェ ココハネ ベジと発酵ごはん」のほかに、味噌づくりのワークショップやヨガ講師としても活動。店の営業の合間に、野菜や米づくりを手掛けるなど多忙な日々を送るなか、今後の展望についても語ってくれました。

「ヨガのインストラクターをしていることもあって、日々の生活が修行をさせてもらっている感覚です。ヨガには体操をするだけではなく、日常生活のなかでお皿を洗うことも修行のひとつだという考えがあります。今でこそ味噌や麹といった発酵食品を作ったり、畑仕事をしていますが、元々ダンサーとして煌びやかな世界にいたこともあってか、地味な作業は苦手で、したくない人間で(笑)。30年以上も“先生”と呼ばれるような仕事をしていたので調子に乗っていたんですよね(笑)。でも、地味な作業こそ大事。今は地に足をつけて、農作業をしたり、料理をするようになって、ようやくヨガを教える人間として、ちゃんと修行ができているなと思っています。“ヨガをすれば美しくなれる”と、つい煌びやかなイメージを持たれがちですが、インストラクターとして、きちんと中身が伴っていると感じてもらえるようになりたいと思っています。僕は物事を忘れがちで、三歩歩いたら忘れる人なんですよ(笑)。だから毎日毎日、繰り返しの連続。お店に来てくれた人への感謝としてお皿を洗い、次にそのお皿を使う人へ、喜びと健康を祈りながら、またお皿を洗う。その積み重ねですね」

カフェ ココハネ ベジと発酵ごはん

カフェ ココハネ ベジと発酵ごはん

住所:
兵庫県西宮市田中町4-9 あんのん館1F
TEL:
0798-21-0535
営業時間:
11:00~19:00(LO18:30)、
満月11:00~22:00
定休日:
月・第3日曜
URL:
https://unknownkan.com/cafe-cocohane/

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