今日がうれしくなる器

和の器とバスクが出会う

2016/01/08

作家の言葉

ゆるさと色気のある器を 伊藤環さん

「伊藤さんの器は、最初は美しい形だなぁと思い手にして、重すぎず、使いやすいから、日常の器になっていく。デザインはスッキリとしているのだけど、同時に土のやわらかさがあるというミックスした感がバランスが良く好きです。飽きずにずっと使いたくなる器ですね」と夏椿の恵藤さん。

そのことについて伊藤さんに伺うと、

「その時の思いつきでつくるものもありますが、実際にうちで使いながら、マイナーチェンジを繰り返し、使いやすさを考えているものも多くあります。とくに、深さや口のかえし、厚み、重さには時間をかけて完成度をあげていくことが多いです。たとえば、この皿はカレーのための皿として、約8年間マイナーチェンジを繰り返しています。今回は、このフチの角度を見直しました。指がひっかかる程度にかえして、スプーンとの相性を考えました。以前より少しきりっとした印象になったかなと思っています」

(何度もマイナーチェンジを繰り返しているカレー皿。「なんとなく使いやすいがちょうどいい。スタイリッシュすぎるとなんとなく恥ずかしくて。ふと使いやすさに気づく、くらいがちょうどいいですね」と伊藤さん。)

では飾られる器よりも、日常的に出番の多い器でありたいだろうか。
質問してみたところこんな返事が返ってきた。

「基本的にはそうですが、一方で飾って美しい器であることは大切にしたいです。空間をつくれる器、空気感をつくれる器かどうか。それには大きさは関係なく、湯のみでも豆皿でも同じ。どの器も使いやすさと同時に美しさを追求していきたいです」

こんな風に美しさと使いやすさに徹底的にこだわるからこそ、伊藤さんの作品は使う人に愛されるのだ。

(今回使用したコンタクト鉢は、ある料理家から「コンタクトレンズのような器がほしい」と依頼があったことから始めたシリーズとか。コンタクトレンズのような曲線を描きながら、高台をぎりぎりにし安定感をもたせている。)

(今回は和をテーマにしているため、ティーポットでなく急須を制作。急須は美しいフォルムで、かつ使いやすくするのに技と経験が必要と、伊藤さん。)


「僕はもともと大学でオブジェばかりつくっていました。オブジェ全盛の時代でした。人の顔をトーテポールのようにつくったり、大学卒業後は人の膝から下、ふくらはぎから足先ばかりをつくったり。人体の自然な造形は美しいんですよ。筋肉のハリ、その中にある骨、脂肪の柔らかさ。太っていても痩せていても美しいんですね。曙関の脚、赤ちゃんの脚なんて、夢中でつくっていました。今でも人体は美しさや形を描くうえでの基準。器を制作するようになった今、その頃の経験が生きていると思います。また、“色気”も大切ですね。実はオブジェからろくろに転向するきっかけの一つが、唐津の中里隆氏の仕事を一週間お手伝いしたことにあります。先生の仕事に衝撃を受けたんです。器にはじめて“色気”を感じました。魂胆がなく、ろくろが自由奔放で、見ていて気持ちがいい。それ以来、凝り固まると色気って死ぬんだなと思うようになりました。今でも、絵や建築、料理なども、色気があるものにぐっときます」

そして最後に、ご自身の作品についてこんな風に語ってくれた。

「昔の作品は、薄くて割れそうでコワいなんて言われたこともあります。でも私に子どもが生まれて、ゆるく厚みが出てきました。今は、空気をまとうような器をつくりたい。凛としたものが心地いいですね。同時に、機械でつくったように全部が揃っているのではなくて、なんとなく揺らいでいるもの、そういうゆるさと色気のあるものをつくりたいですね」


武藤恭通(むとうやすゆき)さん

武藤恭通(むとうやすゆき)さん

武藤恭通(むとうやすゆき)さん

都内有名店、自然派料理店をはじめ国内外の料理店で研鑽をつみ、広尾フレンチでシェフに就任。2009年渡仏。パリやブルゴーニュ、バスク地方で働き、2011年帰国。
代官山老舗フランス料理店で副料理長を務めたのち、現在はJSAソムリエを取得し、さらに活動の幅を広げている。

夏椿

夏椿

住所:
東京都世田谷区桜3-6-20
TEL:
03-5799-4696
営業時間:
12:00~19:00
定休日:
月曜日・火曜日(祝日の場合営業・企画展中無休)
URL:
http://www.natsutsubaki.com/

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