一皿のものがたり

乾漆の器におつまみとワインをあわせて。
ギャラリー「夏椿」の恵藤文さんが選ぶ 
お気に入りの一皿

2018/01/26

乾漆の器におつまみとワインをあわせて。ギャラリー「夏椿」の恵藤文さんが選ぶ お気に入りの一皿
乾漆の器におつまみとワインをあわせて。ギャラリー「夏椿」の恵藤文さんが選ぶ お気に入りの一皿

お気に入りの器になにを盛りつけるのか。大好きな料理を盛りつけるのはどんな器がいいのか。そんな思いをめぐらせる食卓は豊かな時間を生み出します。「一皿のものがたり」では、器と料理にまつわる物語を語っていただきながら、その方の日々の想いや暮らしについてお話をうかがいます。

ワインとおつまみを少し
“乾漆の器”で新鮮に

「夜は、白ワインやスパークリングワインと一緒に、晩酌のおつまみになるようなおかずを少し、ということが多いですね。ごはんやパンはいただかないことがほとんどです」と語るのは、器や暮らしの道具、装いを扱うギャラリー『夏椿』のオーナー恵藤文(えとう あや)さん。

赤ワインをほんの少しというのが本当は理想なんだけれど、と笑いながら、お肉より魚が好きでさっぱりといただけるから、最近はやっぱり白ワインですね、と整えてくださったテーブルには、白ワインとともに、漆のお皿と椀がありました。

手のひらよりも少し大きいサイズの「平皿」には、生ハムとカマンベールチーズ、マスカット。「椀」にはロールキャベツが盛りつけられています。

和のイメージの強い漆ですが、深い朱色にマスカットやロールキャベツのグリーンが映えてとても新鮮な印象です。

「そうですね。確かに漆器にこういう盛りつけをするのは、少し新鮮に感じるかもしれません。この器の場合、一般的な漆よりも薄く軽やかな印象があります。お皿のほうは高台もないため、洋皿と同様の感覚で盛りつけてもしっくりと馴染む器。私は、おつまみをちょこちょこと盛りつけたり、卵焼きや春巻きなど、日々のおかずをいただいたりするのにちょうどよく気に入っています。椀は少し大きめのカフェオレボウルぐらいのサイズを使っています。この椀には、お味噌汁はもちろん、こんな風にロールキャベツやシチューを入れるなど、和洋問わず日常的にいろいろなものを盛りつけていますね。このサイズは何にでも使いやすくて、食卓に登る頻度が高いんです」

通常、和のイメージが強く、どちらかというと重厚な印象のある漆器がこのように軽やかに感じるのは、“乾漆”と呼ばれる技術を用いてつくられているからだといいます。一般的な漆器は、木で素地と呼ばれる器を形づくり、そこに漆を塗ったものですが、乾漆は木ではなく「麻布」と「漆」を重ねて仕上げます。

「どしんとした木製の漆器の良さもありますが、乾漆の漆器の軽やかさも魅力です。この器の作家は、石川県で活動する鎌田克慈(かまた かつじ)さんという方で、乾漆による作品でさまざまなチャレンジをされていて、漆に新鮮な印象を与えてくださいます」

シンプルな器に
異素材を組み合わせる挑戦を

さまざまな作家の器を扱うギャラリーを主宰するため、日常の食卓は実験の連続と話す恵藤さん。器と食材の新鮮な組み合わせや、使い込むことで器がどう育っていくのか、日々発見があるといいます。

「私が好きなのは、シンプルながらもどこか主張をもった器。料理と器とのはっとするような新鮮な組み合わせをいつも探していますね」

そんな恵藤さんに、手元にシンプルな器はあるけれど、食卓をもう少し新鮮な印象にしたい場合は、どうしたらいいですか?と尋ねてみました。

「このような漆や、ガラス、木製などの素材が異なる器や、絵付けの器など、ひとつ付け足すことでテーブルが映える器があると新鮮な印象が加わります。乾漆は、和にも洋にも、晴れの日も日常も使いやすい器です。盆の上にのせたり、ガラスと組み合わせたりすることでも表情が変化し、いつも新鮮な印象を与えてくれるので、さまざまに楽しみながら使うことができます」

「また、はじめて暮らしに漆を取り入れるなら、小さなものを選ぶのもいいかもしれません。私は、はじめて漆の箸をつかったとき、口当たりの柔らかさがとても印象に残りました。直接口をつけるものは感触を得やすいため、スプーンなどでも良さを実感できると思います。箸や椀など定番の器に加えて、漆の器をひとつ買い足したい方には、この鎌田さんの器のような、重さがなく、普段の食卓に加えても浮かないさらりとした持ち味の漆器か、または高さのあるどっしりとした漆器を加えてポイントをつくるのもテーブルに変化が出て新鮮ですね」

日々の暮らしの中でも、こんな風にはっとした気づきのある組み合わせを見つけてテーブルを飾るのは、やっぱり楽しいですね、とお話してくださいました。

恵藤文(えとう あや)さん

恵藤文(えとう あや)さん

恵藤文(えとう あや)さん

器や暮らしの道具、装いを扱う「夏椿」のオーナー。
毎日の暮らしに馴染む、美しく、使いやすいものを提案している。
「夏椿」は鎌倉に移転予定。
詳細はホームページをご確認ください。

http://natsutsubaki.com/

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