日本の朝ごはん

見て・聞いて・ふれたリアルを発信。
料理家・岩木みさきさんの味噌愛

2020/05/14

見て・聞いて・ふれたリアルを発信。 料理家・岩木みさきさんの味噌愛
見て・聞いて・ふれたリアルを発信。 料理家・岩木みさきさんの味噌愛

味噌に魅せられ、これまで全国60ヵ所以上の味噌蔵を巡ってきたという、料理研究家の岩木みさきさん。各地の活きた味噌情報を届けるサイト「岩木みさきのみそ探訪記」の運営や、昔ながらの木桶仕込み「ガチみそ」シリーズのプロデュースなど、日本の伝統調味料である、味噌文化の普及のため精力的に活動しています。

味噌汁をはじめ日本の食卓に身近な味噌ですが、その歴史や種類、分類を正しく知っている人は意外と少ないのではないでしょうか。
「造り手の思いにふれると、味噌に対する見方がガラリと変わる」と話す岩木みさきさんに、知れば知るほど奥深い、味噌の魅力について伺いました。

味噌への興味から、全国各地の味噌蔵を巡るように

みずからを実践料理研究家と称し、「何でもやってみること」「自分で見て、聞いて、ふれること」を大切にしている岩木さん。料理研究家を目指したきっかけも、自身の経験がベースになっているそうです。

10代の頃に拒食症と過食症、ひどい肌荒れに悩み、その経験から食の大切さを意識するようになりました。食事を変えることによって体質が改善され、食べた物で体はできていることを実感したんです」

味噌への愛が止まらない、料理家の岩木みさきさん。

体により良い物を追求するうち、料理には欠かすことのできない日本の伝統的な調味料について、「もっと知りたい」と思うように。中でも、当時は料理家のあいだでもあまり深掘りされていなかったという味噌に、興味を持つようになりました。そこで岩木さんは、正しい知識を身につけるため、日本各地の味噌蔵を巡る、「みそ探訪」を独自にスタート。以来4年間で訪れた蔵は61ヵ所、訪問回数は延べ110回以上に上るそうです。

「みそ探訪を始めてから、改めて味噌のたくさんの魅力を知りました。同じように見える味噌でも、造っている場所や職人さんの人柄、材料のこだわりなどによって、それぞれまったく異なります。蔵を巡れば巡るほど、そういった背景を追求することの大切さを実感しますね」

ご自宅の冷蔵庫には、日本全国の味噌がずらり。「珍しい味噌に出合えるとワクワクします」(岩木さん)。

神聖な蔵の雰囲気に思わず号泣

みそ探訪の中で、岩木さんには忘れられない思い出があると言います。それは、長野県にある明治時代から続く味噌蔵「井上醸造」を訪れたときのこと。

6年間、ご家族以外が立ち入ることのなかった蔵の中に、特別に入れていただくことができたんです。澄みきった空気の中にふんわりと味噌の香りが漂い、その神聖な雰囲気に思わず圧倒されました。目には見えないけれど、そこにいるはずのたくさんの微生物の存在を感じ、蔵を出てから涙が止まりませんでした。味噌のことをもっと知りたい、蔵巡りを私のライフワークにしようと、決心させてくれた出来事です」

数ある味噌の中でも、特に思い入れが強いという味噌蔵「井上醸造」の味噌。

そして、さまざまな味噌蔵を巡って造り手の情熱にふれ、「生産者と消費者をつなぎたい」という思いがどんどん強まっていったといいます。

「料理教室などを開催すると、生徒たちから『味噌はおいしいし、体にも良い食材だけど、味噌汁以外の料理への使い方がいまいちわからない』という声を聞くことがよくありました。どんなに素敵な商品でも、使い方がわからなければ購入にはつながらず、消費されなければ、その商品を未来に残すこともできません。商品の背景にある造り手の思いを伝えると同時に、『料理にはこんな風に使えますよ』ということを提案し、生産者と消費者をつなぐ役割を果たせたらと思っています」

味噌に対する世間のイメージを変えたい

そんな思いから生まれたのが、20202月に上梓した岩木さんの新刊「奇跡の発酵調味料 みその教科書」(エクスナレッジ)です。「日本食の代表ともいえる味噌汁をはじめ、日本で暮らす人にとって、味噌はとても身近な物です。でも、その種類や特徴など、味噌のことをきちんと知っている人は意外と少ないのではないでしょうか。私自身も味噌の勉強を始めたとき、それらをわかりやすく説明している資料が少なくて驚きました。

この本には、味噌を活用したレシピとともに、知っているようでよく知られていない味噌の分類や期待できる健康効果、全国各地の造り手の情報などを、ギュッと詰め込みました。読んだ人が味噌を知り、味噌のことを好きになってくれたらとてもうれしいです」

紹介されている味噌レシピは、和食から洋食、中華、スイーツまでさまざま。作り方はどれもシンプルで、身近な材料でできるところもポイントです。

著書の中にも登場するみそクッキー。卵や牛乳は不使用。味噌のかすかな風味がどこか懐かしい味わい。

「味噌は多種多様な料理に使える万能調味料。これまで興味がなかった人や若い人たちにも、ぜひこの本を手に取ってもらいたいと思っています。『味噌ってこんなにおもしろいんだ』『なんとなくかわいくて楽しい』と、味噌に対するイメージを変えていきたいですね」

木桶仕込みの「ガチみそ」の魅力

近年、味噌造りに使用される容器はFRP(プラスチック容器)が主流。昔ながらの木桶仕込みの味噌は、全国の生産量の1%以下といわれています。そんな希少な木桶仕込みの味噌を、岩木さんは「ガチみそ」と名づけ、世の中に広く伝えるための活動も行っています。

「もちろん、FRPでもおいしい味噌を造ることはできます。でも、木桶仕込みは木の隙間に微生物が棲み着き、蔵独特の味わいや風味を生み出すんです。それぞれの蔵の個性が表れやすいのが、木桶仕込みの味噌の魅力。

そこで、木桶仕込みの味噌をもっと身近に楽しめるように、「ガチみそ」シリーズとしてプロデュースし、普段使いしやすい小さめのサイズで一般販売しています。白・黄・赤・麦・豆など、味噌の種類や色、味のバリエーションがひと目でわかるように、パッケージも工夫しました」

岩木さんプロデュースの「ガチみそシリーズ」とミニ木桶。
「木桶を想像しにくい人のために、講演などでは必ず持参している相棒です」(岩木さん)。

「味噌といえば岩木、岩木といえば味噌と言っていただけるようになりたい」と語る岩木さん。

「今後も実践料理研究家として、自分の目で見て、直接会って話を聞いて、実際にふれた、リアルで確かな情報を、これからもしっかりと発信し続けていきたいと思います」

岩木みさき(いわきみさき)さん

実践料理研究家・みそ探訪家

岩木みさき(いわきみさき)さん

実践料理研究家・みそ探訪家

岩木みさき(いわきみさき)さん

10代の頃、拒食症・過食症・ひどい肌荒れに悩み、食生活の見直し改善に成功。「日々の中で実践できることが健康につながる」と考え、料理教室の主催、レシピ考案、メディア出演など、「生産と消費のサイクルを紡ぐ」をテーマに活動。著書「奇跡の発酵調味料 みその教科書」(エクスナレッジ)が好評発売中。

https://www.misa-kitchen.jp/

「日本の朝ごはん」の他の記事を読む

To Top

このサイトについて

https://www.marukome.co.jp/marukome_omiso/hakkoubishoku/
お気に入りに登録しました