発酵マイスターに聞く!知って得する発酵豆知識

塩麹などの発酵調味料は、なぜ肉をやわらかくする?

2019/01/31

塩麹などの発酵調味料は、なぜ肉をやわらかくする?
塩麹などの発酵調味料は、なぜ肉をやわらかくする?

マルコメ株式会社 広報宣伝課の発酵マイスター・尾田春菜(おだ はるな)が、発酵の素朴な疑問にお答えする本連載。今回は、発酵調味料が肉をやわらかくする理由について、解説してもらいました。

肉を塩麹などの発酵調味料に漬けて焼くなど、簡単でおいしい料理に注目が集まっていますが、そもそもなぜ発酵調味料が肉をやわらかくするのでしょうか?今回はその秘密に迫ります。

肉をやわらかくするカギは「プロテアーゼ」

単刀直入に…なぜ、発酵調味料は肉をやわらかくするのでしょうか?

「塩麹や醤油麹などの発酵調味料に含まれる麹菌には、いくつかの酵素が含まれています。その酵素のひとつに『プロテアーゼ』というものがあり、それがお肉のたんぱく質を分解してくれることによってお肉がやわらかくなる、というしくみです。

たんぱく質は分子がいくつも連なってできているのですが、それを酵素がハサミのようにチョキチョキ切って小さくしていく…そんなイメージですね。そうして分解されたたんぱく質は、旨み成分であるアミノ酸になるんですよ」

発酵調味料には、味噌や醤油をはじめ、塩麹や醤油麹、ヨーグルトなどが含まれます。肉をヨーグルトや酒に漬け込むなんてこともありますが、これも肉をやわらかくするためなのでしょうか?

「ヨーグルトに含まれるのは、塩麹などと違って乳酸菌がメインです。もちろん酵素は含まれていますが、プロテアーゼの力はそんなに強く働かないんです。お肉を多少はやわらかくする働きはありますが、それよりもしっとりとさせる目的のほうが大きいと思います。ですから、同じ時間漬けるのであれば、塩麹や醤油麹のほうが圧倒的にお肉をやわらかくしてくれますよ。

塩麹は米麹に塩を、醤油麹は醤油を入れているものなので、必然的に麹菌の量が多くなります。麹菌が多いというのは、酵素の力が強いということ。塩麹に薄切りのお刺身を漬けて放置しておくと、ドロドロに溶けてしまうこともあるくらいです。塩麹・醤油麹のたんぱく質を分解する力って強力なんですよ」

食品の保存性が向上!旨みアップなどのメリットも

では、肉をやわらかくすること以外に、発酵調味料に食材を漬ける利点はあるのでしょうか?

「塩麹や醤油麹は塩分量が多いので、漬けておくことで食品の保存性が高まるというメリットがあります。お肉などはそのまま冷蔵庫に入れておくよりも日持ちするようになるので、すぐ食べないときや買いだめをしたときは、とりあえず発酵調味料に漬けて冷凍庫に入れてストックしておくといいと思いますよ。

また、酵素がたんぱく質を分解する際に出るアミノ酸のおかげで、旨み成分がグンと増します。塩麹や醤油麹以外の調味料は必要ないくらい、おいしく仕上がりますよ」

手のかかる調理をしなくても、ただ肉を「漬ける」だけでメリットが多くある模様。さらに、人間の体にとっていいこともあるそうです。

塩麹や醤油麹の酵素が行っていることは、人間の体でも起こっていること。発酵食品は酵素によって食べ物をある程度分解してくれるため、私たちの体にも優しいですよね。夏の暑さでくたくた元気のない時にも、昔から甘酒や発酵食品が使われてきたことにも納得です。

漬け込み時間は食品の種類や厚さによって変える

では、発酵調味料に食品を漬け込む時間はどのくらいが目安なのでしょうか?

お肉の厚さによって違いますが、20~30分程度漬け込んでおけば、十分やわらかくなります。お魚の場合は、30分〜ひと晩くらい。漬け込みすぎると、先程お話ししたように、ドロッと溶けたようになってしまいます。刺身用のお魚なら、軽く揉み込むだけでOK10分程度で大丈夫ですよ

そして、塩麹などに漬けた肉や魚は、焼いて食べることが定番ですが、焼く際に気になるのが、塩麹が焦げやすいという点。

「米麹の糖分が加熱によってカラメル化してしまうため、お肉の表面に米麹の成分がついているだけで焦げやすくなってしまいます。だからといって、焼く前に塩麹を洗い流してしまうのはもったいないですよね。

その解決法としては、表面の塩麹をぬぐってから焼いて、後からぬぐった塩麹を加熱して、ソースとして利用する方法。無駄もなく、見た目もきれいに焼けると思います!」

発酵調味料を使ったおすすめレシピ

最後に、日々さまざまな発酵調味料を使っている、尾田のお気に入りレシピについても聞いてみました。

「塩麹にお野菜を漬けるのもいいですが、私は味噌とヨーグルトに塩麹を加えて、漬け床にするのが好きです。複雑味が増して、さらにおいしくなるんですよ。

また、お刺身用の魚に塩麹をさっと揉み込んで作るカルパッチョもいいですね。塩分や旨みがあるので、オリーブオイルをかけるだけでおいしくいただけます。また、お魚を漬けすぎてしまった場合は、ご飯にのせてお茶漬けにするのもいいですよ。

お肉もお野菜もそうですが、漬けすぎてしまうと、やはりしょっぱくなりますので、そういった場合は、食材についた発酵調味料を拭き取ったり、水洗いしたりして塩抜きをしましょう。ちなみに、冷凍しておくと発酵が止まるので、漬けすぎてしょっぱくなるのを防ぐことができますよ。ぜひ試してみてください!」

ほかにも、発酵調味料…中でも塩麹を使って簡単に調理ができるレシピをご紹介します。肉を塩麹に漬け込んで焼くだけという定番の調理法以外にも、さまざまなバリエーションがあるんです。こういったレシピを参考に、発酵調味料をどんどん活用していきましょう!

塩麹で作るサラダチキン

調理器具は炊飯器のみ!火を使わずにできる簡単メニューです。

塩麹と青じそで作るジェノベーゼ風ソース

パスタに絡めたり、グリルした肉や魚と合わせたり、幅広いアレンジで楽しめます。

  • [材料]
    青じそ30枚くらい
    塩麹大さじ4~6
    にんにく適量
    オリーブオイル適量
    松の実orカシューナッツ松の実なら15粒、カシューナッツなら5~10粒

    ※材料の量はお好みで調節してください。

  • [作り方]
    上記の材料をすべてフードプロセッサーにかけて混ぜるだけ
尾田春菜(おだはるな)

発酵マイスター

尾田春菜(おだはるな)

発酵マイスター

尾田春菜(おだはるな)

マルコメ株式会社広報宣伝課所属。
発酵マイスターに加えてジュニアソイフードマイスターの資格を持ち、発酵食品関連のイベントなどにも多く登壇している。

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