心ほっこり甘酒探究。

砂糖不使用でも優しい甘さ。
和菓子だけじゃない
「発酵あんこ」活用法

2020/07/16

砂糖不使用でも優しい甘さ。和菓子だけじゃない「発酵あんこ」活用法
砂糖不使用でも優しい甘さ。和菓子だけじゃない「発酵あんこ」活用法

日本の伝統的なスイーツである、和菓子に欠かせない「あんこ」。あずきから作られるためヘルシーなイメージもありますが、含まれる砂糖の多さが気になるという人も少なくないようです。
そのため、最近は砂糖を使わずにあずきと麹だけで作る「発酵あんこ」に注目が集まっています。この発酵あんこは、砂糖不使用でも優しい甘さが魅力です。
今回は、20202月に刊行された「発酵あんこのおやつ」(WAVE出版)の著書である、料理家でお菓子研究家の木村幸子さんに、発酵あんこの魅力について伺いました。

炊飯器で作る!砂糖不使用の発酵あんこ

「発酵あんこのおやつ」の著者である木村さんは、飲食店や企業などへのレシピ提供のほか、人気のお菓子教室「洋菓子教室トロワ・スール」を主宰する料理家・お菓子研究家。そんな木村さんが、発酵あんこに出合ったのは、本を上梓する1年ほど前だったといいます。

「私自身、年々和菓子が好きになっているのですが、和菓子のあんこや生地に含まれる糖分が気になるようになり、食べたいけれど毎日は食べられないと感じていたんです。そんなときに出合ったのが、発酵あんこでした。通常は大量の砂糖を加えて作るあんこに対し、発酵あんこは麹を使って発酵させているので、砂糖は不使用。実際に食べてみても、普通のあんこよりも優しい甘さで、さらに口当たりも軽いのがいいなと思ったんです」

「ヨーグルトから始める 初めての「発酵食」生活」(主婦と生活社)の監修を務めるなど、発酵に関する知識も持つ木村さんは、作り方にも注目しました。

「発酵あんこは甘酒の作り方を応用しています。麹を使った発酵で、豆に含まれるでんぷんをブドウ糖に変えることで甘さを引き出すのです。本書の発酵あんこの作り方に関しては、甘酒探究家の藤井寛さんに監修していただきました。圧力鍋やヨーグルトメーカー、甘酒メーカーを使った作り方もあるのですが、とにかく簡単に作れることにこだわり、炊飯器を使った方法をおすすめしています」

炊飯器で作れる手軽さが魅力の発酵あんこですが、より上手に作るコツはあるのでしょうか。

「基本的にはレシピどおりに作っていただければ大丈夫ですが、発酵時にしっかりと混ぜたほうが均一に発酵できて甘みが出ると思います。また、どうしても使用する炊飯器のメーカーによって仕上がったときの水分量に差が出てしまうので、あんこ玉やおはぎを作りたいけどゆるくてまとまらないという場合には、加熱して水分を飛ばしながら調整していただくといいと思います。その際、70℃以上になると麹菌が死滅してしまうので注意してください」

発酵あんこ

  • [材料](出来上がり約800g)
    あずき200g
    米麹(乾燥)200g(生麹の場合は250~260g)
    適量(600ml~)
  • [作り方]
    1. あずきを水で洗い、水気を切った後、鍋にあずきが十分浸かる程度の水(分量外)を入れて火にかけ、渋切りを行う。沸騰させたまま2分茹で、茹で汁を捨てながら、ザルでこす。
    2.(1)のあずきと水600mlを炊飯器の釜に入れ、お粥炊きモードで炊飯する。炊き上がり(写真)は全体を700~750g(水が飛びすぎた場合は加水。生麹使用の場合は50~60g煮汁を捨てる)にし、60℃前後になるまで冷ます。
    3. (2)に米麹を加え、あずきとよく混ぜ合わせる。
    4. 炊飯器の蓋を開けたまま布巾を1枚被せて、炊飯器の保温モードのスイッチを入れる。その後、2~3時間おきに1回よく混ぜ合わせながら、8~12時間発酵させる。
    5. 総量が約800gになれば出来上がり。麹の白い粒が気になる場合は、フードプロセッサーにかける。

あんこで和菓子以外の
スイーツが作れることを
知ってもらいたかった

「あんこ好きな人の中には、白あんが好きという人も多いんですよね。そのため、白あんに近い風味に仕上がる白花豆とひよこ豆で作る発酵あんこを開発しました。一方、あずきとレンズ豆で作る発酵あんこは、黒あんのような味わいが楽しめます」

4種類の発酵あんこを使い、木村さんが生み出したおやつのレシピは実に63品!どら焼きや大福をはじめとする定番和菓子はもちろん、ケーキやクッキー、パイなどの洋菓子、アイス、チャイといった冷たいお菓子やドリンクまで、本書で紹介されています。

本書で紹介している、豆乳、はちみつ、バナナを使って作る「バナナあずきバー」(写真上)と、コンデンスミルク、
豆乳を使った「あずきバー」(写真下)。夏の暑い日のおやつにぴったり!

「レシピを考えながら感じたのは、発酵あんこは普通のあんこの67割程度の甘さなので、たっぷり入れても重くならないのが魅力だということ。また、あんこ以外の生地にも極力砂糖を使わないようにし、ヘルシーだけれども、食べ応えも満足感も申し分ないおやつを目指しました。
和菓子から洋菓子まで、さまざまなジャンルのおやつをご紹介したのは、せっかく作った発酵あんこを活用してほしいから。発酵あんこは普通のあんこよりも甘さが控えめなのに加え、いい意味で主張が強すぎないので、例えばバタークリームのような、一見あんことは合わなそうな物とでもしっくりくるという発見がありました」

そこで、特別に本書にも登場する「あん入りバターサンドクッキー」の作り方を、教えてもらいました。

あん入りバターサンドクッキー

  • [材料]
    クッキー(市販)
  • (a)
    卵白30g
    てんさい糖22g
    無塩バター50g
    ラム酒小さじ1
    発酵あんこ150g
  • [作り方]
    1. ボウルに卵白を入れて、てんさい糖12gを2回に分けて加え、しっかりとしたメレンゲを作る。別のボウルに常温に戻しておいた無塩バター、残りのてんさい糖10gを加えて白っぽくなるまで泡立て、メレンゲを少しずつ加えて混ぜる。
    2. 直径8mmくらいの丸口金をセットした絞り袋に(1)を入れる。同様に、発酵あんことラム酒を混ぜたあんを別の絞り袋に入れる。
    3. クッキーの表面に(2)のバタークリーム、あんを絞って重ね、もう1枚のクッキーでサンドする。

「あん入りバターサンドクッキー」は、バタークリームとあずきの相性ばっちり!本書では、発酵あんこに
マッチするクッキーの作り方も紹介されている。

料理が上達する楽しさを
仲間と共有したい

現在は洋菓子のみならず、料理のレシピ監修や和菓子店のプロデュースなども手掛ける木村さんですが、初めてお菓子づくりをしたのは10代のとき。「あまりにもうまく作れなくてショックを受けた」といいます。

「高校生のときに料理教室に通い始めたんです。そこにお菓子コースもあったので、行ってみようかなって。そのときに初めてお菓子を作ったんですけど、私だけほかの人たちより明らかに下手だったんです。今思えば、私以外の生徒さんは30代の主婦の方ばかりで、彼女たちに比べたら、料理の経験もない私がうまく作れないのは当たり前のことなのですが…。でも、そのときは自分の下手さや手際の悪さがすごくショックでした」

「せめて人並みに作れるようになりたい」と、木村さんは教室に通い続けたそうです。

「続けていくうちに、やっぱりうまくなっていくんですよね。そうすると家族も喜んでくれるし、自分も楽しくて。もっとうまくなりたい、もっとお菓子のことを知りたいという気持ちの繰り返しでした。
実は、自分で教室を始めたのも、私自身が経験した、上達する楽しさを共有したいという想いからなんです。生徒さんから、『教室で作ったケーキを家族が喜んでくれた』『教室に来るのが楽しみ』といった話を聞くと、私までうれしくなります。お菓子や料理って、人を幸せにするものだと思うんです。
自分が作った物で誰かが喜んでくれる。それは私にとって、一番大きなモチベーションになっています」

木村さんが手掛けた、料理に関する書籍や本が、アトリエにはずらり。

そんな木村さんは現在、20209月に刊行予定の発酵あんこの本の第2弾を制作中。次回は豆ではなく、野菜で作る発酵あんこを使ったおかずとおやつのレシピが掲載される予定だそう。

「発酵あんこを砂糖の代わりにするなど、料理にも使えるレシピを予定しています。発酵あんこって、自然な甘さはもちろん、発酵によって旨みもアップするので、料理との相性もいいんです。普段使う調味料が1種類増えるような感覚で、発酵あんこを身近に感じてもらえる本にできたらと思っています」

料理写真:©山本ひろこ

木村幸子(きむらさちこ)さん

木村幸子(きむらさちこ)さん

木村幸子(きむらさちこ)さん

料理家・お菓子研究家。東京・青山で人気のお菓子教室「洋菓子教室トロワ・スール」を主宰。発酵食やグルテンフリー、低糖質、はちみつを使用した体に優しいお菓子や料理のレシピ開発、監修を手掛ける。現在は、「発酵あんこのおやつ」(WAVE出版)の第2弾を鋭意制作中。

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