日本の伝統 保存食を極める

日本の伝統 保存食を極める 
第二回 佃煮 -東京都 日本橋鮒佐-

2013/01/21

佃煮の普及に重要な役割を果たしたのは、徳川家康だった!?

佃煮の味を大きく左右するのは「タレ」の品質維持。

「地震や火事が起きたら身の回りのものは捨てても、タレだけは持って逃げろという言い伝えがあります」とは、五代目の悠さん。命のタレは三代目が製法を確立した約60年前からつぎ足してきたもの。

昆布、エビ、アサリ、ごぼうなどの各材料は別々の釜に入れられる。そこで3種の醤油と2種の砂糖等で煮た後に、タレを加えてさらに煮る。煮上がったら残り汁を濾して命のタレの樽に戻す。この繰り返し。

「たとえば、エビの身が肥えているときの残り汁は粘度が増して、同じ配分で戻すとタレが重くなる。このタレを使うと仕上がりは堅くなって塩を吹いたりするので、いつも微妙な調整が必要なんです」

野菜と魚介類のエキスが凝縮した秘伝のタレ。舐めたらどろっと深い味がして、それだけでもご飯が食べられそうでした。

江戸から続く定番商品、ごぼうの佃煮の製造過程を追ってみた。

山盛りの新鮮なごぼうが醤油の入った70リットルの釜に入ると、そこに砂糖と隠し味の唐辛子が加わる。隠し味は赤酒・生姜・水あめだったり、具材によって変わる。

火加減も大切なポイントで、スタートは2万5000キロカロリーの超強火、タレを加えながら少しずつ火を弱めていく。ぐつぐつ煮詰まったごぼうには当初の青白い面影はない。約1時間後、頃合いを見計らって釜から上げられる。

広々とした工場内には釜と樽、材料と調味料だけ。

工場の中はシンプルで整然としているが、佃煮作りに欠かせない道具がひとつある。右写真で主任の坂田さんが覗いているのが、それ。ブリックス計という液体の粘度を計る道具で、タレの濃さや煮上がるタイミングをアナログ数値で教えてくれる。その数値は、もちろん企業機密です。

煮上がったばかりのごぼうの佃煮は、醤油の香りが立って歯ごたえホクホクでやわらかい。役得とはまさにこのこと、たいへん貴重な試食体験をさせていただきました。

約70度のできたてアツアツの佃煮は、この後冷却室で20度まで冷やしてからすぐに袋詰めされる。

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