発酵でつながる、おいしい輪!「私の発酵“推し”美食」

Vol.4 乳酸菌のけなげな働きに胸キュン!
河原あいさんの「ヨーグルト愛」

2023/07/06

Vol.4 乳酸菌のけなげな働きに胸キュン!河原あいさんの「ヨーグルト愛」
Vol.4 乳酸菌のけなげな働きに胸キュン!河原あいさんの「ヨーグルト愛」

小さな微生物の働きに魅せられ、乳酸菌の研究で博士号も取得した河原あいさん。大学院卒業後は、発酵食の魅力や腸内環境の整え方などを発信するべく、研究室を飛び出してライターになったという異色の経歴の持ち主です。乳酸菌の研究に没頭していた院生時代のこと、河原さんが「食べない日があるとソワソワする」という推し発酵食のこと、手軽でおいしいレシピまでたっぷりお話を伺います。

知れば知るほど奥深い、
個性豊かな菌の世界

「乳酸菌って目に見えないほど小さいけれど、私たちの生活に欠かせない存在。人間よりはるかに小さなものが頑張ってくれているということに、心をくすぐられます」
河原さんの院生時代の研究テーマは、熊本の郷土食「味噌漬け豆腐」に含まれる乳酸菌。味噌床に半年ほど漬けた豆腐は、チーズのようなまろやかな旨みと独特の食感が特徴です。

「味噌漬け豆腐は保存性にすぐれた食品ですが、その高い保存性にはどうやら乳酸菌が関わっている、というところに着想を得て、そのメカニズムを遺伝子レベルで解析するのが私の研究テーマ。生き物相手なので、時間は関係なく日夜格闘していましたね」

ひと口に乳酸菌といっても、その種類はさまざま。乳酸菌の種類ごとに多様な個性があるといいます。
「人間と同じように、菌もエサを食べてその栄養を消化・分解します。この代謝活動で作られるものの半分以上が乳酸ならば、乳酸菌と定義されます。だから乳酸菌って、実は乳酸以外にもいろいろなものを作っているんですよね。味噌漬け豆腐に含まれる乳酸菌の場合は、ほかの菌の繁殖を抑える成分を分泌していて、これが保存性の向上に一役買っています」

現在、さまざまな機能性を持った乳酸菌・ビフィズス菌入りのヨーグルトや乳酸菌飲料が販売されていますが、これもそれぞれの商品に使われている乳酸菌の個性によるもの。研究がどんどん進んでいけば、これまで知られていなかった菌の働きが明らかになっていくことでしょう。

乳酸菌の繊細さも愛おしい

「手や顔、髪などにも乳酸菌をはじめ、いろいろな菌が住んでいるんですよ」と河原さん。

研究をしりぞいて1年たちますが、ふと研究者時代のクセに気がついて苦笑することもあるそうです。
「たとえばペットボトルやびんの蓋を開けたあと、多くの人は蓋の内側を上にむけて置くと思うんですよね。私はつい最近までずっと蓋の内側を下にむけていて。空気中に浮遊している菌が容器につかないようにするためで、研究に使う試薬容器の蓋などは必ず下にむけておかなければいけないんです。

無意識のうちに日常生活にまで研究のお作法が侵食していましたね。でも、そのくらい空気中をはじめ、私たちの身の回りのあらゆるところに菌はいて、人が気づかないところでさまざまな働きをしています。そう思うと、なんだかすごくおもしろいですよね」

研究中は、乳酸菌の培養が第一で長期休みもなし! 乳酸菌が育ちやすい環境を整えるために、温度管理や寝床のお世話などに心を砕きました。
「乳酸菌ってそんなに強い菌ではなく、しっかりエサをあげていても死滅してしまうことも。熱に弱いのはもちろん、温度が低すぎてもよくない。糖とタンパク質が豊富な寝床を用意して、こまめに新しいベッドに移してあげることが培養のコツです」

こうして乳酸菌の特性を改めて知ると、発酵食品を食べるときにはできるだけ加熱しないこと、雑菌が繁殖しない清潔な容器に保存することなどが重要だとされているのにも納得!

体が喜ぶのを感じるから、
食べずにはいられない

乳酸菌をはじめ、菌が醸すものへの興味・関心は尽きず、また発酵食を食べることで生まれる心地よさも日々実感しているという河原さん。とくにお気に入りの発酵食は、スーパーでも手軽に買えるヨーグルトで、1日食べない日があるとなんだかソワソワしてしまうほどなんだとか。

朝食の1品や小腹がすいたときのおやつに。豆乳ヨーグルトに冷凍ブルーベリーを乗せて。

「ヨーグルトって本当に優秀な食材です。どんな食材も受け止める懐の深さがあって、何よりおいしい。食べない日が続くとなんだか落ち着かないのは、体も発酵食を求めているからなのかな、なんて思います。私は単純なので、朝、フルーツとヨーグルトを食べればそれだけでご機嫌(笑)。さつまいもやかぼちゃ、里芋などと合わせたサラダも大好きです。マヨネーズ代わりに使うと、脂質も抑えられて、日持ちもアップします」

最近の河原さんのお気に入りは、豆乳ヨーグルト。豆乳に含まれるたんぱく質が、乳酸菌によって酸性度が高まることでかたまったもので、牛乳から作られるヨーグルトと仕組みは同じです。

「ヨーグルトメーカーに豆乳とタネ菌を入れて、自家製豆乳ヨーグルトを作ることもあります。タネ菌は、スーパーやネット通販でも手軽に買うことができますよ」

蒸してあらくつぶしたかぼちゃ1/4個に、水切りヨーグルト50gと好みでレーズンやくるみをまぜるだけで、
おしゃれなデリ風サラダに。

黒くなったバナナの救済にも!
バナナヨーグルトケーキ

そのまま食べるだけで十分においしいヨーグルトですが、ちょっとひと手間加えてスイーツにしても満足度アップ! ぐるぐるまぜるだけで、びっくりするほどおいしいパウンドケーキをご紹介します。

  • [材料](18×8cmのパウンド型1台分)
    バナナ3本(150g)
    豆乳ヨーグルト80g
    オートミール(粉砕)80g
    アーモンドフラワー40g
    ベーキングパウダー5g
    液体甘味料30g
    米油20g
    バニラエッセンス、シナモンパウダー各適量
  • [作り方]
    1.バナナ2本はフォークなどでしっかりつぶす。残りの1本はトッピング用に横半分に切る。
    2.ボウルにバナナ以外の材料をすべてまぜ、オーブンシートを敷いたパウンド型に流し入れ、トッピング用のバナナをのせる。
    3.180度に予熱したオーブンで20〜30分焼く。
    4.粗熱がとれたらシナモンパウダーを振る。

豆乳ヨーグルトの効果でしっとり生地に。食べきれない分は、1切れずつラップでくるんで冷凍も可能です。

次回は食卓写真家で、体験型の食のオンラインスクールも運営する丹下恵実さんにバトンをつなぎます。どうぞお楽しみに!

河原あい(かわはらあい)さん

ライター・管理栄養士

河原あい(かわはらあい)さん

ライター・管理栄養士

河原あい(かわはらあい)さん

管理栄養士。環境系大学で博士号(環境共生学)取得後、フリーランスのライターに。食や健康に関する発信を中心に、活動。腸の健康に注目したライフスタイルマガジン「goodcho」編集長も務める。
https://goodcho.aub.co.jp/

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