今日がうれしくなる器

涼やかに器を楽しむ

2013/06/03

日本には全国に個性豊かな器が存在し、さまざまな文化やつくり手の思いを伝えています。またそうした品々の存在は日常に華やぎを与えてくれるものです。そこで器ギャラリーオーナーに、日々の暮らしや季節の移ろいを彩る器をご紹介いただきました。

今回訪れたギャラリー「夏椿」の店主、恵藤 文さんにお願いしたのは、これから迎える梅雨、そして暑い夏を涼やかに見せてくれる器。古民家を改装した美しく、落ち着いた店内に並ぶ器の数々の中から、いくつかをセレクトし、コーディネートしていただきました。

ガラスと銀色を組み合わせる

暑い夏を涼しく感じさせるには、どのような器を選べばいいかとの問いに、恵藤さんは「テーブルに並ぶ器の中の、ガラスの割合を増やせば、その分、涼しく感じます。少し重い印象を与える焼締めの器や漆などもガラスと組み合わせると軽やかになりますね。また、もう一つおすすめしたいのが、銀色を加えること。ステンレスや銀など金属の色は、ひんやりとした印象を与えてくれます。熱伝導がいいので、冷蔵庫などで、きりっと冷やし、そこに冷たい麺やサラダを盛りつけるのも、夏の食卓を涼やかにできるので、おすすめですね」と恵藤さん。

色、自然の素材を生かす

また色も大切な要素だとか。「赤やオレンジ、茶色などの暖かい色を控え、緑や青、黄色などの要素を増やすと涼しい印象を与えます。今回のコーディネートでいえば、白い麻のテーブルクロスも、色と素材から夏らしさを感じますね。普段の食卓で、全体の色バランスを考えるということはあまりないかもしれないけれど、お客さまがいらっしゃる時など、少し意識をするとそれだけで、ぐっと清涼感を演出できます」。

テーブルの上の花瓶の植物も印象を左右する大切な役者。このコーディネートでは、大振りのガラスに生けられた芍薬の白がとっても印象的だ。「植物や野菜、果物を上手に用いるのはポイントですね。色もそうですが、自然のものは、季節の移り変わりを感じさせる大切な要素。トマトやキュウリが盛られると夏らしいなとか、向日葵を見ると夏だなとか、誰もが直感的に思うものです。うまく取り入れてその季節らしさを感じたいですね」。

もう一つのコーディネートは、淡いグリーンとオレンジの組み合わせが美しくて思わずため息がもれる。「反対色を用いたコーディネートです。重い印象を与えないのは安齋新・厚子さんの淡いグリーンのお皿の印象が大きいですね。色もそうですが、これは陶器ではなく磁器なんです。陶器が比較的温かな印象を与えるとすると、ひんやりとした質感できりっとした磁器はどちらかというと夏向きの素材。うまく取り入れたいですね」。

作家の息づかいを感じる

そんなお話を聞きながら店内をぐるりと見渡すと、味わいのある器たちが自然に並んでいる。装飾的でなく、作家の人柄に触れるようなさりげない個性があり、形や色柄は“こうでなくてはならなかったのだ”というような絶妙なバランスを備えた作品が多い。「無駄なものをそぎ落としつつ、角度やバランスなどに細やかなセンスを感じるものに惹かれます。自ずとそういうものが集まっていますね」と恵藤さん。

自ら使いたい、ほしいと思うものを作家に依頼して、オリジナルのものを制作してもらうこともあるのだとか。そんな中から、今回コーディネートに選んでいただいた作家たちについて教えていただいた。

「グラスとピッチャーは木下宝さんという富山で制作している作家さんのものです。精巧だけど、吹きガラスならでは味わいが魅力ですね。田んぼでお米をつくったり、畑をしたりしながら、ガラスづくりをしておられる。一本芯の通った人柄が作品にも表れています。木下宝さんのガラスと相性がいいなぁと組み合わせたステンレスの作品は、成田理俊さんのもの。北海道ご出身で今は群馬県みなかみ町で制作をしておられます。材料はステンレスなのですが、磨いてピカピカさせたりせず、酸で洗ったマットな質感が特長です。どんどんチャレンジして新しいものを生み出す力に溢れた作家さんですね」。

「もう一つのガラス、ペーパーウェイトはおおやぶみよさんのもの。オブジェとしてテーブルや庭にそっと置いておくだけでも涼しげな印象を与えるし、水の中に沈ませても美しいです。京都ご出身ですが、今は沖縄に工房とギャラリーを構え、3人のお子さんを育てながら制作されています。再生ガラスによるぽってりとした質感、どこかおおらかな雰囲気がおおやぶさんの人柄を感じさせますね」。

「淡いグリーンの磁器は、石川県の安齋新・厚子さんご夫婦の作品です。品があり、料理を引き立てるこの青磁の作品は、料理人にも人気があります。同世代の作家さんということもあり、一緒に相談しながら、新しい商品をつくっていただいたりしています」。

「銀彩ピューター皿と呼んでいる器は、岐阜県多治見にあるギャルリ百草のオーナーでもある安藤雅信さんの作品。ピューターの皿を陶器で表現したもので、色といい、形といい、何を合わせたらいいのだろう、どんな料理を盛ろうかと考えてしまうかもしれませんが、実際に使ってみると和洋どちらにもしっくりと馴染む、包容力のある器です」。(※最終段落に作家の言葉があります)

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