手仕事カレンダー
Vol.20 春の野菜&フルーツのおいしさを引き立たせる!
みなくちなほこさんの「煮切りみりん」
2026/04/23
手仕事カレンダー
2026/04/23
人気料理家のみなさんに、季節の食材と発酵食品を使った、とっておきの作りおきや保存食のレシピを伺う「手仕事カレンダー」企画。
今回は、フードコーディネーターのみなくちなほこさんに、本みりんの魅力を引き出す「煮切りみりん」の基本の作り方と、料理に取り入れるコツを教えてもらいます。煮切りみりんを使った「新ごぼうとセロリのお酢煮」のレシピのほか、シロップ感覚で楽しめる意外なアレンジもご紹介します。
さらに、本みりんを搾ったあとに残る「みりん粕」に注目。食材としてのおいしさや、日々の料理に活かすアイデアについても、熱く語ってくれました。
「発酵調味料の中でも、みりんの世界は奥深いですよ。もっとスポットライトが当たってほしいと、かねてから思っています」
みなくちさんが言う「みりん」とは、もち米と米糀、焼酎(または醸造アルコール)で造られる「本みりん」のこと。いわゆる「みりん風調味料」とは別物です。
「本みりんと、そのほかのみりんとの違いをわかる人が、少しずつ増えてきていると感じています。ただ、本みりんと言っても、一つひとつに個性があることも、みなさんに知っていただけたら。伝統的な製法なのか工業的な製法なのか、原材料の産地や配合などで、味わいや色みがだいぶ違うんですよ。私は国産米を使ったものを選び、上品なコクと旨みがあり色の淡いもの、甘みや旨みに加えて色もしっかり濃いものなど、複数の本みりんを料理に合わせて使い分けています。」

旨みや甘みをプラスし、料理に照りやツヤを出し、においも和らげてくれる本みりん。アルコール分が含まれるため、煮物にしか使えないと思っている方も多いのではないでしょうか。
みなくちさんのおすすめは、本みりんを煮詰めて、アルコール分を飛ばした「煮切りみりん」にすること。
「煮切ることで本みりんの旨みと甘みが凝縮するので、砂糖の代わりに使えて、上品なコクも出ます。砂糖は粒子が大きいため、煮始めに加えないと味が入りにくいのですが、煮切りみりんは短時間で煮上げたいときにすっと味がなじむのも魅力です。そのほか、加熱しない料理にも使えますよ。ただし、アルコール分が抜けたことで日持ちはしないので、余ったら冷蔵室に入れて5日以内には使い切ってください」
今回は、「煮切りみりん」のコツとあわせて、春にぴったりのレシピをご紹介。香り高い新ごぼうと、風味や彩り豊かなセロリを、酢と合わせてさわやかに煮た「新ごぼうとセロリのお酢煮」をお届けします。

煮詰め具合で、見た目にも変化が。左は本みりん。
中央は本みりんを1〜2分加熱してアルコール分を飛ばしたもので、料理に使う場合はこの程度に。
右は7〜8分かけてしっかりと煮詰めたもので、シロップのような濃厚さ。


「新ごぼうとセロリのお酢煮」の材料。
「新ごぼうでなくても、普通のごぼうでもいいですし、新にんじんなどに替えてもおいしいですよ」。
薄口しょうゆを使うと、野菜の色をきれいに保てる。
1.「煮切りみりん」を作る。小鍋に本みりんを入れて弱めの中火にかけ、ふつふつしてきたらそのまま1〜2分煮立たせ、アルコール分を飛ばす。

アルコール分は、1〜2分しっかり煮立たせると抜ける。
「吹きこぼれやすいので、様子を見ながら、火加減に注意して加熱してください。」
2.ごぼうは皮をたわしで洗い、厚さ2〜3㎜、長さ4㎝のせん切りにする。セロリは筋をとり、油揚げとともにせん切りにする。

各材料のせん切りは、マッチ棒の大きさを目安に。
3.鍋にだし、「煮切りみりん」、酢、薄口しょうゆ、塩を入れて中火にかける。

アルコール分が抜けた「煮切りみりん」は、ほかの調味料やだしと同じタイミングで加えても、
食材やだしの風味を引き立てられる。
4.煮立ったら②を加え、さらに5分ほど煮て火を止め、そのまま冷ます。


新ごぼうやセロリを加え(左)、5分ほどさっと煮れば、しんなりとした状態に(右)。
そのまま冷ましながら、味をしみ込ませる。
アルコール分が抜けた「煮切りみりん」は、加熱せずにそのまま使えるのもうれしい。和え物や酢の物などにも、砂糖を使わずに上品な甘みとコクが加えられます。
そして、7〜8分煮詰めた「煮切りみりん」はとろりとした質感で、甘みや旨みがさらに凝縮し、シロップのような色と味わいに。「上品なアガべシロップのようでもあり、和の風味を少し感じるやさしい甘みです。アイスや水切りヨーグルト、フルーツなどにかけて食べるとおいしいですよ」

季節のフルーツを輪切りにしてのせたトーストに、シロップ状の「煮切りみりん」をたっぷりとかけて。
メープルシロップやアガべシロップのような感覚で、手軽な甘みとして使える。
本みりんと同じくらい、みなくちさんの料理に欠かせない存在が「みりん粕」です。もち米や米糀、焼酎から造られた本みりんの搾り粕のことで、白くぽろぽろとした形状から、関西では「こぼれ梅」とも呼ばれています。酒粕のような独特な香りや風味はなく、やさしい甘みが口の中に漂います。
みりん粕との出合いは、みなくちさんの夫の故郷、徳島県鳴門市にあった本みりんの醸造元「畑商店」。
「その店のみりん粕は雑味がなく、上品な甘みが感じられて、そのまま食べてもとてもおいしいんです。店のお母さんから、『1日に大さじ1くらい食べると、体にいいよ』と聞いて、栄養面でもいいなと。確かに、ビタミンB群やアミノ酸、腸内環境を整えるレジスタントプロテインも豊富だし、食べると元気が出ます」
惜しくも数年前に廃業してしまったそうですが、みりん粕は冷凍できるのもいいところ。廃業前にたくさん買って冷凍保存し、大切に使っているそうです。

貴重な「畑商店」のみりん粕。
みりん粕の活用法を聞くと、みなくちさんがすすめてくれたのが、漬け床でした。
「本みりんでのばして、肉や魚を一晩漬けてから焼いてみてください。みりん粕の旨みがなじんで、おいしくなります。焼くときに、しょうゆなどで味つけを。野菜の場合は、塩もみしてから漬け、軽くぬぐってそのまま食べられますよ」
また、ケータリングの仕事で、一口スイーツとして添えることもあるのが、「エナジーボール」。
「畑商店のお母さんの『元気になる』という教えから名づけました。みりん粕、クリームチーズ、砕いたミックスナッツやドライフルーツを1:1:1の割合で混ぜ合わせて丸め、表面にココナッツフレークをまぶします。甘みが程よく、一口食べると満足感もあって、おやつにおすすめです」

一口大のボール状で、何個でも食べたくなる「エナジーボール」。「今回はクランベリーを使いましたが、
りんごやパイナップルのセミドライフルーツなどを混ぜてもおいしいです」と、みなくちさん。
「煮切りみりん」やみりん粕について、その魅力と活用法を初めて知った人も多いかもしれません。本みりんを煮切るだけ、みりん粕を取り入れてみるだけで、日々の食卓が変わります。奥深い本みりんの世界を堪能してみてください。
※非加熱のみりん粕はアルコール分を含みます。アルコールの苦手な方、妊娠中の方、子どもなどは食べるのを控えましょう。
フードコーディネーター
フードコーディネーター
東京・東日本橋にある、キッチンスタジオ兼ギャラリー「Kitchen BOTAN(キッチンボタン)」主宰。幼いころから親しんだ知識を活かしたアウトドア料理から、作りやすく肩のこらない家庭料理まで、幅広いジャンルを得意とし、おしゃれなスタイリングにも定評がある。著書に『マンガでわかった!はじめてのキャンプめし』(主婦の友社)など。