手仕事カレンダー
Vol.21 西京味噌と薄口しょうゆの合わせ技で絶品!
近藤ゆりこさんの「初夏の野菜を豊かに味わう
酢味噌和え&酒粕和え」
2026/05/21
手仕事カレンダー
2026/05/21
人気料理家のみなさんに、季節の食材と発酵食品を使った、とっておきの作りおきや保存食のレシピを伺う「手仕事カレンダー」企画。
今回、暮らしの和食家・和えもの職人の近藤ゆりこ(こんどうゆりこ)さんが教えてくれたのは、旬の野菜の風味を引き立たせる「酢味噌和え」「酒粕和え」。日持ちする和え衣2種を使った、「きゅうりと焼き麩、新しょうがの酢味噌和え」「そら豆の酒粕和え」のレシピをご紹介します。
近藤さんがこよなく愛する、和食と相性のいい日本酒。なかでも「和えものにとても合う!」という自然発酵の日本酒についても語ってくれました。
「私が和えものを作るのは、旬の野菜の食感や風味を味わうためです」
“和えもの職人”の近藤さんが作る「野菜の和えもの」は、これまでのイメージを一新する、やさしく豊かな味わい。まず、和え衣の塩けは最低限にするそう。
「野菜の風味を無くさないよう、和え衣に塩やしょうゆは加えません。その代わり、具材に薄口しょうゆをまぶして軽くぬぐったり絞ったりする『しょうゆ洗い』をすると、味のバランスがととのいます」
野菜の色を楽しむために、まとわせる和え衣の量も控えめに。和え方にも大切なコツがあります。
「しっかりと混ぜ合わせて味を均一にするのではなく、具材と和え衣、それぞれの存在を感じられるように、あえて混ぜすぎないようにします。最初の一口ではまだおぼろげでも、食べ終わったあとに口の中に残る具材と和え衣の風味を楽しめる、そんな旬の余韻を味わう一皿になったらと思います」

今回は、作りおきができるという「酢味噌和え」と「酒粕和え」の和え衣を教えてもらいました。酢味噌や酒粕の和え衣というと、風味が強いイメージもありますが、近藤さんが作る和え衣はまろやかで、野菜の風味をきちんと引き立てます。
その鍵となる食材は発酵調味料、なかでも西京味噌(低塩多麹で甘みのある、京都府味噌工業協同組合に承認された味噌蔵が造る白味噌)だと言います。
「西京味噌はほどよい旨みでクセがなく、和え衣の材料として最適です。酒粕和えにも、酒粕の独特な風味をやわらげるように、酒粕の倍量の西京味噌を加えています。また、淡い色なので、野菜の色がきれいに見せられるのもいいですね」
そのほか、酢味噌の和え衣には米酢を、酒粕の和え衣には酒粕、米酢、みりんを組み合わせます。「シンプルな構成だからこそ、香りと風味のいい発酵調味料を厳選して使っていただきたいです」

西京味噌などの発酵調味料で作る「酢味噌和え衣」と「酒粕和え衣」は、いずれも保存容器に入れて、
冷蔵で5日ほど保存ができる。

きゅうりと焼き麩、新しょうがの酢味噌和え

野菜の色を活かすため、しょうゆ洗いには薄口しょうゆを使う。酢は、まろやかな味わいのものが合う。
1.「酢味噌和え衣」を作る。ボウルに西京味噌と米酢を入れ、ゴムべらで混ぜ合わせる。

ボウルとゴムべらの代わりに、すり鉢とすりこぎを使ってもよい。
「『酢味噌和え衣』は、なすやトマト、パイナップルなどにもよく合います」
2.きゅうりは厚さ2㎜の輪切りにする。塩小さじ1/3(分量外)をまぶして5分ほどおき、水けをしっかりと絞る。ボウルに入れて薄口しょうゆをまぶし、5分ほどおいて水けを絞る。

きゅうりは斜め切りにすると水けが出やすいので、輪切りにする。2㎜ほどの厚さに切ると、
歯ごたえが楽しめる。水けを絞るときは両手で、つぶさないように注意して。
塩もみのあとはしっかりと、しょうゆ洗いのあとは軽く絞る。
4.ボウルに②、③を入れ、①の和え衣大さじ3を加えてゴムべらで和える。新しょうがを加えて軽く和え、5分ほどおく。


(左)和えるときは、和え衣を具材になじませるように、へらで「すくい上げては返す」を繰り返す。混ぜない。
(右)具材を和えてから5分おくことで、硬めにもどした焼き麩が和え衣の水分を吸い、絶妙な食感に。
盛りつけは菜箸とゴムべらを使って、具材をのせるように。
そら豆の酒粕和え

酒粕は常温に30分ほどおき、指で押すと軽く曲がる程度にやわらかくなったものを使う。
そら豆はさやから出し、できるだけ早めにゆでる。
1.「酒粕和え衣」を作る。すり鉢に酒粕とみりんを入れて5分ほどおき、なめらかになるまで練る。西京味噌を加えてよく混ぜ、米酢も加えてペースト状にする。


(左)酒粕とみりんは、すりこぎでつぶすように練る。ボウルとゴムべらでも可。
(右)西京味噌、米酢を加え、この程度のなめらかさになるまですり混ぜる。
「『酒粕和え衣』は、かぶやみょうがなどにも合い、梅肉を少し入れてもおいしいです」
2.そら豆は薄皮の黒い部分の反対側に5㎜ほどの切り込みを入れる。塩ひとつまみ(分量外)を入れた湯で、強めの中火で1分30秒ほどゆでる。ざるに上げ、粗熱がとれたら薄皮をむく。


(左)薄皮に切り込みを入れておくと、ゆでたあとに黒い部分をつまむだけで、きれいに取り出せる。
包丁の刃元を使うと、切り込みを入れやすい。
(右)強めの火加減で一気にゆでて、色鮮やかに。
3.ボウルに②を入れ、薄口しょうゆをまぶす。5分ほどおいたら、キッチンペーパーで軽く水けをおさえる。


(左)スプーンなどでやさしく、そら豆全体に薄口しょうゆをまぶす。
(右)しょうゆ洗いしたそら豆は、しょうゆを拭き取りすぎないように、キッチンペーパーで軽く押さえる程度に。
4.しょうゆを拭いたボウルに③を戻し入れ、①の和え衣大さじ3を加え、ゴムべらでさっと和え、5分ほどおく。


(左)和えるときはそら豆ごとすくい上げ、(右)返すようにして全体をなじませていく。
“暮らしの和食家”という肩書きのとおり、近藤さんが探求するのは、ふだんの食卓に並ぶような和食。その相棒は日本酒です。特に「唯一無二の酒蔵」として一目置くのが、千葉県香取郡にある寺田本家。余計な手を加えず、極力、自然な環境で醸造しています。
「一般的には麹菌は種麹屋さんのものを用いますが、寺田本家では稲穂に自然に付着した『稲麹』をもとに麹菌を採取し、自家培養しています。酵母は『蔵付き酵母』を使い、酒蔵にNGといわれる納豆を食べた人でも蔵見学が許されるなど、さまざまな菌を受け入れ、自然の働きにゆだねて発酵を促しています。
蒸した米と麹をすり合わせる『酛摺り(もとすり)』や、発酵中のもろみを混ぜる作業では、江戸時代から続く酒造り唄を蔵人さんたちが歌いながら仕込み、微生物と心を通わせながら発酵させています。だから、寺田本家のお酒を飲むと、不思議と元気が出るように感じるのです」
なかでも和えものに合うと、「純米90 香取」を紹介してくれました。

創業350年、寺田本家の「純米90 香取」。
「日本酒の精米歩合は5〜7割磨いた米を使うことが多いですが、こちらは1割だけ磨いた米を使っています。その分、酸味が強くなり、やや琥珀色ですが、とても自然な味わいで、体にすっとなじみます。おおらかだから、それぞれに個性のある発酵食品とも相性がいいんですよね」

「お燗(燗酒)にすると、お酒の香りがより際立って、和えものとよく合います」と近藤さん。
旬の野菜と和え衣を組み替えれば、幾とおりものおいしさに出合える「野菜の和えもの」。和え衣を作っておけば、風味豊かな初夏の野菜をあれこれ和えて楽しめます。季節の味わいを、食卓で味わってみてはいかがでしょうか。
暮らしの和食家・和えもの職人
暮らしの和食家・和えもの職人
味噌ソムリエなど発酵に関する資格を取得後、日本の伝統発酵調味料に魅せられ、基本調味料で作る家庭の和食、特に和えもののレシピを発信。小倉ヒラク氏が代表を務める「発酵デパートメント」などでのイベントも好評。季節の移ろいや発酵のゆらぎ、ケの美しさを感じるような家庭の和食を大事にしている。著書に『伝統発酵調味料の魅力』(文芸社)、『軽やかな和えもの』(東京図書出版)がある。