コーヒーと発酵

誰かの正解にとらわれるのではなく、
この店の「美味しい」に向かって
<Progress LIFE STYLE COFFEE>

2026/07/16

誰かの正解にとらわれるのではなく、 この店の「美味しい」に向かって <Progress LIFE STYLE COFFEE>
誰かの正解にとらわれるのではなく、 この店の「美味しい」に向かって <Progress LIFE STYLE COFFEE>

ホテルやレストラン、カフェなどが立ち並ぶ、広島市中区新天地に、Progress LIFE STYLE COFFEEはあります。オーナーであり、バリスタ兼ロースターの田中裕士さんがこの地に店を開いたのは2016年。“コーヒーが苦手だった”という田中さんが、バリスタとなり、カフェをオープンし、広島を代表するロースターのひとつとなるまでに、どのような出会いがあったのでしょうか。お話を伺いました。

50杯飲み歩き出会った
理想のエスプレッソ

「もともと飲食業界に入るきっかけは、バーテンダーになったことだったんです。でも、ある日、その店の系列店としてカフェをオープンすることになって。ちょっとお手伝いという形で、そのカフェに携わるようになりました」

オーナーであり、バリスタ兼ロースターの田中裕士さん。

ところが、当時の田中さんはコーヒーが飲めなかったそうです。

「こういう取材では『苦手だった』とお伝えするんですが、率直に言うと大嫌いというか…」と笑う田中さん。最初は配膳を手伝っていたそうですが、ドリンクづくりなど、徐々に仕事内容が広がっていく中で「コーヒーを提供しなくてはいけないのに、美味しいのか美味しくないのかが分からない…。ちゃんと知りたい」という思いが膨らみ、2泊3日コーヒーを飲み歩く旅に出ることに。

「当時はちょうどサードウェーブと呼ばれるコーヒーが流行り始めた頃。広島にはまだそういうコーヒーを扱う店があるのかどうかも分からなかったので、とにかく東京に行くことにしました」

そうして、東京にいた2泊3日の間に4050杯ものコーヒーを飲み歩いたそうです。

「そもそも負けず嫌いだっていうのがありますよね。僕が入ったことでお店の売上が下がるなんてことが起こるのは絶対に嫌だったし。逆に、『売上を上げてやるぞ』ぐらいの意気込みだったので(笑)」

帰りの新幹線では具合が悪くなるほどだったそうですが、このコーヒー飲み歩きの旅で運命的な一杯に出会います。

「とてもフルーティーで、今まで味わったことのない味わいのエスプレッソでした。衝撃でしたね」

苦手だったからこそ追求し続ける
誰にとっても美味しいコーヒー

理想の一杯を見つけた田中さんは、さらにコーヒーの探求を続け、別のカフェで“答え合わせをするようなつもり”で、約3年間働き、Progress LIFE STYLE COFFEEをオープン。お店として大切にしたのは、「飲みやすいコーヒー」であること。コーヒーが好きな人はもちろん、苦手な人も飲みやすいコーヒーを提供することを第一に掲げました。お店で提供するコーヒーの豆選びにも時間をかけたと言います。

「九州から北上するかたちで、コーヒー豆を卸してくれる店を訪ね歩きました。そして、今でもおつきあいのあるミルトンコーヒーロースタリーと出会ったんです」

この出会いにより、豆をブレンドしないシングルオリジンのことや、品質を徹底的に管理したスペシャルティコーヒーについてなど、さらに多くのことを学びました。その結果、「もっとコーヒー全部のことに携わって、自分にとってのコーヒーを表現したくなった」と田中さん。焙煎についても学び始めます。

コーヒーとケーキや焼き菓子などをゆっくりといただくことができる2階席。

「最初は“シェアロースター”といって、自分がほしいと思っていた焙煎機を持っているお店にお願いして夜な夜な焙煎を試させてもらったり、知り合いのロースターに話を聞かせてもらったり。いろいろと助けてもらいながらのスタートでした」

そうして少しずつ自ら焙煎した豆を店に並べ、ロースターとしての道を歩み始めた田中さんにとって、さらに大きな出来事となったのが、コーヒー豆の産地を訪れたことでした。

「ミルトンコーヒーロースタリーは、20年前から毎年ニカラグアやエルサルバトルに直接豆を買い付けに行かれています。そこに同行させてもらったんです。
そこで品質の良い豆とはどういう豆なのか。コーヒー豆のランクはどのように決まるのか。農園はどれほどシビアな管理をして豆をつくっているのかを目の当たりにしました。現地を見て、その場で味を確認してこそ、本当の意味で“分かる”ことがあるんだなと思いました」

トレーサビリティを大切にする田中さん。毎年、産地に赴き、生産者と直接向き合いながらコーヒー豆を買い付ける。

Progress LIFE STYLE COFFEEをオープンして10年。お話を伺っていると、コーヒーについてひとつひとつ学び、体験しながら月日を重ねてこられたことがよく分かります。「もともとお好きでなかったコーヒーを、そこまで追求できたのはなぜか?」と質問してみると、田中さんは「もちろん毎日飲んで研鑽を積むことで面白くなっていったということもありますが、苦手だったからこそコーヒーを繊細に感じ、だからこそ理想を求めることができたのかもしれません」と、これまでを振り返ります。

「たとえば、お酒が好きな人は、グラスに1%の酎ハイが入っていても『あんなのジュースだよ』と言ったりします。でも、お酒も苦手な僕は、0.01%のお酒も敏感に感じる。それと同じで、コーヒーが苦手だったからこそ、コーヒーが苦手な人が苦手だと感じる要素を敏感に感じ取ることができるし、コーヒーが苦手な人も美味しいと思うコーヒーを提供したいと思い続けてこられたのだと思います」

さらに、田中さんは続けます。

「僕は、これまで何かにハマった経験が少ないんですが、コーヒーはハマってしまった数少ないもののひとつです。コーヒーには、正解がありそうでありません。深く煎ろうが、浅く煎ろうが、たとえ誰かがこのコーヒーは苦手だと言おうが、『このコーヒーがこの店のコーヒーの味だ』と言い切ることができる。枠にとらわれる必要はないし、誰かの基準や正解に合わせる必要はない。僕は、僕の正解に向かって走っていく。そこがいいんです」

試作を繰り返し実現した
米糀ミルクラテ

もうひとつ、田中さんが力をいれていることに、広島のコーヒーをもっと知ってもらうための取り組みがあります。

「広島のラテアートの大会を開いたり、1年に1回、人気のロースターが集うイベント『GOOD LIFE GOOD COFFEE FAIR』を主宰したりしています。『GOOD LIFE GOOD COFFEE FAIR』は今年で5回目。今回は、広島のほかに、山口、福岡のロースターも参加してくれました。首都圏や関西のロースターはメディアなどの力もあり、目に留まる機会が多いです。でも、広島には古くから喫茶店文化が根付いていることもあり、個性豊かなロースターが多いにも関わらず、そのことはあまり知られていません。ですから、こうしたイベントを通して、広島のコーヒー文化を多くの人に発信したいんです」

こうしたイベントは、これまで横のつながりがなかった県内のロースター同士が交流するきっかけにもなっています。田中さんとKOJI BARISTA EDITIONとの出会いも、こうしたイベントがきっかけでした。

外国人観光客にも人気だという、KOJI BARISTA EDITIONを使ったラテ。
「糀(KOJI)」を知っている外国人も増えているという。

「知人のロースターの紹介で『KOJI BARISTA EDITION』のことを知りました。動物性の食品をとらない人や、アレルギーのある人などの選択肢としてとてもいいなと思っています。うちでは、カフェラテや抹茶ラテなど、ラテに用いる牛乳の代わりに、KOJI BARISTA EDITIONを選択できるようにしています。店の周辺はホテルも多く、外国人観光客もよく訪れるため、そういう人にもとても人気がありますね」

KOJI BARISTA EDITIONを購入することもできる。

そういう田中さんですが、実は甘酒のような発酵食品はそれほど得意でないとのこと。しかし、だからこそKOJI BARISTA EDITIONを用いたラテを、美味しく飲みたい、みんなに美味しいと思ってほしいと考えました。自分のような人にぴったりのバランスがあるはずだと考え、試作を繰り返したそうです。

そうしてたどり着いたのが、通常のラテに用いる豆よりもさらに深煎りの豆を用いること。そして、エスプレッソとKOJI BARISTA EDITIONを、一緒にスチームするという方法でした。

「KOJI BARISTA EDITIONだけをスチームしてラテアートをするのも魅力的だったのですが、エスプレッソと一緒に
スチームすることで、この美味しさが実現できた」と田中さん。

「豆の選択、KOJI BARISTA EDITIONとエスプレッソの割合など、通常のラテとは違うバランスを見つけ出し、さらにそれらを一緒にスチームすることで、僕自身、えっと驚くような美味しさが実現できたと思っています」

その言葉どおり、一口いただいたラテは、柔らかい甘さとコーヒーの香りやコクが心地よく重なり合う、ふくよかな味わいが印象的です。「訪れた誰もが美味しいと感じるコーヒーを」田中さんのこの思いは、提供されるメニューすべてに、繊細なバランスで、確かに息づいているのだと、この一杯からも感じることができました。

ココアのようなやさしい風味があるProgress LIFE STYLE COFFEEの糀ミルクラテ。

「『今までコーヒーを飲めなかったけれど、うちのコーヒーに出会ってから美味しく飲めるようになり、今では自分でコーヒーを淹れることを楽しんでいる』と言ってくださるお客様もいます。僕自身が目指していたことなので、こう言ってもらえるのは本当にありがたいですね」と田中さん。「これからも、農園の皆さんが出してほしいと思う味であり、お客様にとって飲みやすい美味しいコーヒーを、Progress LIFE STYLE COFFEEらしく提供し続けていきたいです」と笑顔で話してくれました。

Progress LIFE STYLE COFFEE

Progress LIFE STYLE COFFEE

住所:
〒730-0034 広島県広島市中区新天地1−15
TEL:
082-244-0170
営業時間:
12:00~21:00(月〜木曜日)
  12:00~20:00(金〜日曜日)
URL:
http://www.progresscoffees.com

Instagram:https://www.instagram.com/progresslifestylecoffee

オンラインショップ:https://stylecoffee.official.ec

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