手仕事カレンダー
Vol.23青唐辛子×発酵で夏の食卓を元気に!
真藤舞衣子さんの「泡辣椒」(パオラージャオ)
2026/07/23
手仕事カレンダー
2026/07/23
暑い季節は、無性に辛いものが食べたくなりませんか?人気料理家のみなさんに、季節の食材や発酵食品を使った、とっておきの作りおきや保存食のレシピを伺う「手仕事カレンダー」企画。
辛いものが恋しくなる夏に、料理家・発酵研究家の真藤舞衣子(しんどうまいこ)さんが教えてくれたのが、旬の青唐辛子を乳酸発酵させた「泡辣椒(パオラージャオ)」です。発酵によって青唐辛子の辛みが少しマイルドになり、さわやかな酸味と深い旨みが加わって、クセになるおいしさに仕上がります。さまざまな料理への活用度も高く、今回はパスタの定番「ペペロンチーノ」への使い道も教えてもらいました。
真藤さんが幼いころから親しみ、今も愛飲しているという自作の発酵飲料「コンブチャ」も見せてもらいました。
夏の時期に店頭で見かける、生の青唐辛子。鮮やかな緑色が元気をくれ、赤唐辛子よりも穏やかな辛みとフレッシュさで、料理に取り入れたくなります。とはいえ買ったものの、使いきれずに余らせたという人も多いのでは?
「私もそうでした。生の野菜だと、日持ちしなくて……。食材を無駄にしたくないから、あれこれ考えているうちに思い出したのが、唐辛子を乳酸発酵させた『泡辣椒』でした。中国などアジアのいろいろな国で食べて、おいしかったんですよね。保存性が高くて漬けると半年はもつので、旬のものをゆっくりと楽しめます」
発酵に詳しく、野菜を乳酸発酵させた“発酵野菜”の酸味や旨みを料理に活用している真藤さん。今では夏に欠かせない保存食となったそうです。

発酵ブームでさまざまな発酵食品や保存食を見かけますが、「なんでも発酵させればいいというものじゃないですよね。食材がよりおいしくなったり、体により良いものになったりするから、発酵食品や保存食を作る意味があるのだと思います」と真藤さん。
「泡辣椒」は、青唐辛子の風味をさらに深めておいしくしたもの。「ぜひ作ってみてほしい」と言います。
「発酵で酸味や旨みが生まれて、そのまま使うよりも辛さはちょっと穏やか。料理に使うと、辛さだけでなく、奥行きのある味わいが生まれます。食材というよりも、調味料的な存在ですね。あると、幅広く活用できますよ」


水と塩の分量は、瓶(または保存容器)の大きさに合わせて分量を決めるとよい。
1.鍋に湯を沸かし、青唐辛子を入れて2秒ゆでる。ざるに上げてしっかりと水けをきる。

青唐辛子をゆでるのは「殺菌」のため。食感が悪くなるので、ほんの少し湯につける程度に。
2.粗熱がとれたら、青唐辛子のへたを切り落とし、清潔にした瓶に入れる。


へたを落としたほうが省スペースで漬けられ、瓶にも入れやすい。
3.使用する水の重さを量り、水の重量の3%の塩を加え、小さな鍋に入れて火にかけ、塩をよく溶かし、粗熱をとる。

今回は水300㎖に、塩9g。一度加熱したほうが、塩がしっかり溶ける。
4.②の瓶に③の塩水を注ぎ入れ、酒を加え、ふたを閉める。


(左)塩水は乳酸発酵のもと。(右)酒は消毒のために加える。本場・四川では「白酒(バイジュウ)」を使う。
5.毎日1回、瓶を振ってなじませ、常温で、夏場は3〜4日、冬場は1週間を目安に漬ける。酸味が出てきたらでき上がり。冷蔵保存し、半年ほど保存可能。


(左)産膜酵母(白い膜のような酵母のこと)が出やすいので、容器を1日1回は振って、
青唐辛子と漬け汁をなじませる。産膜酵母が出たら、塩水を取り換えて。(右)乳酸発酵が進むと、
漬け汁が乳化してくる。
本場の中国でも、煮物や炒め物、蒸し物などで幅広く使われているだけあって、泡辣椒はさまざまな料理に活躍します。
「肉の炒め物だけでなく、魚の煮物などにもすごく合いますね。また、中華のイメージもありますが、辛さと旨み、酸味は洋風の料理もおいしくしてくれます。私は、ペペロンチーノのパスタにも使います。チョップドサラダなどの和え物に使っても、辛みが直接的ではないから合わせやすいですよ」

トマトとバジルのペペロンチーノ。2人分で泡辣椒1本が適度な辛さだが、お好みで。
やわらかいので、こまかく刻むと、存在がほぼ消えてしまう。
旬を追いかけて、季節の発酵食品や保存食を作る、真藤さん。なかでも始めてから10年以上は経つという、「コンブチャ(KOMBUCHA)」を見せてもらいました。これは昆布茶とは別物です。
「料理上手だった祖母が昔から作っていたもので、小さいころから飲んでいたので、親しみがあるんです。自分でも作り続けています」
紅茶に菌のえさとなる砂糖を加えたものをベースに、「スコビー(SCOBY)」と呼ばれる酢酸菌と酵母からなる菌塊を入れ、常温で発酵させます。「スコビー」がキノコのように見えることから、1970年代に日本で流行ったときには「紅茶キノコ」とも呼ばれました。健康志向の高い海外でもブームが起こり、もはや定番となっているそう。
「コンブチャは、酢以外で酢酸菌がたっぷりとれる、数少ない食品の一つでもあります。発酵飲料なので、体を元気にしてくれますね」

オーガニック紅茶を使ったベースで作る、真藤さんの「コンブチャ」。
「発酵が進むうちにスコビーは大きくなって、何度も友人に株分けしています。容器を洗うなど
メンテナンスしながら、ずっと続けています」
体にいいのはもちろんのこと、その味わいも魅力。フルーティな香りと酢酸菌のさわやかな酸味に、ほのかな甘さと、すっきりとした後味。
「夏になると、朝に飲みたくなります。朝の目覚めがシャキッとしますね。飲むときは、水で好みの濃度に薄めて、ちょっと氷を浮かべて飲むことが多いです」

氷とミントの葉を浮かべると、いかにも涼しげ。
今回は、旬の青唐辛子を発酵の力でさらにおいしくした、「泡辣椒」を紹介しました。辛さと酸味、旨みが調和した味わいを料理に活用して、夏ごはんを満喫しましょう。
料理家・発酵研究家
料理家・発酵研究家
会社員を経て、京都の大徳寺内塔頭にて1年間、茶道を学ぶ。フランスに料理留学後、菓子店での勤務を経て、独立。発酵への造詣が深く、料理教室を主宰するほか、雑誌や書籍、レシピや商品の開発などで活躍中。著書に『別冊天然生活 梅仕事と四季の保存食』(扶桑社)、『つくりおき発酵野菜のアレンジごはん』(主婦と生活社)などがある。