発酵を探しに沖縄へ

微生物が育む、心と体が整う場所
沖縄発の発酵リゾートホテルが届ける「暮らしの発酵」

2026/10/08

微生物が育む、心と体が整う場所沖縄発の発酵リゾートホテルが届ける「暮らしの発酵」
微生物が育む、心と体が整う場所沖縄発の発酵リゾートホテルが届ける「暮らしの発酵」

沖縄本島中部の高台に佇む、発酵をテーマにしたリゾートホテル。ここを訪れると、どこか空気がやわらかく、深く呼吸したくなるような心地よさを感じます。その理由は、目に見えない“小さな存在”。このホテルの環境づくりの根底にあるのは、沖縄発の微生物技術「EM(Effective Microorganisms)」。乳酸菌、酵母、光合成細菌など、自然界に存在する有用な微生物の集合体です。

ホテルの魅力を伝えてくださったEM WELLNESS事業部の下條龍哉さんと巻島宏章さん。

「EMは、善玉菌のチームだと考えていただくと分かりやすいと思います。乳酸菌や酵母だけでなく、土壌に存在する光合成細菌が重要な役割を果たしています」

そう話すのは、EM WELLNESS推進室の下條龍哉(しもじょう たつき)さん。

光合成細菌は、太古の地球から存在するといわれる微生物。農業においては、稲作など土壌環境を整える重要な役割を担ってきました。EMはもともと農業技術として誕生し、その可能性は次第に広がりました。微生物がつくり出す成分や働きによって、畜産、水環境、健康、住環境など、さまざまな分野で活用されるようになったのです。その技術をホテル運営に取り入れたのには、ある大きな理由がありました。

廃墟から再生したホテル
年をかけて微生物が育てた空間

東シナ海と太平洋を一望できる北中城丘の上にあるホテル。沖縄らしい風景が広がっている。

現在のホテルはもともと、戦後の沖縄に誕生した歴史あるホテル。かつて廃墟となっていた建物でした。アメリカの建築基準法で建てられた重厚な建築は、当時の沖縄では象徴的な存在でした。高台からは米軍基地を望み、海外からの要人や将校たちも利用したといいます。しかし時代の変化とともに閉館。約13年間、使われない状態が続き「このホテルをEMで再生できないか」と相談を受けたのが、EM技術の開発者である琉球大学農学博士・比嘉照夫氏でした。そこから始まった、微生物によるホテル再生への挑戦。薬剤や化学的な消臭剤に頼るのではなく、EMを活用しながら建物を整えていく。壁には珪藻土を使用し、客室の清掃や消臭にもEMを採用しました。

「発酵蔵と同じように、この場所も微生物の積み重ねによって育ってきた空間なんです。置いてある牛乳が、もしかしたらヨーグルトになるのではないかと思えるような、そんな“発酵する空間”を目指しています。現在、サステナブルや循環型の考え方は広く知られるようになりましたが、このホテルが取り組みを始めたのは20年以上前のこと。建物を解体して新しく建て直すのではなく、残された価値を活かしながら再生する――それは、EMの思想にも通じています。壊して新しくするのではなく、あるものを活かしながら再生していく。それが私たちの大切にしている考え方です」

さらに、開業当初から禁煙にも取り組んだ。当時はホテルや交通機関でも喫煙が当たり前だった時代。社員旅行の団体客から「喫煙できるようにしてほしい」と要望されても、方針を変えなかったといいます。目指していたのは、心身ともに健康になる滞在でした。

発酵するホテルをつくるのは、人の想い
暮らしの発酵を届ける総支配人の挑戦

ホテルを率いる総支配人の與儀 努(よぎ つとむ)さんは、長年この場所と向き合いながら、その価値を磨き続けてきました。

「私たちのホテルは、発酵の力を生かした食や、おもてなしの空間を体感していただく場所です。そして、ここで感じたことを日々の暮らしに戻った時にも活かしていただきたいと思っています。目指しているのは、滞在中だけ心地よい場所ではありません。食、空気、水、環境――ホテルでの体験を通じて、日常の暮らしや地球環境について考えるきっかけをつくること。その思いから掲げたのが、『暮らしの発酵』というブランドでした」

ビーチもプールもないホテル
だからこそ、磨き上げたもの

「沖縄には数多くのリゾートホテルが存在します。しかし、このホテルには一般的なリゾートホテルが持つビーチやプールはありません。その中で、私たちが選ばれるためには何ができるのかを考え続けました。そこで力を注いだのが、食と空間へのこだわりでした。特に大きく変化したのが料理。発酵をテーマにしたホテルとして、単に名前だけでは終わらせないために、調味料づくりから見直し、白砂糖を使わず、甘酒や麹の甘みを活用。塩麹、醤油麹なども手づくりすることにしました」

職人たちの技術や経験を大切にしながら、新しい発酵料理へ挑戦していく。その道のりは決して簡単ではなかったといいます。

「ホテルとして全国からお客様を迎える以上、名前だけの取り組みではいけない。期待して来てくださる方に、本当に納得していただけるものにしたいと思っています」

スタッフが健康であることが、
最高のおもてなし

こだわりは料理だけではない。客室のリネン類にも、発酵の考え方を取り入れています。通常、ホテル業界では大量のリネンを効率的に洗濯するため、化学的な洗剤や漂白剤を使用するケースも多いが、当ホテルでは発酵液を使った洗濯を実践しています。

壁と天井には、天然素材の「EM珪藻土」を使用。空気感が心地よく感じられる。

「化学物質に敏感な方から、ここは天国のようですと言っていただくことがあります。私たちが気づいていなかった価値を、お客様から教えていただきました。目に見えるサービスだけでなく、見えない部分への配慮。それこそが、このホテルならではのおもてなしにつながっています。ホテルが大切にしているのは、お客様だけの健康ではない。働くスタッフ自身が心身ともに健やかであることでもあります。働く職員にも幸せな人生を送ってほしいと心から願っています。そのためには、心も体も健康であることが大切です」

健康なスタッフが働くことで、自然と温かいサービスが生まれる。総支配人が何より大切にしているのは「人」。

「発酵の技術も、このホテルの大きな特徴です。でも、それを伝えるのは最終的には人です。私は、人で選ばれるホテルでありたいと思っています」

総支配人は、発酵という言葉を食だけのものとは考えていません。

「例えば大豆が腐ったら何になりますか、と聞くと納豆と答える人がいます。でも、腐敗と発酵は違います。発酵とは、もともとあるものが、より良いものへ変化していくことです。それは、人の生き方にも通じます。経験を重ね、学び、周囲との関わりの中で、人もまた成長し、人の考え方や生き方も、発酵することで、より良いものになっていく。そんな思いも『暮らしの発酵』には込めています」

最後に総支配人が仕事で大切にしていることを尋ねると、答えはシンプルでした。

「諦めないことです。思うように進まないことがあっても、「どうしたらできるか」を考え続けます。まだできていないこともあります。でも、それはホテルの伸びしろでもあります。その可能性を楽しみながら、より良いホテルにしていきたいと思っています」

築53年という歴史を持つこのホテル。かつて沖縄のリゾート文化を築いた場所は、今、発酵という新しい価値をまといながら未来へ歩み続けています。

「ここは沖縄のリゾートホテルの歴史そのものだと思っています。これまで関わってきた多くの人の思いを大切にしながら、これからも最高のおもてなしを届けていきたいです」

発酵とは、時間をかけて価値を育てること。

人と微生物、過去と未来をつなぐこのホテルは、今日も静かに発酵を続けています。

EMウェルネス 暮らしの発酵ライフスタイルリゾート

EMウェルネス 暮らしの発酵ライフスタイルリゾート

住所:
沖縄県中頭郡北中城村喜舎場1478
TEL:
098-935-1500

アクセス:那覇空港より沖縄自動車道経由で約40分
(那覇IC→北中城ICから約6分)
バスをご利用の方はホームページを確認ください。
駐車場:無料(約180台完備)
https://kurashinohakko.jp/

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