手仕事カレンダー
Vol.25ちづかみゆきさんと秋冬の食卓をランクアップ!
八丁味噌で作る「きのこのデミグラスソース風」
2026/10/15
手仕事カレンダー
2026/10/15
人気料理家のみなさんに、季節の食材や発酵食品を使った、とっておきの作りおきや保存食のレシピを教わる「手仕事カレンダー」企画。今回は、手軽に作れるのに本格的な味わいが楽しめる、「きのこのデミグラスソース風」です。
「デミグラスソースが“簡単に”手作りできるの?」と驚く人も多いはず。その秘訣は、八丁味噌を使うこと! シンプルな材料で作れるレシピと秋冬にぴったりのアレンジを、料理家・国際中医薬膳師でもあるちづかみゆきさんに教えてもらいました。
ちづかさんが洋食に積極的に使っているという「鮎魚醤」と、その魅力的な使い方も紹介します。

激務で体調をくずしたことがきっかけで、薬膳を学び始めたという、ちづかさん。養生を実践すると、治りにくいと思っていた咳喘息が止まり、吹き出物も出なくなって、食の力のすごさを知ったといいます。
同時に、「腸の働きにいいものをとり入れる」ことも意識したそうです。
「腸内環境を整える発酵食品は、とり入れる機会を少しでも増やそうと心がけてきました。夜は和食、朝は洋食中心なので、夜に味噌汁、朝にヨーグルトを食べています。たとえ外食が続いても、毎日何かしらの発酵食品をとるようにしています。また、食品添加物は腸内環境を乱すといわれていますが、発酵食品のうま味を活かせば、市販のうま味調味料などに頼ることなく、おいしく料理が作れるというのも、いいところですね」

きのこは複数の種類を加えて、たっぷりと。「もちろん、このまま副菜として食べるのも、おすすめです」
「味噌は、味噌汁だけに使うのはもったいないので、あえて洋風の料理にも使っています」と、ちづかさん。濃厚なコクとうま味のある八丁味噌は、よく使う味噌の一つ。
八丁味噌とは、蒸し大豆を豆麹にし、塩を加えて仕込んだ、愛知県発祥の赤味噌の一種。米麹の米味噌や麦麹の麦味噌とはまた違う、濃厚なうま味と適度な酸味、苦味などが魅力です。
「酸味のあるトマトと組み合わせると、『デミグラスソース』のような深い味わいになるんです。秋においしいきのこをたっぷりと加え、仕上げは基本的な調味料だけ。八丁味噌が加わることで自然なとろみもつき、小麦粉などを加える必要がありません。油も、きのこを炒めるために少量使っているだけで、市販のものよりもヘルシーですよ」
空気の乾燥や夏の疲れが気になる秋に、薬膳では「肺」を潤し、「気」(エネルギーの源)を補って巡らせ、冬に向けて風邪をひかないように心がけます。
「味噌には胃腸の働きを高めて、『気』を補う作用があります。同じく『気』を補い、食物繊維が豊富で、秋に傷めやすい『肺』に働きかけるエリンギ、しめじを加えていますので、季節的にもおすすめです」


ひとつまみのきび砂糖は、「八丁味噌とトマトピューレの酸味を穏やかにするために加えます」と、ちづかさん。
1. エリンギは縦半分に切ってから5mm幅の斜め切りにする。しめじは石づきを落とし、食べやすくほぐす。


エリンギはしめじの大きさと同じくらいに切りそろえる。
2. Aを混ぜ合わせる。

八丁味噌は水分量が少なくてかたいので、水でゆるめてから酒を加えると混ざりやすい。
3.フライパンにごま油を中火で熱し、エリンギとしめじを入れ、軽く色がつくまで焼きつける。


きのこ全体に油が回ったら、へらなどで触らずに、軽く焼き色がつくまで待つ。
「何度も動かすと水分が出て、食感が悪くなります」
4.③がしんなりしたらトマトピューレとA(②)を加えて混ぜる。煮立ったら軽く煮て、Bを加えて味をととのえる。


トマトピューレとAを加えたら、ふつふつとさせる。とろみが少しついてから、Bを加える。
5.火からおろし、好みでイタリアンパセリを加えて混ぜる。

保存する場合は粗熱をとり、ファスナーつきの保存袋などに入れ、冷蔵なら3〜4日、冷凍なら1カ月ほどを
目安に食べきる。

クミンで炒めたにんじんのスパイシーさと、デミグラスソースがよく合う。
「きのこのデミグラスソース風」はハンバーグやポークソテー、オムレツなどのソースとしてはもちろん、炒めた牛肉や豚肉、玉ねぎと一緒に煮込めばハヤシライスにも。さまざまな洋食に大活躍します。
秋が深まる時期には、薬膳でおすすめの食材を使った副菜も!
「にんじんは胃腸の働きを整え、『血』(全身に栄養を与える液体)や『津液』(体を潤す、血以外の液体)を補う作用があり、乾きやすいとされる秋の体にとり入れたい食材です。クミンをプラスすることで、肌寒くなって滞りがちな『気』の巡りをサポートします」

原材料は鮎と塩のみ。料理の幅が広がる、万能な隠し味。
「市販の発酵食品をあれこれ試すのが楽しい」というちづかさん。特にお気に入りなのが、「まるはらの鮎魚醤」です。
「たまたま店頭で『香りがやさしく、海外シェフの評価も高い』という紹介を見て、試してみました。確かにナンプラーやニョクマムよりもクセがなく、エスニックなど料理を限定せずに、味のニュアンスを加えられて使いやすいです。イタリア料理のアンチョビ代わりに使うと、絶品です」
パスタや炒め物など、アンチョビを使う料理にはたいてい合うそうです。いちばんのおすすめは、オリーブオイルでパン粉を炒めて、鮎魚醤を少し加えた“カリカリパン粉”。
「野菜や白身魚の蒸し料理やオイルベースのパスタにかけると、サクサクと香ばしくて箸が止まりません」

蒸した(レンチン加熱でもOK)さつまいもやかぼちゃ、いんげんに、鮎魚醤のカリカリパン粉をのせて。
「仕上げに黒こしょうを振ると、味が引き締まります」
今回は、コクのある料理が恋しくなる秋冬に活躍すること間違いなしの、八丁味噌で手軽に作れる「きのこのデミグラスソース風」を紹介しました。保存もできて、パッと使えて便利なので、お試しください。
料理家・国際中医薬膳師
料理家・国際中医薬膳師
国立北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)にて薬膳を学び、国際中医薬膳師の資格を取得。上海、ボストンで活動し、帰国後に料理教室「meixue(メイシュエ)」を主宰。ヘルシーな料理レシピに定評がある。著書に『暮らしの図鑑 薬膳』、『大人の心と体を整える 腸活薬膳のはじめ方』(ともに翔泳社)がある。