発酵を訪ねる

「大阪・関西万博」で世界に発酵食の魅力を発信した
話題のレストランが「醗酵食堂 Hasshoku」として
オープン

2026/05/28

「大阪・関西万博」で世界に発酵食の魅力を発信した話題のレストランが「醗酵食堂 Hasshoku」としてオープン
「大阪・関西万博」で世界に発酵食の魅力を発信した話題のレストランが「醗酵食堂 Hasshoku」としてオープン

“日本の発酵食文化を世界に”をテーマに、「大阪・関西万博」会期中に国内外の多くのお客さんで賑わっていたレストラン「醗酵食堂 Hasshoku」が、2026313日に常設店舗としてオープンしました。お店を手掛けるのは、大阪・枚方市に本社を置くフードサービス企業・株式会社初亀。フードコートや公園・公共施設などでフードサービスを展開する同社が、なぜ“発酵”をテーマにしたレストランを手掛けることになったのか。代表取締役社長・亀岡健太郎(かめおかけんたろう)さんにお話を伺いました。

会社のはじまりは「大阪万博」でのレストラン運営から
「大阪・関西万博」への出店で出会った、
日本の“発酵”の魅力

1970年に開催された『大阪万博』で、当時個人商店を営んでいた祖父が出店の権利を得て、大学生だった父と共にうどんやかき氷などを販売し、大繁盛しました。その成功をきっかけに、1971年に法人登記して『株式会社初亀』として会社がスタート。以来、『つくば科学博』や『大阪花博』、『愛知万博』など、国内で開催された博覧会にはほとんど出店してきました。父は2021年に他界してしまいましたが、2025年開催の『大阪・関西万博』には出店したいと応募したんです」

「大阪・関西万博」のメインテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。持続可能な社会をどう築いていくかが問われるなか、飲食店の出店にもテーマに沿ったコンセプトが求められました。

「公募に応募する際は、博覧会の趣旨に沿ってどんな内容にするかを事前に決める必要があります。“この食べ物が美味しいから食べてください”ではなく、未来や命といったテーマに沿うことが求められる。そこで“発酵”にたどり着きました。微生物が生きて活動した結果、栄養価が高まったり味が良くなる。そこに博覧会が掲げるテーマである“命の繋がり”を感じ、レストランのコンセプトに決めました」

老舗のフードサービス企業だからこそできた、
“発酵”が紡ぐ、人と人との繋がり

株式会社初亀が“発酵”をテーマにした飲食店を展開するのは今回が初めて。

「地方に足を運ぶ機会が多く、酒や味噌、醤油など伝統食品の製造者さんたちと話す機会もあるんです。そこには、継続が難しい事業を守っている方も多い。私たちの飲食産業は古くても50年ほどの歴史ですが、味噌や醤油、酒の世界は歴史が長く、奥が深い。博覧会で“発酵”をテーマにすれば、そうした食品製造業の方たちとも一緒に仕事ができると思ったんです」

発酵食品を使ったメニュー開発は、国内外の来場者が訪れる博覧会ならではの難しさもありました。

「味噌や醤油を使うと和食のイメージがありますが、今回は誰もが馴染みやすい洋食にしました。ハンバーグやパスタ、カレーに醤油や味噌、麹を使うことで面白みを感じてもらえると思ったんです。メニュー構成にはさほど苦労はしなかったんですが、全国には美味しい醤油や味噌を作る醸造所が山ほどあるので、どの発酵食品を使うかは悩みましたね。結局は“作り手を知っているかどうか”。信用ができて、応援したいと思える醸造所さんの食品を選びました」

その出会いの中のひとつが、茨城県土浦にある柴沼醤油醸造。

「商工会議所青年部を通じて、ご縁がありました。柴沼醤油醸造は“木桶職人復活プロジェクト”に参加していて、木桶仕込みの醤油を守る取り組みをされています。木桶仕込みで醤油を作っている醸造所は国内のシェア約1%という、今の日本では希少な製法で、醸造所だけでなく木桶職人そのものも減少している。そこで小豆島にあるヤマロク醤油さんを中心に、醤油蔵の人間が木桶を作れるようになろうというプロジェクトが立ち上がったんです。その方たちと知り合ったことで、『万博でも木桶を飾ってほしい』と、『大阪・関西万博』で『醗酵食堂 Hasshoku』のシンボルとなる木桶を提供していただきました」

「大阪・関西万博」で使われていた木桶は、梅田の新店舗でも“万博レガシー”として活かされています。

「店内で使われていた木桶は“タガ”など、本物と同じ構造をしています。『大阪・関西万博』での営業参加の募集要項には、レガシーを残すことやリサイクルについての要望も含まれていました。前回の『大阪万博』ではフライドチキンやコーラ、ハンバーガーなどが流行しましたが、今回の博覧会でもそういったものを期待されていたところもあるかと思います。でも発酵食品は博覧会をきっかけに新しく広まるものではもちろんありません。でも発酵食品は博覧会をきっかけに新しく広まるものではもちろんありません。弊社は、この業態を博覧会から引き継ぎ、残していこうという思いで、今回の『醗酵食堂 Hasshoku』をオープンすることにしたんです」

誰でも気軽に楽しめる洋食×発酵メニューで
普段使いできるレストランへ

梅田の新店舗では、「HASSHOKU醤油糀バーガー」(1500円)をはじめ、“アフター万博”を楽しめるメニューが並びます。

博覧会当時から人気のあった『HASSHOKU醤油糀バーガー』に加え、新たにランチメニューとして『淡路牛と淡路豚のハンバーグ定食』(1700円~)や『本日の魚定食』などの定食メニューも展開しています。梅田エリアはビジネス街が近いこともあり、世代を問わず人気です。ハンバーグや唐揚げなど博覧会から展開しているものから、新たに考案したレシピまで『日本の発酵食文化を繋いでいく』という、当初のコンセプトと変わらず、醤油や麹などの発酵食品を使った料理ばかりです。日本人は元々発酵食品に慣れ親しんでいて、味噌や醤油を素材に取りいれるのは難しいことではないので、気軽に楽しんでもらえるかと思います」

関西では“アフター万博”の盛り上がりで、“万博レガシー”を感じられる飲食店が人気を集めていますが、オープンから数ヶ月経ったいまでは「醗酵食堂 Hasshoku」は街に馴染んだ飲食店のひとつとなっているようです。

「当初は“アフター万博”を楽しみたいという方が多かったんですが、今ではランチやディナーとして普段使いしていただくことが増えました。発酵と聞くとヘルシーなイメージがありますが、当店のメニューはボリュームもしっかりあり、男性にも満足いただいています。淡路牛や淡路豚、兵庫・丹波産の野菜など、食材にもこだわっています。メニューにはすべての産地を記載しているわけではありませんが、お客様から尋ねられた際にはきちんとお答えできる食材を使っていきたいと考えています」

ランチタイムは定食メニューを中心に。夜はお酒とともに楽しめる一品料理を中心に展開。デザートのほか、ドリンクも日本酒や甘酒を使ったものなど、こだわりの銘柄が揃っています。

「日本酒も発酵と深い関わりがあります。伊丹や灘など、上方の三大酒処である酒造メーカーの日本酒を揃えています。今後は期間限定で珍しい銘柄も揃えていければと考えています。デザートの『甘酒プリン』は博覧会でも人気のメニューで、糀みつの優しい甘さが美味しいと喜ばれています」

まだまだ広がる「醗酵食堂 Hasshoku」の夢
次の博覧会でも“発酵”を繋げていきたい

店内では、メニューに使用している醤油や味噌などの販売も行っています。また、「醗酵食堂 Hasshoku」の今後の展開にも期待が高まっています。

2027年に神奈川・横浜で開催される『GREEN×EXPO 2027』にも出店参加するべく努力中です。大阪店では今後、醸造所の方を招いたセミナーなども開催していければと考えています。店内では醤油のほか、奈良漬けや田楽みそなど、全国各地の発酵食品も販売しています。お茶を楽しみながら、作り手の話を聞き、発酵の魅力を知ってもらえればと思っています」

「醗酵食堂 Hasshoku」の立ち上げ以来、亀岡さん自身も“発酵の面白さ”に興味が尽きないそうです。

「今回の博覧会を機に“発酵”に目を向けると、面白い企業がたくさんあることに気付きましたし、『発酵食品を扱った飲食店をやります!』というと、いろんな情報が集まってくるんですよ。例えば群馬にある『職人醤油』さんは、日本各地の醤油を小瓶で販売しています。日本全国の醤油蔵を何百軒と巡り、作り手の思いが伝わる醤油100種類ほどを少量ずつ楽しめる小瓶で販売しています。実は当店で販売している醤油も『職人醤油』の商品です。当たり前ですが、醸造所が変わるとどれも味が全く違ってくる。たまり醤油や薄口でも、『僕が知ってる醤油じゃない!』という味に出会うんです。定食で提供している豚汁に使っている味噌は、鹿児島の『ヒシク』と呼ばれる藤安醸造株式会社の味噌。コクがあって美味しいとお客様からも大好評です。ほかにも、醤油や味噌の大元である種麹のメーカーの方と話をしたときにも、製造方法は分かってはいたけど、種麹にはこんなにも種類があるのかと驚かされて。米や麦などの素材、醸造する環境に分けて種麹をセレクトしていく職人の仕事は芸術に近く、しかもそれが奇跡の産物ではなく努力から生まれるもの。微生物の働きによって、美味しさが生まれる。『醗酵食堂 Hasshoku』の料理を食べてもらうだけでは、その感動や驚きの経験をすべて提供することはできませんが、今後セミナーなどで思いを伝えていければいいなと思っています」

醗酵食堂 Hasshoku ヒルトンプラザイースト大阪店

住所:
大阪府大阪市北区梅田1-8-16 吉本ビルB2
TEL:
06-6147-8561
営業時間:
11:00~15:00(LO14:00)、17:00~23:00(LO21:30)
定休日:
施設に準ずる
URL:
https://www.hatsukame.co.jp/hasshoku/

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