甘酒の歴史・読み物

甘酒祭りレポートVol.6
室神明社 御櫃割

甘酒祭りレポートVol.6室神明社 御櫃割

収穫を感謝し甘酒を振りかける室神明社の奇祭、御櫃割(おひつわり)

愛知県西尾市室町にある室神明社で行われる甘酒まつりは「御櫃割(おひつわり)」と呼ばれ、奇祭と言われています。五穀豊穣と家内安全を祈願する農業祭とありますが、収穫感謝祭のこと。甘酒を振りかけたり、御櫃を割る室神明社のご神事である御櫃割について、当日の様子をお伝えします。

※本記事は、2018年10月21日に開催された祭りの模様を取材した記事です。

甘酒を振りかけられそうになりながら御櫃を奪い、厄男の方が一丸となって御櫃の蓋を叩き割るという御櫃割の起源

室神明社 御櫃割

甘酒をふりかけながら御櫃の蓋を叩き割るという御櫃割のご神事ですが、この祭りの起源は、江戸時代後期と考えられており、その歴史は200年以上前になります。

このご神事の参加者は厄年の男性と限定されており、御櫃に入った赤飯を食べると大病をしないと伝えられていることから、厄払いや疫病払いの意味合いも兼ねているようです。

拝殿から甘酒を振りかけられそうになりながら御櫃を奪い、厄男の方が一丸となって御櫃の蓋を叩き割ります。叩き割り、蓋を外すと観客も含めて皆で中の赤飯を手掴みで食べ合うという不思議な祭りのため、奇祭と言われています。

三つ葉葵の紋が示す徳川家ゆかりの室神明社

室神明社 御櫃割

室神明社がある西尾市室町への行き方ですが、名鉄西尾線の西尾駅からバスで30分ほど乗ると、バス停「家則(えたけ)」に到着。下車後は徒歩5分の場所に室神明社は鎮座しています。室神明社は伊勢神宮の外宮に祀られている豊宇気毘売神(豊受毘賣命)を御祭神としています。

その歴史は、1536年(天文5年)に牟呂(室)城に居を構えていた徳川家康の父に当たる松平広忠が崇敬しており、三つ葉葵の紋を奉納したという逸話があります。

室神明社 御櫃割

室神明社は丘の上に社殿がありますが、ここ一帯は牟呂城跡であり、城の敷地の東端に位置しています。

祭事に社殿に掛けられる暖簾には三つ葉葵の紋が施されているのは勿論の事、よく見ると屋根の瓦も至る所に細かく三つ葉葵の紋があしらわれており、徳川家との所縁を垣間見ることができます。

いよいよ神事がスタート!

室神明社 御櫃割

雲一つない気持ちの良い秋晴れですが、上着を羽織った方が過ごしやすい陽気でした。木々も紅葉が進み、着々と冬支度が進んでいます。室神明社の例祭の式典は午後2時から始まりました。

午後2時30分ごろは、人もまばらで境内も空いていましたが、午後3時までには地域の老人、子供、赤ちゃんを連れたお母さんたちなどありとあらゆる年代の方が続々と集まり、境内は満員御礼状態でした。まさしく村の祭りとして定着し、愛され、息づいていることが良く分かります。

午後3時から厄男の方々の紹介や挨拶が始まり、午後3時5分には桶に入った甘酒と御櫃が神職の方によって拝殿の階段付近まで運ばれてきました。神職の方の顔が凄く楽しそうで終始微笑んでいらっしゃいました。

室神明社 御櫃割

そして、『ヨイショ!!』の掛け声と共に厄男の方に甘酒が掛けられ、そして御櫃は拝殿から奪われ、『わっしょいわっしょい』の掛け声と共に境内の広場に移動。ここからが本当の闘いで、『ヨイショ!ヨイショ!』の掛け声と共に厄男の方々が息を合わせて、御櫃の蓋めがけて拳を振り下ろす。

すぐに割れるものだと思っていましたが、全然割れる気配がありません。叩き割ろうとしている人たちも最初の勢いは無く、息絶え絶えで、疲労感がにじみ出てくるほどの時間が過ぎていきます。

やっとのことで蓋が割れた瞬間に観客が御櫃の中の赤飯目掛けて殺到していきました。

室神明社 御櫃割

ぼっこりと大きな赤飯の塊を厄男の方から頂き食べてみると、もち米の風味、小豆の香り共に良く、程よい塩加減ともち米の仄かな甘さがとても美味しい。甘酒の方はふりかけられてしまっていたので頂くことができませんでしたが、撒かれたものの香りを嗅いでみると、癖の無い甘い米糀甘酒のようでした。

御櫃に入った赤飯もあらかた配り終え、餅米だから接着力が強いのか、赤飯まみれの手で食べながら時間を見ると、まだ午後3時15分でした。

祭りは熱気を残しつつも、終わりムードが漂っています。御櫃割は始まりから終わりまで、なんとたったの10分でした。苛烈な印象を植え付ける反面、その長さは一瞬であるこの祭りは、まるで大輪の打ち上げ花火を連想させるものがありました。

室神明社 御櫃割

ほんの10分と短いものの、最初のインパクトが大きくて、さらに終わりも簡潔。名物祭りとしてもっと知られてもいいのではないかと感じました。まさに奇祭と呼ばれるのにふさわしいお祭りでした。


開催日:
10月第3日曜に開催(例祭式が14:00~、御櫃割は15:00~)

開催場所:
室神明社(愛知県西尾市室町上屋敷970)

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